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'80s Musicを理解するキーワード④:サントラ

2024/5/25開催のとあるイベントに"DJMARK"として登場し、80年代の洋楽の名曲を紹介する時間を頂けることになっています。DJと言っても、円盤を派手に回すのではなく、1970‐1980年代のラジオのDJ(=Disk Jockey)をイメージしたスタイルで行う予定です。イベントには、80年代の洋楽をオンタイムで体験していない若い世代も来られるとのことなので、80年代の洋楽を象徴するキーワードとともに、解説を加えるスタイルで準備を進めています。私の考えるキーワード、第4講は、『サントラ』です。


映画と音楽

サントラとは、映画用に作成されるサウンドトラック(Sound Truck)の略です。映画と音楽は切っても切れない密接な関係ですが、とりわけ80年代の洋楽、中でもアメリカの音楽チャートを賑わせヒット曲には、サントラからシングルカットされた映画絡みの曲が目立ちます。

映画の挿入歌がヒットするケースは過去も現在も珍しくはありませんが、80年代は一つのサントラ盤から複数のメガヒットが生まれる場合が多かった印象があります。1983年の『フラッシュダンス』、1984年の『フットルース』、1985年の『バック・トゥー・ザ・フューチャー』、1986年の『トップガン』なとはその代表選手でしょう。

極端なケースでは、映画自体はあまり強く印象は残っていないものの、サントラ盤に参加しているアーティストが豪華絢爛で、そちらに重心がかかりすぎているのでは、と錯覚しそうなケースもありました。1985年の『ビジョン・クエスト/青春の賭け』、1987年の『ダーティー・ダンシング』等で、収録曲はすぐに思い浮かぶのに、映画の内容自体は殆ど覚えていない、という感じです。

名曲は数あれど...

80年代にヒットした映画絡みの楽曲は本当に多くて、サントラ縛りで選曲してもベスト10や20は簡単に作れてしまいます。前述のサントラ盤からの曲以外にも、クリストファー・クロス『ニューヨーク・シティ・セレナーデ Arthur's Theme (Best That You Can Do)』(1981年の『ミスター・アーサー』)、フィル・コリンズ『見つめて欲しい Against All Odds)』(1984年の『カリブの熱い夜』)、レイ・パーカーJr.『ゴーストバスターズ Ghostbusters』(1984年の『ゴーストバスターズ』)、ジョン・パー『セント・エルモス・ファイヤー St. Elmo's Fire(Man in Motion)』(1985年の『セント・エルモス・ファイヤー』)等が思い浮かびます。

サントラの印象が強すぎる不運

サントラに収められた数ある名曲の一つに、1982年公開の映画『ロッキー3』の主題歌として使用され、大ヒットを記録したサバイバー (Survivor)の『アイ・オブ・ザ・タイガー Eye of the Tiger』があります。主演のシルベスタ・スタローン自らが、サバイバーに作成を依頼したと言われています。映画のヒットと共にこの曲も人気となり、ビルボードヒットチャートで6週連続No.1を記録しました。それまでヒットに恵まれず、一般的には無名に近かったサバイバーは、この曲の大ヒットにより、翌1983年のグラミー賞で最優秀ロック・パフォーマンス部門を受賞し、一躍大スターの仲間入りを果たしました。

私がこれまでに知り合った同年代の方々には、初めてのデートで観に行った映画が『ロッキー3』であり、劇中の劇的な場面で使われるこの曲は青春の思い出の一ページ、という人が少なくありません。サバイバーというバンド名は知らなくても、『アイ・オブ・ザ・タイガー』という曲はよく知っているという人は、結構多い気がします。シカゴ出身のベテランバンド、サバイバーには数多くのヒット曲があり、決して"一発屋"というわけではありません。しかしながら、続編の『ロッキー4/炎の友情』(1985)の主題歌(『バーニング・ハート Burning Heart』)を手掛けたこともあり、何となく「ロッキー御用達のバンド」みたいなイメージがあることは否めません。私の友人にサバイバーというバンドの熱心なファンは、私も含めていません。

サバイバーに限らず、サントラ盤からの楽曲が大ヒットしたアーティストには、そのインパクトが強すぎて、それ以外の活動が評価されていない傾向が見られる気がします。

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