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『現代思想入門』を読む

本日は、今年発売されてベストセラーになっている千葉雅也『現代思想入門』(講談社現代新書2022)の読書感想文です。実はまだ読了できていないものの、読み進め易く、知的好奇心を駆り立てられる一冊です。

哲学への憧れ

著者の千葉雅也氏は、哲学専攻の大学教授である一方、2021年に発表した『オーバーヒート』が第165回芥川賞候補にもなった本格的な小説家でもあり、マルチに活躍されている人物です。

私にとって、哲学書は難関中の難関です。過去何度か、この難解な世界に全力で踏み込んだものの、全く歯が立たなくて挫折してばかりでした。カント、ニーチェ、キルケゴールなどのメジャーな哲学者の名前や、有名な学説などの雑知識を、うっすらと記憶している程度の浅学の凡人です。最近になって、飲茶『史上最強の哲学入門』(河出文庫2015)や、ドイツの哲学者、マルクス・ガブリエルの一連の書籍に触れて、やや身近に感じられるようになってきました。

フランス現代哲学の入門に最適

本書が売れている背景には、昨今の哲学に関する関心の高まりもありますが、小説家でもある千葉氏の筆致力も影響していると感じます。西洋哲学の中でも一際ハードルが高いと言われる、フランス現代哲学の一般人向けの入門書として、本書は価値が高いと感じます。

第二章では、ドゥルーズ(Gilles Deleuze 1925/1/18-1995/11/4)、第三章では、フーコー(Michel Foucault 1926/10/15-1984/6/25)の思想に紙面が割かれています。第四章では、現代思想を理解する上での土台となるニーチェ(Friedrich Wilhelm Nietzsche 1844/10/15-1900/8/25) 、フロイト(Sigmund Freud 1856/5/6-1939/9/23)、マルクス(Karl Marx 1818/5/5-1883/3/14)の思想が扱われています。

勉強する=哲学に挑む

千葉氏は、何だかんだいっても、現代をしぶとく生き抜く為には、愚直に勉強し続けること以外に活路はない、という趣旨のことを発言されています。「ハック」「ワンチャン」を狙っていくことが当たり前になってきている現代において、地味で平凡な姿勢ながら、『勉強の継続が大事』は真実だと思うのです。

哲学を勉強することで、自分に染み付いてしまっている価値観を変化させることができる、とも言っています。自分を変えることに挑み続けないと、濁流に呑み込まれてしまい、ただ漂い続けるだけになるような気がしています。自分の人間としての可能性を諦めずに勉強する姿勢だけは、最後の最後まで維持でしたいものです。本書のような良書を読んで、刺激を入れていくことは、知の劣化を防ぐ意味で有効だと感じます。

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