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『二度目の花火』 # シロクマ文芸部

花火と手紙が添えられていた。
花火は少し古そうだ。
子供用のセットで、さすがに打ち上げ花火はないだろうが、カラフルな花火がビニール袋いっぱいに入っている。
花火をそのままにして、恐る恐る手紙を開いてみた。
別にメールでもよかったものを、わざわざ手紙にするなんて。
しかし、手紙を読んでみて、こちらも返信を手紙で出そうと思った。
別にメールで送ったからといって、なにが変わるわけでもないのだろうけれど。

バケツに水を汲み、近くの公園に行った。
二人とも、大きな花火から火をつけた。
色とりどりの火が燃えあがっては消えてゆく。
最後は、線香花火だ。
古いせいか、どうしても最後まで燃え切らずに、赤い玉が落ちてしまう。
それでも、最後の一本はしっかりと燃え尽くしてくれた。

あの子の荷物を整理していたら、出て来たらしい。
その年の夏休みにやろうと言って買ってきたものだ。
結局、その夏を三人で終えることはできなかった。
花火だけが残ってしまった。

全ての花火が燃え尽くす。
震える肩に手をかけようかと迷った。
結局、二人でとぼとぼと元の道を戻る。
バケツは来る時よりも少し重いが、道のりは短く感じた。
入り口にバケツを置く。
帰る背中に、また花火買う?とは聞けなかった。
聞いたとしても、答えはなかったに違いない。

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