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『感想文部』 # 毎週ショートショートnote

「感想文部?」
「ええ、そうです」
「文学部ではなくて? 感想文部?」
「その通り。我が校に感想文部を新設しましょう」  

かつては、日記、自由研究と合わせて、小中高生の3大嫌われ者のひとつだった感想文。
しかし、今や感想文は大人気だ。
感想文を書く人は、インプレッションズライターと呼ばれて、なりたいもの職業の堂々一位に輝いている。
「その小説を書いた人は知らないけど、その感想文を書いた人なら知ってるよ」
取り上げられた無名の作品が、相乗効果でベストセラーになることもある。

書評と何が違うと罵る年寄りもいた。
あくまでも、「こう思います」以上のことは書かれない。
しかも長さにして、原稿用紙3枚を超えることはまずない。

今では、感想文が先行して、書かれた感想文に合わせて作品が作られるという、これもお年寄りが聞けば、本末転倒だと嘆くような現象も起きている。

生徒不足に悩む各大学では、こぞって感想文部を新設した。
その専門学校も盛況である。



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