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【俳句】ストーブ 冬蝶 千鳥

ストーブを父が見つめていた深夜

ある夜、人の気配がして起きてみると、居間に明かりがついている。
そっと覗くと、父がひとり、じっとストーブの炎を見つめていた。
普段はそんな気配を見せない父にも、己の来し方、行く末に思いを馳せる、そんな時間があったのだろうか、


冬蝶や母には広しストレッチャー

病院の廊下でベンチに座っている。
向こうから看護師がストレッチャーを引いてくる。
かけられた毛布の下から小さな手足が見えている。
あんなに幼い子がどうしたんだろう。
大丈夫かなあ。
通り過ぎる時に顔見ると、それは母だった。
いつの間にか、こんなに小さくなっていたのか。
そんな光景の横に、見守るように動かない冬の蝶を置いてみた。


一度鳴き二度鳴き誰を待つ千鳥

葉がすっかり落ち切った梢に、どこからか1羽の千鳥が飛んできて止まる。
首を伸ばし、少し甲高い声で鳴く。
もう一度鳴く。
お前は誰を待っているんだい。

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