多品種少量生産自動化の課題と解決策
こんにちは。最近はお客さんと商談できる機会も増えてきました。今までのように忙しい時にはできなかった自社の課題の解決方法を考えられているところが多いです。その中でも自動化関連の引合が多いです。
しかし私のお客さんは、大手企業や自動車関係は少なく、どこも多品種少量生産さらには急な仕事が入る変量生産のため、自動化ができていない、難しいという話をされるところがほとんどです。先日記事にもしましたが、「ものづくり白書2020」でも変種変量生産を課題に掲げてデジタル化を進めているところが多い事からも、多品種少量生産の自動化は製造業の大きな課題であることがわかります。
そこで今回は、多品種少量生産の課題を考え、どのような解決策があるか仮説を立て、実際には今どのような商品、解決策が世に出ているかをまとめたいと思います。書籍等で調べるのではなく、私自身が実際に見て、聞いて、体感したことを元に考えたいと思います。
1. 多品種少量生産をしている業者の特徴
ここでいう多品種少量生産の業者は、大手企業や自動車メーカーやその1次、2次下請けではなく、多品種少量の製品を製造しているメーカー、部品加工業者(金属や樹脂)と考えます。おおよそ同一工場や生産ラインで、日に数回〜2日に1回は段替えがあるような工場のイメージです。多品種少量生産の業者にどのような特徴があるかを考えてみました。
課題面
・ロッド数が少なく、急な依頼がくる。
・製品設計は客先指定のため変更できない。
・様々な形状のワークがある。
・基本的に人手が足りていない。
・工場が狭い。(既に機械や物で埋まっていて空いているスペースがない)
・時間がない。納期に追われている。
・熟練者の経験・カンに頼っている。
強み
・様々な部品加工に対応できる。
・その製品、その工場で行っている加工、生産に特化しているためノウハウが多い。
・短納期対応ができる。
・社長や現場長の判断で動きやすい。(判断が早い)
ざっとこのようなイメージを持っています。
では次に多品種少量生産の工場がなぜ自動化が難しいのかを考えました。
2.多品種少量生産の自動化に対する課題
現場・製品の課題
・段替えが多いため、自動化システムを入れても結局段替えに人手が取られる。
・手作業やカンによる作業も多く、機械的な自動化が難しい。
・システムやソフトウェアの知識がなく、学習する時間が取れない。
・製品形状や工程を変更できないため、自動化システムしやすいように変更できない。
・現場の課題を全て解決できるものだと思い込んでいる。
経営陣・生産技術者の課題
・自動化システムが全ての工程を自動化できるものと考えている。
・導入しても、人工が減らなければ、効果が出ない。
・高額な専用機・システムを導入しても償却ができない。
・経営陣が自社の現場での課題を把握できていなく、どこを自動化すれば良いかわかっていない。
・経験がなく、自社の要求仕様を明確にできない。そのため導入後にトラブルになる。
・自動化システムにかかる費用感を理解していない。
機械・システム・メーカー側の課題
・大手、特に自動車向けの自動化システム・事例がほとんど。
・品種を絞らなければ自動化できないことが多い。
・ロボット単体では安いが、システムアップすると数倍にも価格が上がる。
・基本的にロボットは決まった作業しかできない。
・客先の要求仕様が明確でないと実施できないことが多い。
・ほとんど客先毎に合わせた専用機のため、作ってみなければわからないことが多い。部分的にしか事前にテストできない。
・リピートが見込みづらいため、共同開発に手を出しにくい。
このように様々な部分で課題が大きいと思います。
ちなみに逆に自動車関係であれば、これらを解決できるのかというと、、、
3.これらの課題を自動車業界はどう解決しているか。
現場
・大量生産のため、段替えは少なく、専用ラインを作ることができる。
・全自動ラインも多く、人手も少ないため、自動化しやすい。
・製品形状や工程を自動化しやすいように設計変更できる(場合がある)。
・長年自動化ラインで生産してきているノウハウがあるため、保全含めて自動化システムの知見が広い。
経営陣・生産技術
・単価も安く、自動化しなければ、利益を算出できない。
・ある程度自社で生産予測を立てられ、さらに大量生産のため、償却の目処が立てやすい。
・長年自動化システムで生産しているため、ノウハウがあり、要求仕様も明確にしやすい。
機械・システム側の課題
・一度の発注数量も多いため、利益換算しやすく、販売意欲も高くなる。
・実績も多く、事例提案しやすい。
・品種が絞られているため、自動化しやすい。
・実績のないことで共同で開発する場合でも、その後の取引が見込めるため、取組みやすい。(開発で利益が出なくても、リピートで利益を見込める。)
・ロボットやその他機器関係も、自動車ライン向けに開発されていることも多い。
このように、かなりの部分で解決できているのではないかと思います。やはり内燃機関の自動車を筆頭とする大量生産の効率化という部分が、日本が強かった製造業の特徴ではないかと思いました。
では話を戻し多品種少量生産の自動化の解決策を考えて見ました。
4. 多品種少量生産の自動化に対する課題の解決策
現場・製品の解決策
・工程を絞る。始めから全ての工程を自動化ではなく、工程を絞ってスモールスタートしることが大切です。自動化しやすい工程は、搬送・機械への搬入出、箱詰め工程だと思います。最近では人が手で行っているバリ取りや簡単な組付、検査も比較的自動化システムにしやすくはなってきています。
(多品種にどのように対応するかは後述します。)
・システムメーカーに丸投げせず、自分でシステムを作り上げていくという気持ちを持つ。これがかなり大切になります。請負加工業者の場合、極端にいうとワーク図とボタン一つで全て加工できる機械が手に入ると考えられている方がたまにおられますが、そうではなく、自社の製品やラインについて最も詳しい現場の方が一緒になって、自動化システムを作り上げていく姿勢があると自動化プロジェクトが進みます。
結局メーカーもお客さん毎に初めて作るシステムになるため、様々な問題が起こります。その都度話し合いをして、問題を解決していかなければなりませんが、そこで丸投げにしない姿勢が大切になります。
・システムに関して勉強する。日々の生産に追われて、勉強する時間をとることは難しいですが、現場の方が一番勉強して習得すると早いです。
経営陣・生産技術の解決策
・先行投資と考える。自動化システムが全て発注前の打合せでのみでうまくいくと思わず、導入してからも自社に合うように現場とメーカーと共に作り上げていくものと思わなければなりません。現場の方もいきなり使いこなせるわけではないので、学習時間を儲けさせることや、改善費を考えておくことが必要ではないかと思います。
機械・システム側の解決策
私が調べてまとめる上では、こちらの解決策が最も重要となります。
・段替えの自動化。多品種となると段替えの自動化が必須です。段替えが多いから自動化ができない(投資効果がない)、段替えこそ一番時間を費やしているところも多いためです。
既に様々な段替えの自動化を可能にする機器が開発・発売されており、活用されています。例えば、ロボットハンドがワーク形状に倣っていき様々な形状を把握できる物や、ハンドのチェンジを自動でできるようなアタッチメントや、治具の段替えを自動で行うようなストッカーなどがございます。
・識別の自動化。段替えと同じく、多品種のワークを識別して、それにあうプログラムや治具・アタッチメントに変更しなければなりません。ワーク種の識別の自動化はマストになります。例えば、カメラ、QRコード読み取りによる自動化や、機械内でのセンサ・プローブによる識別方法があります。
・プログラミングの簡易化。多品種ワークのため、ワーク毎のプログラムを作成する機会も多いです。それらに時間がかからないようオフラインでティーチング、シュミレーションできたり、プログラミング自体を簡易にできたりする必要があります。ロボットの例では、従来の産業用ロボットと違い、協働ロボットはプログラミングが容易です。
・経験やカン、感覚など人の作業の自動化。検査工程や、組付、仕上工程等、熟練の経験や感覚が必要な工程の自動化が必要になります。カメラや前回記事にしたVRなどを使用した自動化、システムのソフトウェアでの自動化等が必要になります。動画や画像を元にAIが処理して行うような自動化になると思います。
ざっと簡単に考えるとこのような解決策があるのではないでしょうか。そしてこれらの解決策が難しいからこそ、多品種少量生産のラインは自動化されていないのであると思います。逆にいうと、自動車もこれからは変種変量生産に移行していくと思われますので、これからは多品種少量生産のラインを自動化できる経験、ノウハウが生産ラインに関わる人間として市場価値が上がるのではないかと思いました。
次回以降では、機械・システム川の解決策に対して、実際はどういうサービス・ものがあるかを具体的に調べてみます。
長文ですが、最後までお読み頂き誠にありがとうございます。