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経済政策についての自由意見

本日は、小幡績氏(慶応義塾大学大学院教授)の『なぜ経済学者も政治家もバカになったのか?』(東洋経済online 2023/9/30)という挑発的なタイトルの記事をベースに、個人的見解(要望)による自由意見を残します。


裏のありそうな記事

著者の小幡績氏は、非常に頭のいい人だと思っています。1992年に東京大学経済学部を首席で卒業。大蔵省(現・財務省)を経て、2001年にハーバード大学で経済学博士の学位を取得し、現在は慶応義塾大学大学院の教授の職にあります。著書の『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書 2008)は、内容は綺麗さっぱり忘れましたが、楽しく読んだ記憶があります。

本日テーマにする記事の大半も、非常に楽しく読めました。
●1968年にノーベル経済学賞が設定され、その価値の割に経済学者がエラそうにできるようになった……(経済学はいまだ未熟な学問)
●日本は「一挙解決願望症候群」を患っている…… 
●未体験ゾーンの判断にまで、EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング。証拠に基づく政策立案)を持ち出すからおかしなことになる…… といったあたりの切り口は誠に痛快で、かなり面白かったです。ところが、

では最後に、私が常識による政策を提示しよう。

以降の記述(競馬は除く)には、頭脳明晰な小幡氏にしては、「らしくないなあ……」との思いが募りました。小幡氏がここで書いているような処方箋を、日本政府や日銀が考えていない訳がない、と思ったからです。あまりにシンプル過ぎて、逆に何か裏がありそうだ…… と疑ってしまいました。

個人的見解

おそらく政策当局は、短期的に目先の超円安問題を解消することなど容易いと思っている、ことでしょう。政策当局が思案しなければならないのは、超円安問題を退治した後の「その先」だからです。ゼロ金利を解除し、経済理論的には明らかに歪んでいる現在の超円安が解消すれば、緩やかな物価上昇も、ようやく端緒についた賃金上昇の機運も雲散霧消することになってしまう可能性があります。そうなってしまっては、長年政策判断の皺寄せ先を引き受けてきた商品物価(生産者)と賃金(労働者)が浮かばれません。

予定通りの金利上昇の後に待っているのは、国債発行の抑制と国債償還費負担増の穴埋めや国債に代わる財源確保の為の増税でしょう。増税路線は、既に始まっていると言ってよく、現状50%を超えて世界一とも言われている国民の税負担率が、益々大きく引き上げられることになってしまいます。それは、私のみならず大多数の国民が、いい加減勘弁して欲しい、と思っているのではないでしょうか? 政府当局も、その国民感情くらいは敏感に感じ取っている、と思いたいところです。日本政府には、どうかこのまましばらくは、世界最大の借金大魔王のままでいて欲しいのです。微力ながら、個人で国債もちびちびと買っています。
 
ゼロ金利解除によって目先の簡単な宿題(超円安)を解いてしまうことで、日本経済には別の激震が起こるでしょう。日本の指導者層は、日本経済・国民に与えるインパクトの大きさを慎重に分析し、誰に皺を寄せるか、誰にババを掴ませるか、というシナリオの作成自体は既に終えている、と私は思っています。今は、そのシナリオ実行のXデーに向けて、着々と足場固めと啓蒙活動に入っている段階だと想像しています。指導者層にも良心があって、最大多数の国民の生活をソフトランディングすべく、よきタイミングを図っている、と信じたいところです。

ゼロ金利解除は、いつかはやらねばならない決断でしょう。ただ足元は、幸いにも欧米を苦しめていた超インフレ(むしろ、これこそが異常事態だったと思います)も、そろそろ上限の着地点が見えてきました。本年一杯くらい凌ぎ切れば、欧米よりはマシなインフレ、マシな物価上昇水準に落ち着くという判断もできそうな気がしています。二つの戦争が、日本の異常な経済運営への国際社会の注目度は薄めさせています。国際社会は、ふらついている中国経済の行く末の方が遙かに関心が高い筈です。もうしばらくなら、批判を受けずにお目こぼしが許されそうな気がします。
 
実際の所、私は現政権の「マイナス金利の維持」「円安は忍従」という政策の恩恵を受けています。変動金利で借りている住宅ローンは低金利のままで安堵されているし、外貨ベースで積み立ててきた投資信託や外国債券の含み益は大きくなっているし、保有していた日本株の値上がりも顕著になっています。日本政府から支援金を貰って、個人金融資産を積み上げさせてもらっているといっても過言ではありません。現在は、近い将来のゼロ金利解消に向けて、鋭意対策(=資産のリバランス作業)中であり、もう少しだけ時間的猶予が欲しい、というのが偽らざる心境です。

私は以上の極めて個人的な理由から、現時点では日銀のゼロ金利解除という政策変更には賛成できません。小幡氏の「常識的」な政策提案は、反対勢力によって断固抑え込んで頂きたいという考えです。

小幡氏には、アベノミクス全盛時代に少数派エコノミストの地位に押し込められていた恨みと、この機会を捉えて復権したいという野心があるのかもしれません。小幡氏が、このタイミングでこのような挑発的で些か乱暴と思える主張の記事を書いたのは、日本政府に貸しを作るためでは? と疑ってしまいます。 


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