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等身大の自分を認めて欲しい、は甘い考え

本日は、『等身大の自分を認めて欲しい、は甘い考え』という話です。

ありのままで…… は理想

2014年に日本公開されて大ヒットしたディズニー映画『アナと雪の女王』の主題歌『レット・イット・ゴー』は、日本語版も英語版もヒットしました。妻と息子もこの曲が大好きで、毎朝この曲を聴きながら朝食を食べていた時期がありました。

松たか子が歌う日本語版には、副題に〜ありのままで〜とついていて、サビの歌詞は、

ありのままの姿見せるのよ
ありのままの自分になるの

と歌われます。ドラマティックで感動的な曲ですし、この歌詞の世界観が好きな人も世の中にはたくさんいると思います。

自分を偽り、本音を隠して、我慢に我慢を重ねた過去を断ち切って、ありのままの自分を曝け出し、新しい自分を表現する、その姿を受け入れてくれる世界が待っている…… 誰もが憧れる、理想的な状態だろうと思います。

ありのままに振る舞う等身大の自分が、周囲から否定されず、好意的に受け入れられる幸福感は何物にも代え難い喜びです。そういう時間・場所・仲間を持つことは最高に「幸せ」な状態です。ありのままの私を受け容れてくれる人がいるんだと思えると、日常生活は自己肯定感で充たされますし、辛い状況を跳ね返す心の支えにもなるでしょう。

理想と現実

私も若い頃から、そんな状態を理想と考え、あるがままの自分を受け容れてくれる人や環境を求め続けてきました。背伸びも萎縮も必要としない、等身大の自分を評価して付き合ってくれる人達だけに囲まれて生きていけたら、どんなに素晴らしいことだろうと思っていました。そんな考えに支配されていた頃は、「恋人に求めるものは?」という質問に、「安らぎ」とか「癒し」とかを大真面目で答えていました。

しかしながら、それなりの人生経験を積んだ今なら、断言出来ます。等身大の自分を認めて欲しい、というのは甘い考えです。身勝手で、わがままな願いです。

人間同士の付き合いで、完全に対等な関係などありません。自分が社会の中で付き合っていかねばならない相手は、自分に対して何らかの期待を持っています。いつもいつも、相手の期待に応えられない状態が続いていれば、良好な人間関係など成立しません。仮に相手の期待に完璧に応え続けていたとしても、離れる時は離れてしまうものです。

受け容れられる努力

時には意外な人から意外な評価を受ける場合もあり、嬉しかったり、寂しかったり、悔しかったり、戸惑ったりします。日々緊張感を持って努力し続けないと、信頼されないし、成熟したオトナの人間関係は築けません。あまりにも直截的に心の琴線をくすぐる形で近付いてくる相手は、自分を騙そうと狙っている詐欺師かも? と警戒して、身構えておいた方がいいでしょう。

自分が近付きたいと思った人がいても、今の自分に、相手の求める期待に応えられるだけの実力や魅力がなければ、その関係は進展しません。その相手からすれば、自分にメリットのない人間と付き合う理由なんてありません。

今現在、相手の期待に応える実力がないのであれば、相手が期待していない他のことで琴線に触れるアピールをしなければなりません。相手に妥協してもらっている状態で、等身大の自分を受け容れてもらえるように願うのは、相手への甘えです。

周囲の目ばかりを気にして、常にブレブレの人生を送るのも問題ですが、相手(社会)の期待に応えつつ、自分を変化させて対応していくのが本当の人生の醍醐味だと思います。『ありのままの私を受け容れて下さい!』という態度に固執するのは一刻も早く卒業した方がよいと思います。

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