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リベラル・アーツの重要性が腹落ちした日

本日は、あるきっかけによって、リベラル・アーツの重要性が腹落ちした日になりました。その感動の薄れないうちに文章に残しておきます。

リベラル・アーツの自由七科

昨今、リベラル・アーツ教育の重要性が強調されます。リベラル・アーツの実体が何か? について、私はふわっとしか理解していません。漠然と大学の一般教養課程で学んだ「人文科学・社会科学・自然科学の基礎分野 」みたいなもので、文学とか芸術とか文系寄りのイメージを持っていました。

リベラル・アーツ【liberal arts】
ギリシャ・ローマ時代に理念的な源流を持ち、ヨーロッパの大学制度において中世以降、19世紀後半や20世紀まで、「人が持つ必要がある技芸(実践的な知識・学問)の基本」と見なされた自由七科のことである。
具体的には文法学修辞学論理学の3学(trivium)、および算術(数論)・幾何(幾何学、図形の学問)・天文学・音楽の4科(quadrivium)のこと。
ー Wikipediaより引用

リベラル・アーツは、なぜ、この七つが自由七科として選定されているのか……、腹落ちする話に本日出会いました。

物語でしか世界を把握できない

Voicy『荒木博行のbook cafe』で、ゲストの東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授(メディア論)・柳瀬博一氏の話に腹落ちするものが多くありました。

● 人間の脳は、結局の所、物語の構造でしか世界を把握できない。
● なので人は膨大な出来事を取捨選択し、物語化してあらゆる事象を認知している。
● 実際の世界は、同時進行で、不可逆で、時間が流れているだけ物語なんて実際には存在しない。(映画『マトリックス』の冒頭の数字が流れ続けるシーンのイメージ)
● 人は膨大な情報をランダムに繋いで、星座のようにみなして、物語にして眺めている。
● 単なる文字列を世界を認知する媒体とすべく、文法・単語・物語という概念に法則化した。
● 法則を発見するためには、物語の構造から逃れられないし、物語を伝えるためには法則化の手法が必要になる。物語と法則は、人類進化のカギ。
● 世界を掌握する技術である物語・法則の技法が洗練されていく必要があった。それを体系化しようというのがリベラル・アーツ。

上記の説明の流れを踏まえて、リベラル・アーツ=世界を掌握する方法と落とし込むと、なぜ上記の自由七科に集約されているのかが、腹落ちしました。

むすんでひらいて

その後外出して、映画『マスカレード・ナイト』を観て、帰りの電車に乗っている時に、リベラル・アーツをテーマに記事に書こうと決め、考えていた時に思い浮かんだのが、童謡『むすんでひらいて』でした。

この曲の作曲者は、ジュネーヴ生まれでフランスで活躍した思想家、ジャン=ジャック・ルソー(Jean-Jacques Rousseau 1712/6/28-1778/7/2)です。現在広く知られている日本語の歌詞の作者は不詳で、第二次世大戦後に広まったようです。この歌詞が実は物凄く深いのではないかと思ったのです。

むすんで ひらいて 手をうって むすんで
またひらいて 手をうって その手を 上に/下に/頭に/ひざに
むすんで ひらいて 手をうって むすんで

『むすんでひらいて』の振り付けでは、”むすんで connect”で、手を丸めてジャンケンのグーを作り、”ひらいて open”で指を広げて、ジャンケンのパーのポーズを作ります。この”むすんで”のポーズは、日常用語的には、おそらく"握る hold"と表現する方が妥当でしょう。

”ひらく open”の反対語で一般に連想するのは、”とじる close”で、国語のテストで”開く”の反対語に”結ぶ”と書いたらおそらくバッテンをもらうことでしょう。

冒頭の”むすぶ”を、”糸/紐を結ぶ"と解するなら、"ほどく””はずす”という表現もありかもしれません。”ひらく”もなくはないのかもしれませんが、ひらく/むすぶの対には、ちょっと違和感を持っていました。

しかしながら、今日の腹落ち感覚を当て嵌めてみると、ぱっと視界がクリアになりました。”むすぶ”とは、無数に散らばっているドットを瞬間的に結び合わせて、形や概念に形作る行為、”ひらく”ではそれをばらす行為と考えたらどうでしょう。一連の動きが、起承転結のようになっていると考えられたのです。

人間の脳は、物事の認知・理解に物語を必要とする、という柳瀬氏の解説を当て嵌めると、持ち合わせている思索の為の点を、「結んで/開いて」を何度も繰り返しながら、新境地に到達していくのが人間なのだという気がしました。点を結んで物語を作り、法則を見い出す。そして、点を繋いで設定した枠を開放し、より遠くの点を加えて領域を拡大したり、集約して狭めたり、思考の幅を柔軟に操れると強いなあと思います。

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