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『ローマの休日』の思い出

本日のテーマは、大好きな映画『ローマの休日 Roman Holiday』です。この映画に、私は特別な思い入れがあり、以前から是非とも書き記しておきたいと思っていました。


名作『ローマの休日』

『ローマの休日』は、私がこれまでに最も多く観た洋画だろうと思います。製作・監督は、ウィリアム・ワイラー(William Wyler, 1902/7/1-1981/7/27)。1953年製作のアメリカ映画です。

各国を表敬訪問中の某国の王女が、がちがちに管理されたスケジュールをこなすだけの毎日に嫌気がさし、ローマ訪問中に滞在先のホテルを脱け出して市内に繰り出し、偶然知り合った新聞記者と過ごす一日を描いた作品です。

新聞記者を、グレゴリー・ペック(Eldred Gregory Peck 1916/4/5-2003/6/12)、王女をオードリー・ヘプバーン(Audrey Hepburn 1929/5/4-1993/1/20)が演じています。

映画には、ローマの観光名所が登場します。ベスパを二人乗りして市内を走り回るシーンや、スペイン坂で二人がジェラートを食べるシーンはつとに有名です。

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オードリー・ヘプバーンは永遠の憧れの女性

この映画のオードリー・ヘプバーンは、私にとって永遠の憧れの女性です。この映画は白黒映像(製作費を節約する為だったと言われています)ですが、ヘプバーンの美しさ、可憐さは際立っていて、何度観ても見惚れます。ウエストの細さは驚異的です。『ローマの休日』は、この時期の彼女の輝くような美しさを永遠に閉じ込めた奇跡の映像作品だと思っています。

この映画の製作企画段階では、王女役の候補には、エリザベス・テイラー(Dame Elizabeth Rosemond Taylor, DBE、1932/2/27-2011/3/23)やジーン・シモンズ(Jean Merilyn Simmons, 1929/1/31-2010/1/22)などの大スターが挙がっていました。予算やスケジュールの関係からぽしゃり、ヘプバーンに白羽の矢が立つ経緯が素敵です。

1951年7月パラマウント社ロンドン支社のリチャード・ミーランド製作部長は「『ローマの休日』の新しい候補、オードリー・ヘプバーンを発見した。『素晴らしき遺産』で彼女が演じた小さな役に感銘を受けた。」とニューヨークの事務所に送った。ロンドンに立ち寄ったワイラーはオードリーに会い「何か独特の個性を持っているという強い感銘を受け、早速カメラ・テストをすることにしました」と答えている。
当時、オードリーは映画界では無名に近い存在であったが、その彼女をロンドンのパインウッド撮影所に呼んで1951年9月18日にスクリーン・テストを受けさせた。監督はオードリーの希望で『初恋』の監督だったソロルド・ディキンソン。他に俳優でライオネル・マートンとキャスリーン・ネズビットが出演した。ワイラーはありのままのヘプバーンを評価するために、ベッドから起き上がるシーンのテストが終わってもカメラを回して撮影しておくように指示した。テストが終わったと思い込み、笑顔で伸びをする自然なヘプバーンのフィルムを見たワイラーはヒロインに抜擢することを決めた。

Wikipediaより抜粋

ヘプバーンは、本作で1953年アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞し、以降は数々のヒット作品に出演して、世界的スターへの階段を上っていきます。

ヘプバーンの美貌が際立っているのは、『ティファニーで朝食を』や『マイ・フェア・レディ』あたりの作品だという意見もあります。しかし、私は『ローマの休日』以外のヘプバーンには、それほど惹かれません。

晩年はチャリティー活動などにも積極的に従事し、人間的にも素敵な女性だったと思いますが、彼女の熱烈なファンという訳ではありません。ただただ、この作品での彼女が最高だ!と思うだけなのです。

ヘプバーンを巡るどうでもいい私の思い出

スマッシュヒットした、ジッタリン・ジンの『プレゼント』という曲の歌詞で、別れた彼から貰ったプレゼントとして羅列される中に「ヘプバーンの写真集」が出てきます。この彼氏、気障だけど素敵だなあ…… と思います。今でも本屋などで彼女の写真集を見つけると、この歌詞を思い出してドキッとします。

あと、これはどうでもいい話、完全な余談ですが、私には、ヘプバーン以外にも鮮烈な衝撃を受け、問答無用で魅了されてしまった女優さんが何人かいます。例えば、『三井のリハウス』CMの時の宮沢りえさん、最近では映画『海街diary』の時の広瀬すずさんです。

『ローマの休日』は誤訳?

原題の『Roman Holiday』を忠実に訳せば、『ローマ人の休日』でしょう。邦題の『ローマの休日』から連想されるのは、『A Holiday in Rome』です。

ローマ人ではない某国の王女とアメリカ人の新聞記者が、一日だけローマ人のように休日を楽しむことで起こる事件を描く作品ですから、『ローマ人の休日』というタイトルは十分な整合性が取れています。実際、『ローマの休日』は誤訳だったとする説もあります。

しかしながら、もしもこの映画のタイトルが『ローマ人の休日』だったら、これほどの名作として愛される映画になったのか、私は疑問に感じます。仮に意図せぬ誤訳だったのだとしたら、何ともいえない隠微な空気感を醸しだしているこのタイトルの響きは秀逸だと思います。

英語の学習教材として

この映画のビデオテープは、アメリカの語学学校に通っていた頃、何度も何度も観た英語の教材でした。英語を母語としない外国人の英語学習に最適な条件を、この映画の設定が備えているように思うのです。

● ペックは米国人記者の設定なので、ジャーナリスティックな表現と日常的なアメリカン英語的表現の両方を使っている。
● 王室内で使われる英語からは、恭しい表現が学べる。
● ヘプバーンはベルギー育ちで、英語が母語ではないので、話す英語が非常に聞き取りやすい。(ベルギー人の英語は日本人には世界一聞き取り易いという話があります)
● ローマが舞台で、英語を母語としない人との会話シーンも多く、複雑な言い回しが少ない。

この映画で私が特に好きなのは、ラストシーンです。短い冒険を終え、翌日に王女と新聞記者として再会を果たした際、ヘプバーンが事前に決められていたコメントを覆し、「ローマ!」と叫ぶシーン(Each, in its own way, was unforgettable. It would be difficult to-- Rome! By all means, Rome. いずこもそれぞれ忘れ難く、善し悪しを決めるのは困難…ローマです!) 何よりローマです)には毎回心を打たれます。そして、あの名台詞が繰り出されます。

I will cherish my visit here in memory as long as I live.
私が生き続ける限り、この訪問は想い出として大切に守っていきます。

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私は、この”I will cherish my visit here in memory as long as I live.”というセリフとこの時のヘプバーンの表情が大好きです。何度も何度もリピートして観たシーンです。

この先二度と交わることのない二人の運命を達観しつつ、それでも名もなきローマ人のようにあなたと過ごした束の間の時間=Roman Holiday を永遠に自分の記憶に刻みつけ、王女としての役割を全うします…… という強い決意が集約されています。若き王女の思い全てを凝縮した素晴らしい名台詞であり、最高のラストシーンだと思うのです。



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