意識と微生物
「たった1袋のティーバッグから400種もの昆虫の痕跡が見つかった」──ドイツの研究チームが独自開発したDNAの検出技術でチャノキと共生・寄生関係にあった昆虫を調べた結果だそうだ。(出典元)
記事によると、乾燥処理した植物から有用なデータとなる環境DNA(eDNA)を採取し解析できる画期的な技術が開発されたという。 環境DNAとは、海や川や湖沼などの水、土壌、大気中に含まれるDNAのことであり、そこに生息していた生物の痕跡と考えられている。
この方法を使うとわずかに残ったDNAの断片を解析する事で、既にその場には存在しなくなった微生物などの有機物がどのような影響を及ぼしているか推測できる。
私たちは常に様々な有機物、無機物との間で情報交換を行っている。その情報のやりとりの一つが有機物に含まれる遺伝情報である。例えば、「私は肉を全く食べたことがない」という人でもレストランに入ったことのない人はないと思う。レストランの中でステーキを食べている人がいれば、そのステーキに含まれる遺伝情報は空気中に拡散しており、その一部を吸ったり触れたりして誰もが取り入れていると考えられており、このような様々な有機物と遺伝情報のやり取りをしながら、私たちは進化してきたとも言える。
ところで、我々の行っている腸内フローラ移植(糞便微生物叢移植:FMT)でも扱うのは腸内細菌という微生物であり、乱れた腸内細菌のバランスをドナーからの便を使ってバランスを取り戻させるという治療法だ。腸内環境の重要性が理解されるようになり、さらに「腸活」という言葉がブームとなったことも相まり、「腸内フローラが良くなると健康になる」というキャッチーな言葉はみんな理解しやすいかも知れない。
しかし、本当に微生物の構成が変わること「のみ」が原因で体調が良くなっているのであろうか。実際は物事はそう単純ではないように思う。確かに腸内フローラのバランスが所謂「乱れている」状態から、所謂「整った」状態になると、一見体調が良くなるケースは少なくない。腸は健康の要とも言われ、免疫細胞の七割が腸に存在することからも腸内環境と健康は密接に関係しているとされる。しかし、その変化の本質はそこではない。
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