『宝くじ魔法学校』 #毎週ショートショートnote

こんなことじゃ年が越せねえよなあ。
男は地下通路の片隅で頭を抱えた。
その時、一枚の紙切れが転がってきた。
「あなたも億万長者 宝くじ魔法学校」
け、いんちきな商売しやがって。
ふと見ると、書かれた場所はこのすぐ上だ。
男は古びたドアを押した。

まさしく魔女のような老婆だった。
「運というのは平等さ。ただ、みんなその運が回ってくる前に死んじまうのさ」
老婆は一枚の写真を突きつけた。
「この子を殺せば、運不運の結束点がほどける。その時に宝くじを買え」

男は写真を手にその子を探した。
少し心は痛むが、生きるためには仕方がない。
そして、ついに見つけた。
男は細い肩に手をかけた…

老婆は男を睨んだ。
「そうかい。結局、お前さんは、その子を殺さなかったことで、自分の運をその子に返してしまったわけだ。だが、悲観しなくてもいい。お前さんがまだ生きているってことは、お前さんも誰かに運を返してもらったのかもしれないからな」
男はゾッとして、後ろを振り向いた。

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