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禁断の、「恋の奴隷」 2006-10-08

先日、歌番組で奥村チヨが「恋の奴隷」を歌っていた。

私のナツメロ好きは以前に書いたとおりだが、「恋の奴隷」に限っては、もう15年、人前で歌っていない。フルコーラス空で歌えるほど好きな曲なので、たまらず鼻歌が出たりするが「カラオケでは絶対に歌わない」と心に誓った事件が起きた。

会社勤めのデザイナーだった昔のことだ。
その事件は、東京の本社へ出張したときに起きた。

「ソゴウくん、社長が一緒に食事はどうか、と言っておられるよ。滅多にないことだから一緒に行こう。」
出張の度にお世話になる次長がそう言った。
当時の社長は、ロマンスグレー(今でも使うのか?この表現)で声も低音、背が高く、渋かった。社員のあこがれの存在であった社長、全国に20くらいある営業所では、社長本人を「見る」機会もなく、言葉を交わす事が出来れば他の女子社員に自慢ができたほどだった。
それを、食事ができるというチャンス!私はふたつ返事で受けた。

社長と私、そして次長の3人で楽しいディナーも終わり、「歌でも歌おう」ということになった。

高そうなバーでお酒を飲みながら、そろそろ私の歌う番が回ってくる。
私の頭の中には「何を歌えば社長にウケるか」そればかりが駆けめぐり、
社長→モテる→同席の女性の歌は聴き慣れた→ナツメロ→意外→けっこう新鮮→ウケる!
こういう公式を立ち上げた。
「恋の奴隷」→奥村チヨ→カワイイ→社長が私を思い出すとき=/=奥村チヨ→可愛い子だったなあ
みたいな勝手な想像の元、「恋の奴隷」を歌うことにした。
カラオケボックスでさんざん歌って、失敗もないと確信していた。

このころはまだ、60年代再発見!のような風潮もなく、私が「恋の奴隷を歌います」というと
社長と次長は「ほっほぅ〜若いのにおもしろいなぁ」などと言いながら拍手をしてくれた。

ところが、である。私は次の瞬間凍り付いてしまった。

カラオケの画面いっぱいにとんでもない映像が流れ出したのだ。
パンツ一丁の男女が出てきて踊っている。しかもパンツは光沢のある革製らしい。目の部分だけ隠れるラメの仮面みたいなものをつけ、ふらふらと踊っているのだ。
挙げ句の果てにはその男、どこからかムチを持ってきて女を打ち始めた。

もう、この場から消えて無くなりたい。

いつものカラオケボックスでは、若くてカワイイ奥村チヨが60年代ファッションで(当たり前)ゴーゴーを踊っている当時のフィルムが流れる。ウィンドウショッピングをしたり、公園をスキップしたりもしたはずだ。社長と次長は懐かしんで昔の話などをしてくれるはずだったのに・・・

私には独立するまで6年勤めたココしか、会社勤め経験がない。
ダンディーな社長だった。
でも、社長を思い出すとき、その横に必ず「パンツ一丁、キラキラ仮面の2人」がいる。


【散在していた書いたものを少しずつnoteにまとめています。】

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