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【ウエビナー解説】コロナ対策だけじゃない!GMOインターネットの組織の仕組みがすごい!

 7月2日(木)、ZUU ONLINEでのウエビナー、『急成長企業のIR戦略と共感を生む対話』の第2回は、GMOインターネット取締役 福井敦子さんとの対談でした。アーカイブはこちら。

 GMOインターネットの話を聞きたいと思った理由は、新型コロナウイルス対策にいち早く動いた企業であり、またこの国難を事業の機会に変え、それを対外的に上手に発信した企業でもあったからです。5月7日の「有事のIR・コーポレートコミュニケーション」をテーマにしたウエビナーでは、変化への対応(下記5つのポイントのうち3つ目)を将来の戦略として語り、投資家の期待と評価を高めた企業として紹介しました。11期連続増収増益を果たし、コロナ後の未来もさらなる事業の発展に向かい、株価も絶好調です。

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 そして、福井さんは、新型コロナウイルス対策本部で、事務局長として奮闘したご本人でもあり、広報・IRだけでなく社内のコミュニケーションを担当する役員であったことから、今回対談をお願いしました。

Q1:新型コロナ対策本部事務局長として。GMOインターネットは、何をどう決めて実行したのか?

 GMOインターネットグループは、1月27日(月)から約9割の社員が在宅勤務を開始しましたが、決定したのは25日、26日の土日の間で役員で決定し、日曜のうちに社員に通達したそうです。ちなみに、1月26日時点、日本国内の感染者は武漢からの帰国者を含め、累計でわずか4例でした。スピーディに決断していることに驚きです。

 こんなに速く決断できた理由は、東日本大震災を契機に、有事の際に「大事にしていること」を決めていたから、だそうです。

GMOインターネットグループが大事にしていること
 1.パートナー(役職員)の命を守ること
 2.事業を継続し、社会的責任を果たすこと
 3.社会貢献

 GMOグループでは社員のことをパートナーと呼んでいますが、パートナーの命を最優先にするため、中国の大型連休である春節を控え、日本でも感染拡大が広がる前に、出勤を控えることが決まりました。しかし、日本企業の役半数のインターネットのインフラを支え、EC決済などを担う企業の社会的責任として、GMOインターネットグループの事業を止めてはなりません。BCP(事業継続計画)の一環で年に1回、全社員在宅勤務を一斉に行う訓練を行っていたことがスムーズにできた要因だそうです。
 在宅勤務に変わっても、日次で報告する事業の指標(KPI)は順調で、むしろコロナ禍にあってGMOインターネットのインフラとしての重要性が高まり、デスクトップ・クラウドや接続サービス等の申込が増加しているのが目に見えて現れたそうです。
 熊谷CEOは、今後2~3年で起きると思われたデジタル化が3カ月くらいで一気に進んだことを実感したそうです。Twitterや決算説明会等でも事業継続の責務について話されていたのを私も拝見しました。それが、株式市場からの信頼と期待を集めたと思います。

社内では、双方向のコミュニケーションが鍵

 さらに、在宅勤務中の従業員の様子をアンケートで抽出し(社員アンケートは普段より頻繁に実施)、在宅ならではの課題(椅子とか社員食堂がないこととか)をあぶりだし、その中に印鑑問題もあったようです。オーナー企業ですが、トップダウンだけでなく、ボトムアップの意見の吸い上げもしょっちゅう実施しているようです。すべてのパートナーを集めたグループ全体ミーティングもよく行っているようで、これは知人のGMOインターネットグループの社員から、様子を聞いたこともあります。そういう双方向のコミュケーションの努力って重要ですよね。特に有事の際は社員の不安を取り除き、モチベーションの維持に効果があったと推察します。

Q2. 熊谷CEOってどんな人?

 ここまで聞くと、熊谷CEOってどんな人だろう、と思いますよね。上司のことをどう思うかを社外の人に話すのは抵抗あったかもしれませんが、視聴者の方も聞きたいのではないかと思い、聞いちゃいました。お話してくれてありがとうございます。
 まず、熊谷CEOの近くにいることで、自分ひとりでは到達できない経験ができていることにとても感謝していました。急成長する企業を一代で築いた人ってやはりすごいですよね。よくサラリーマンで自分の勤める会社の社長の悪口を言っている人がいますが、そういう人たちから見たら福井さんや私は変わり者かもしれませんが、尊敬できる人と働けて幸せ者なのだな、と思いました。
 そして、私は、一昨年のGMOインターネットの株主総会の動画を見て、熊谷CEOが、「愛と感謝を持てる人たちで経営する」と語り、参加した株主から大拍手が巻き起こったのを見て、これは会場にいたら感動するであろうと感じたことを伝えました。「愛」と「感謝」の人なのかなーと思ったのです。ところが、福井さんのお返事は、熊谷CEOは「愛」と「感謝」に溢れ、それと同じくらい、「デジタル」で「ロジカル」に思考する人なのです、ということでした。アントレプレナーシップを大事にする熱い人であり、ロジカルにデジタルに表現するのだと。

役員報酬の決め方もユニーク

 独自の取組みで興味深かったのは、役員報酬の決め方。グループの役員全員(約160人)から立候補制で委員会を組成し、決め方を決めるそうです。委員会の開催回数は1年で14回。そしてなんと、役員の報酬額は全役職員が閲覧することが可能なのだそうです。以下有報からの抜粋です。

GMOインターネット 2019年12月期有価証券報告書(リンク)

役員報酬策定方針(P68 より抜粋、太文字化は筆者)
当社グループ全社の全役員のうち自ら立候補したメンバーで構成される委員会にて、現行の役員報酬制度が当社の企業価値・株主価値を重視した構成な報酬体系であるかについて審議、改訂の要否等を協議しております。この役員報酬制度を策定する委員会にて策定した制度を、3名の独立役員である社外取締役を含む取締役全員が、当該委員会の協議結果を最大限尊重して充分に審議した上で、取締役会にて制定・改訂しております。また、本役員報酬制度を当社グループ全社で導入しており、公正で恣意性を排除した仕組みとして運用することに加え、当社グループ役員全員の報酬額をグループ内の全役職員に開示することにより、役員の職責とその成果に基づく公正な処遇であるかについてモニタリングしております。

 世の中的には、社外取締役をメンバーとする委員会で決めることがガバナンスの観点から望ましいとされていますが、それよりもっと実効的でもっとガラス張りです。興味深いのは、それぞれの役員が大事な企業文化であるベンチャー・スピリット(アントレプレナーシップ)があるかどうかさえも、指標化されていること。そして、すべての過程において熊谷CEOは関与しないことも。これはトップに気に入られている人が昇進するようなこと(あるいはそう疑われること)がない点がとても重要だということです。
 今年の有価証券報告書から、役員報酬の決定方法を詳細に開示する義務が発生しました。私も数十社の報酬関連の開示を見ていますが、指名等委員会設置会社でも、報酬委員会の開催回数は年数回がほとんどです。平均すると4回くらいでしょうか。前提として役員には360°評価を行っており、福井さん自身も160人から評価されているそうです。
 誰からも文句が出ず、モチベーションを上げる、魂が入った制度になっているのだな、と感じました。

Q3. ご自身のキャリアについて。女性取締役として

 日本の上場企業ではまだ少ない社内昇格の女性取締役として、また、新規事業や営業、IR/広報等などの様々な部門の経験者として、ご自身のキャリアをどう思っているかお聞きしました。
 「取締役の内示を受けたとき、とても自信がなく、一度は辞退を申し上げた。」そう告白した福井さん。私も、もっとレベルの低い昇進でも、同じような思い(自信がない。管理職になりたくない。)を感じたことがあります。そして他社の働く女性からも同じような話をよく聞きます。
 では、今はどういうお気持ちで役員を務めているのか。役員になるにあたって、熊谷CEOはじめ周囲の役員の方々の力強い後押しがあったこと、ダメだったらその時に辞めればいいんだよ、という声で気が楽になったこと。役員就任が発表されたら、女性社員から喜びの声が多く届き、中にはそれほど親しくはないのにわざわざ「励みになりました」と伝えに来てくれた女性社員がいたこと。
 そもそも福井さんの仕事のやりがいを支えているのは、一緒に働いている人、お客様、ステークホルダーの皆様も含めて「みんなを笑顔にすること」だそうですが、役員になったことによって、多くの人々を笑顔にできる役割を担えるようになったことが何より喜びだそうです。
 これは私の意見ですが、昇進とは、ロールプレイングゲームで言えば、ひとつステージが上がると同時に、多くのアイテム(道具)を手に入れることです。ただしそのアイテムは敵をやっつける武器ではなく、人を笑顔にするためのアイテムで、仲間からの支え(組織力)のようなものではないでしょうか。福井さんは今は取締役になって良かったと感じているのがありありと見受けられます。福井さんは、管理職になるオファーがあったら、受けてみた方がいい、とおっしゃっていました。

成長し続ける組織において

 前身企業を含め、2000年からGMOインターネットに在籍している福井さんに対し、視聴者からこんな質問がありました。

「草創期から現在のような規模に成長する過程で、どのステージが大変でしたか?」

 福井さんは、「どのステージも大変だと思います。あるステージから成長するとまた新しい課題があり、それを解決するとまた次の課題が見えてきます。」とお答えされ、その爽やかで柔らかい笑顔のまま、

「楽して成長はできません。」

と至言を述べられました。はい、そのとおりだと思います!それをサラっと言える、しなやかさと強さと美しさを感じました。
 かくありたい。

ーENDー

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IR(インベスター・リレーションズ)の経験などに基づいたテーマで記事を書いています。幅広い層のビジネスパーソンにも読んでもらえたら嬉しく思います!