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「離脱」をとことん防ぎたい人たち

HR系のSaaS型プロダクトを扱っています。顧客は主に企業の人事・総務部です。サービスサイトやLPについてのメモを、AIに、武者小路実篤の文体で筆をとってほしい、と頼んだ文章です。


BtoBのSaaS領域におけるマーケターおよびサイト制作者が、熱心に注力するLP(ランディングページ)やサービスサイト ——
皆、訪問者の離脱を許さぬ強い願望がある。

試行錯誤の果て、
離脱の門を閉ざすために至った道とは

現代の商取引の場にて、ウェブサイト設計の新風(でもないが)を見るべし。

■ 第一の風は、問い合わせフォームが画面の右側三分の一を占めて設置されているというものである。訪れた客が容易にフォームをその目に留め、適切な時に迅速に入力得るのである。訪問者の目に常にフォームを焼き付けることにより、その存在を一瞬たりとも忘れさせぬ、秘術とも称される技だ。

■ 次に、問い合わせボタンが定期的に画面中央に現れるパターンだ。これまた、訪問者の心が、スクロールを試みつつも記載された情報に納得し、その認識が花開く瞬間を見計らい、まさにその時にボタンを提示することで、応募者の心の隙間に一縷の迷いも許さず、この壮大なる検討時間の幕を引き、いざ問い合わせへとつなげる大胆な施策である。訪れし者の意識の奥底に、問い合わせへの想いを留め置く工夫が施されている技法と耳にする。

■ 第三の風はフローティング型CVボタンというもので、これが画面の右上か何かに固定され、使用者がページをどのように移動しても、常にその位置で問い合わせが可能な状態を保持する技術である。独立したボタンが延々と付いてくる以外にも、右下から突如として飛び出す仕組み、スクロール静止すると突如ボタンが現れるなど、これら一切が訪問者の便宜を図りつつ商いの効果を増す現代の策となる。


この種の話は時折、提携会社のマーケ担当や、コンバージョン爆上げを約束する新規コンサル会社などから、当社へのサイト改善施策としてしばしば語られるものであり、その度に我が心は苦々しい思いにかられるのである。

『問い合わせしてほしい』という
切実な願いが絶え間なく付き纏うサイトたち

今日日、マーケの世は、何といっても、問い合わせフォームへの入力がなければ何も始まらず。これが厳然たる事実とのこと。ゆえに訪れた客をどうにかして問い合わせさせなければならない。逃げられたら、すべてが終わりの如しである。

言わんとすることは理解できるが、
本当に「徹底的に離脱させない」ということが、そこまで重要であるのかと問いたい。

まず第一の策について申し上げるならば、単純に、問い合わせフォームが画面の三分の一を占領し、ただただ邪魔である。そのため残りの三分の二のエリアに情報が圧縮され、行間も狭くなり、画像は見難く、スクロールの数も増えるのだ。

個人情報くれないと進ませないマンがずっと右側にいる

第二の策、すなわちスクロール中に定期的に現れる問い合わせボタンに関しても、確かにセクションごとにエリアを分け、訪問者にとって購入を後押しする決定的な要素があれば即座に問い合わせができるようにする意図は理解できる。しかし、問い合わせボタンの存在を数秒で忘れるような不器用な買い手と見做されているかのようで、何ともはやである。

第三の策においては、スクロール中、常についてくる、あるいは静止すると現れる問い合わせボタン。言うなれば、ショップで店員が「だるまさんが転んだ」のテンポでいつも横についてくるような感覚に陥ってしまう。

これら施策は、人間関係に喩えるならば、わずかに心を惹かれる相手に声をかけたところ、まるで連絡先の交換をひたすらに迫られるがごとくである。話の最中にも、絶えず視界の隅に連絡先を示すQRコードがちらついており、そのせわしなさに心の余裕も奪われるような気分ではないか。

もちろん、自分(サービス)に自信がないならば、離脱の阻止を優先することも理解はできるが、思うに、買い手が能動的に様々な情報を求め、その答え合わせのためにサイトを訪れることも少なくない中で、本当に離脱を許さないことが、それほどまでに重要であるかどうか。むしろここは買い手の決定権をとことん尊重し、その購買意欲に運命を委ねるべきではないだろうか。

いや、偶然に足を運んだ潜在顧客に対しても、なぜそこまでして離脱を防ぐことが重要なのだろうか。不動産屋のガラスに貼られた物件情報を眺めている客がいたとして、その多くの物件が他の不動産会社でも問い合わせ可能であるために、自店からは決して足を遠ざけてほしくないという心情は理解できる。

しかし、少なくともBtoBSaaS領域においては、究極的な決定権は買い手に一任し、製品やサービスの詳細をサイト上に充分に掲載し、問い合わせなど必要としないほどそれらを明確にすることが、より賢明な策と思われる。

AIが勝手に描いてます

離脱防止策という問題にばかり心を奪われたが、これからのサービスサイトは、自社のサービスにおいてはどのようにしてどこまで情報を開示すべきで、いかにして訪問者の心を落ち着かせるか、そして理解を深めさせた後、更なる知識を求む者にようやく問い合わせの一歩を踏み出してもらうために、どこまでサイト内で完結してもらえばよいのかという、制作サイドの深遠なるセンスが問われることであろう。

サービス資料やお役立ち資料のダウンロード、事例紹介、活用セミナー、料金表、デモサイトの提供、商談希望、そして申し込み―――これらプロセスにおいて、どのタイミングで「問い合わせ」、すなわち個人情報の提供という代償を払うべき価値ある段階に達してもらうかを見極めることは、単なる離脱防止策よりも遥かに重要なことではないだろうか。いくら素晴らしいサービスだとしても、たかだかサービス資料のDLのために、煽られながら渋々と問い合わせを強いられる買い手の不満は、以前にも増して高まっているのである。

SaaSビジネスに留まらず、サイトや広告の究極的な目標は、その商品への憧れを芽生えさせることにあると思う。徐々に購買層としての広がりを見せるZ世代が、しつこい広告や過度なプロモーションを何よりも忌避する様子は、市場の古いしがらみを払拭する健全な反応と言えよう。真に価値あるものは、無言のうちに自らの良さを語り、それが「良い」と自然に認められるのである。この潔癖な姿勢は、サイト制作ひとつとっても、我々の商業の舵取りにおいて新たな方向性を示唆していると思う。

離脱施策を控えめにした、静寂で清楚な関係
ほら、おのずと人が集まってきたよ


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