金曜日の随筆2024:回鍋肉の思い出
また運命を動かしていく金曜日が巡って来ました。2024年のWK31、文月の肆です。本日は、『回鍋肉(ホイコーロー)の思い出』というテーマです。
大学時代の思い出の味
社食の日替わり定食は、回鍋肉定食でした。久々に食べて、「懐かしい」という気持ちになりました。大学時代に過ごした神戸の二年間の記憶と直結したからです。
私は、大学3、4年生の二年間、神戸市灘区のアパートに下宿をさせてもらっていました。私の実家がある加古川市から、大学のキャンパスがある最寄り駅のJR六甲道駅もしくは阪急六甲駅までは、乗り換え含めてせいぜい1時間程度なので、自宅から通学できない訳ではありません。家を出たのは、ひとえに私のわがままでした。両親は、私の夢が高校卒業と同時に家(生まれ故郷)を出て、東京で独り暮らしをすることだということを知っていました。その夢が破れ、人生の計画が狂ったことに度々不満を漏らしていた私の姿を見るに見かね、目をつぶって許してくれたのだと思います。経済的にも大変だったと思います。両親の寛容さには、当時は理解していませんでしたが、今となっては本当に感謝の気持ちしかありません。
もしも、あの二年間の神戸での生活が無かったら今の私はない、と断言できます。自立するとは…… 社会に出るとは…… 生きるとは…… もっともっと甘い考えで過ごしていた可能性があります。あの二年間、神戸の街で、大学のキャンパスで、下宿の部屋で、自由を満喫しながら過ごした貴重な経験は、私の中に唯一無二の宝物として蓄積しているように思います。
その二年間の日常の思い出の味が、「回鍋肉」になります。
餃子の王将、阪神御影店の絶品回鍋肉定食
私は学生になるまで、回鍋肉という料理を食べたことがなかったように思います。日本語訳は「豚肉とキャベツの味噌炒め」と理解していますが、具にはキャベツ以外の野菜が使われていたり、醤油の風味が強い味付けもあったり、店によって、かなり味わいの違ってくる料理だと思います。
家を出るまで実家でまともに料理をしたこともなかった私は、下宿を始めた最初の頃こそ、物珍しさで自炊に挑戦したりしていましたが、すぐに面倒になり、外食や弁当に頼る生活になっていきました。神戸市灘区や東灘区には学生も多く住んでいたので、安くて美味い定食屋や、外食チェーン店も豊富に揃っていました。日常の足として50CCのスクーターを乗り回していたので、数十キロ圏内の外食店は概ね頭に入っていました。
中でもよくお世話になっていたのが、餃子の王将です。安くてボリュームのある食事を欲している時(まあいつもですが)は、中華料理が最適であり、夕食の定番としてよく利用していました。私の活動圏内には、三軒の王将があり、王子公園駅に近い水道筋商店街の中、阪神電車御影駅の近く、阪急電車岡本駅の近く と三軒の王将があり、それぞれ、「スイ将」「ミカ将」「オカ将」と呼んで、ローテーションを組んでいた時期までありました。
王将で餃子定食やチャーハンとと並んでお気に入りだったのが、回鍋肉定食です。なかでは、「ミカ将」の回鍋肉が断トツであり、私の回鍋肉原点です。他の二店舗が醤油味が前面に出るタイプだったのに対し、「ミカ将」の回鍋肉は、甘辛い味噌の味わいが独特で、大ぶりに刻まれたキャベツと豚肉との絡み具合が絶品でした。
卒業してからも時々食べたくなった懐かしの味
実際、私と同意見の人は多く、回鍋肉定食は「ミカ将」の人気メニューでした。卒業してからも無性に食べたくなる時があり、神戸出張時に立ち寄ったりしたことも数回ありました。開店と同時に行ったら、既に列ができていた時もあって、人気店のようです。餃子の王将は、定番メニュー以外は、各店で特徴ある定食やセットが食べられるので、今でも時々利用します。
回鍋肉は、今でも好物です。基本的には味噌味が前面に出てくるタイプが好みなのですが、醤油風味の強い回鍋肉では、東京駅近くにあった(今もあるのだろうか)「天山」という高級中華料理屋の回鍋肉が美味かった記憶があります。夜は高級店ですが、昼のランチはボリュームもあって、コスパがよく、会社の仲間数人で行って、何種類かを選んで全員でシェアするスタイルで食べていたことを思い出します。
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