人生に克つ
本日は、「人生に克つ」という大層なビッグテーマを考えてみます。一般的に用いられる「勝つ」ではなく、「克つ」もしくは「勊つ」です。
人生は自分との闘い
「克」という字は、「克服」「克己」のように使われることから、「克つ」は、「欲望などを抑える」「困難を切り抜ける」という意味合いがより強いイメージとなります。今の私は人生の目的に、他人と競争して打ち勝つことを据える気にはなれません。元々は負けず嫌いで、競争志向の強いタイプではありましたが、今では他人と勝ち負けを争うことにファイトが湧きません。
一方で、傲慢な自分、努力を怠っている自分、未熟さを直視できない自分、を乗り越えたい、一歩でも半歩でも改善して、寛容で円満な人間になりたい、という願望を捨ててはいません。残された人生を、他人との勝負(あるいは比較)ばかりで埋めたくはありません。過去の傷痕や、抱えている孤独感や、時折予告なしに襲ってくる虚無感は、この先永久に消えることはないと思います。しかし、これから先にどんな状況に出くわしてもまずは受け容れて、理想の自分に近付ける精進をしていきたいと強く思っています。その為には、欠点を素直に認めて、改善しようと思えるだけの心の余裕が必要だと感じます。
3つのC
自分のことを、「悲しいくらいに凡人だな」と思います。「一廉の人物になりたい、いやなれるに決まっている」と根拠のない傲慢な自信を抱いていたのは遠い昔のことになってしまいました。
安定して力を発揮して、人生をしぶとく生き抜いていく為には、3つの「C」、すなわち、集中(Concentration)、冷静(Controll)、自信(Confidence)がバランスよく保たれていないといけない、と読んでいた本に書いてありました。成程、そね通りでしょう。似たようなアドバイスには数多く出会ってきましたが、最終的に「人生に克つ」ための重要な要素であると思います。
現在の私は、三番目の「自信」の部分がやや欠損していて、必要以上に卑屈になってしまっているような気がしています。その本には、3つのバランスが崩れている場合には、4番目のCにあたるコミュニケーション(Communication)を発動させることで回復が図れる、というようなことも書かれていました。実践してみようと思います。
Time Tested Beauty Tips
稀代の名女優、オードリー・ヘプバーンが、生前最後のクリスマスの夜に、愛する息子たちのために読んで聞かせたと言われる詩が、米国の詩人、サム・レヴェンソンの“Time Tested Beauty Tips(時の試練によって磨かれる美)”です。
なかなか趣き深い、沁みる内容です。ヘプバーンらしい選択だなあ、と感慨深いものがあります。
太字の部分は、とりわけ有名になった部分です。人生の晩年には、ユニセフ親善大使として、慈善活動に熱心に取り組んだ彼女にとって、「我が意を得たり」と心の琴線に触れた部分だったのかもしれません。
彼女は、1993年1月に63歳の若さでこの世を去っていますが、多くの人に愛され、まさに「人生に克った」人だったように思います。
人生のゴールはぼんやりと定める
人生のゴールは、ぼんやりとではあるものの、常に持ち続けています。状況の変化に応じて、色々と修正した部分もありますが、敢えて言語化はせず、感触とイメージで持っておきたいと思います。
これからの人生を考える上では、「ゴール」ということばよりも、「ヴィジョン」ということばを使った方がしっくりくるかもしれません。数値化したり、言語化しておいた方がいい分野もありそうですが、数値化や言語化で絞り込んでいくと、どうしても常識的、現実適合的なものになっていきます。明らかに公序に反する目的を掲げることもできません。それに縛られて、方向性が決められ、窮屈な歩みを強いられるのも退屈です。
人生には、「克ちたい」と思っています。56歳の現在まで生きていること、幸いにして酷い怪我も慢性的な病気も抱えていないことで既に克っているとも言えます。その幸運には感謝の気持ちを忘れず、小さな欲を細々と叶えていきたいと思います。そして、小さく「yes!」と呟きながら、拳を握りたいと思います。
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