『塩人』 # 毎週ショートショートnote
「さあ、とどめだ、味噌人頼んだぞ」
お酢人の言葉に味噌人が答える。
「任せとけ!」
味噌人から絞り出される味噌に、怪人は、
「うわあ、味噌でベタベタだー、助けてくれー」
「任務完了よ」
甘人が言うと、
5人が並んでポーズをとる。
「俺たち、シーズニングレンジャー、良い子のみんな、また会おう」
舞台の下では、ピンクのコスチュームの甘人が、子どもたちに、甘いお菓子を配っている。
その隣ではお酢人と味噌人が、新しい調味料の試食品を配っている。
そんな賑やかさとは裏腹に、舞台の陰でひとりうなだれる塩人。
そんな塩人にリーダーの醤油人が声をかける。
「どうした、塩人」
「最近、減塩だなんだと、みんなから敬遠されるんです」
「なんだ、そんなことか」
醤油人は、塩人の肩を叩いた。
「これから、夏になると、みんな塩分が必要になるんだ。君の時代が来るさ」
「え、そうなんですか」
「本当さ、だから、元気をだせよ」
「わかりました」
塩人は、自分の塩っぱい涙を噛み締めた。
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