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『白骨化スマホ』 # 毎週ショートショートnote

「先生、それがあれですか」
彼は、デスクの上の物を指差した。
小さなプラスチックのケースに入れられたそれは、まるでフィギュアのコレクションのようだった。
先生と呼ばれた男は、同じものを指差した。
「そうだ。これが、あれだよ」

そこには、ちょうど手のひら大の白い枠があり、枠の中にもいくつかの白い針金のようなものがあった。
「これが、最近発見された、人類の骨の化石ですね」
「そうだ。DNA鑑定でも、間違いない」

スマートフォン(通称スマホ)を、もう1人の自分にしようとして失敗した人類は、試しに、自分たちの体にチップを埋めてみた。
スマホを人にするよりも、人をスマホにする方がはるかに簡単だった。
人類はAIにDNAを組み込むことはできなかったが、人類の中に入ったAIはDNAを利用した。
人類が、この600㎤にも満たない体になるまでに、それほど時間はかからなかった。

「先生は今度いつ地球に行かれますか」
「ああ、この6本目の脚が良くなればな」


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