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名言が与えてくれるもの6:やってみせて、言って聞かせて、やらせてみて、 ほめてやらねば、人は動かじ。

誰しも心に響いた名言を持っていると思います。私にも、"あの時に聞いた(目にした)あの一言でその後の人生が変わったかも……"と思う大切にしていることばが幾つもあります。

普段誰もが日常的に使っている何気ないことばであっても、誰が発したのか、どのような状況で言われたのかによって、その意味や受ける印象は大きく変わります。また、受け取る側の気持ちや直面していた状況によっても、響き方が大きく違ってきます。   

そのような前提を踏まえた上で、私が過去に影響を受け、生きる上で参考にしていることばを振り返ります。第6回は、「やってみせて、言って聞かせて、やらせてみて、 ほめてやらねば、人は動かじ」 です。


リーダーが心に刻むことば

このことばは、太平洋戦争開戦時の日本海軍連合艦隊司令長官、山本五十六(1884/4/4-1943/4/18)の非常に有名な教えです。このことばには更に続きがあって、

やってみせて、言って聞かせて、やらせてみて、 ほめてやらねば、人は動かじ。
話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。
やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。

が全文であることも割とよく知られています。リーダーシップの研究でもしばしば引用される至言であり、組織を統率する立場にあるリーダーが、心に刻んでいるという話もよく聞きます。

山本五十六とは

このことばの主である山本五十六は、旧越後長岡藩士・高野貞吉の六男として生まれた海軍軍人です。日露戦争の分水嶺、日本海海戦を勝利に導いた東郷平八郎と並び、旧日本海軍の歴代提督の中でも、最も著名な人物のひとりでしょう。

山本について書かれた伝記や書物は沢山あり、指揮官としての資質、功績については賛否両論があり、評価が分かれる軍人です。しかし、その人間性には独特の温かみがあり、部下から慕われていたリーダーであったことは間違いないようです。幼少時代、軍艦好きだった私は、数々のエピソードを持つ山本に、ずっと好意と尊敬の念を抱いてきました。

人を統べるための具体的行動指針

このことばは、組織を束ねるリーダーが、部下をマネジメントするための具体的な行動指針としても優れた内容を含んでいます。

もっとも、実際の山本は人の好き嫌いが激しく、側近に置く人間を自分の嗜好で選ぶタイプだった、という話もあります。ただ、部隊の下士官や兵卒クラスには、概ねこのことばのような公平なスタイルで接していたので、「おらが大将」と慕われ、圧倒的人気があったと言われます。

昭和になる頃の軍隊組織は、上下関係の厳しい巨大な官僚組織のようになっていました。幹部クラスの中には、自分よりも目下の位の者に対して、人を人とも思わないような態度を取る人間もいた筈です。山本のような偉い人が、位が低い人間にも気に留めてくれていることに触れたら、部下はさぞ感激し、「この人のために」と刻苦勉励しただろうと想像できます。

今の時代こそ、必要な態度

インターネットの普及で人間同士の交流方法が多様化する一方で、孤独に耐えなければならないことが増えている現代には、この山本のことばは、有効な人心掌握術でしょう。ここまで部下のことを考えてくれるリーダーであれば、喜んでついていきたいと思うのも当然かな、と思います。比較的大きな組織で慕われているリーダーには、こういった気配り、心配りに長けたタイプの人物が多い気がします。  

私は、このことばに感動し、今でも強く惹かれています。あらゆる人と付き合う際の真実と基本原則が潜んでいると思います。相手が大切にしていることに目を向け、耳を傾け、理解する努力をする…… 色眼鏡を外し、相手に純粋な関心を持つという姿勢が大切なのだと思います。ともすると身勝手になってしまう自分への戒めとして、刻み続けておきたいことばです。

このような立派な態度を実践し続けることは並大抵のことではなく、とても難しいことも痛感しています。属する組織の特質によっては、狙った成果が出ない可能性もあり、絶対視できない態度である気もしています。

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