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『シン・ゴジラ』を観る

本日は、2016年公開の映画『シン・ゴジラ』の鑑賞記です。

シン≠新

本作では、庵野秀明氏(1960/5/22-)が総監督・脚本、樋口真嗣氏(1965/9/22-)が監督・特撮技術監督を務めています。「新世紀エヴァンゲリオン」シリーズで知られる日本のトップクリエイターです。

『ゴジラ』は、1954年公開の特撮怪獣映画に始まる東宝の人気映画シリーズです。本作はその第29作目にあたります。製作委員会方式ではなく、東宝の単独出資で製作されています。(制作費は約15億円)

庵野氏の独自の世界観と最新の特撮技術が公開前から話題となっており、2016年公開の邦画実写映画で1位を獲得しました。累計動員数は約551万人、最終興行収入は82.5億円に達する大ヒットを記録しています。「シン・〇〇」の名称の走りはこの映画のヒットではないかと思います。

群集劇だけど要所には大物を投入

基本的に群集劇映画ですが、以下の三人が主要キャストです。

◆矢口蘭堂(長谷川博己):
内閣官房副長官(政務担当)、巨大不明生物特設災害対策本部事務局長。世襲政治家。
◆赤坂秀樹(竹野内豊):
内閣総理大臣補佐官(国家安全保障担当)。矢口とは旧知の仲
◆カヨコ・アン・パタースン(石原さとみ):
米国大統領特使。代々政治家の名門家生まれの日系三世で、父は有力な上院議員。

冒頭で謎の失踪シーンが描かれます。それが、後のストーリーで、ゴジラの秘密の鍵を握る生物学者、牧吾郎博士であることが明らかになります。牧博士は、映画監督の岡本喜八が演じています(写真のみ)。また、東京を襲撃し、破壊するゴジラのモーションキャプチャーは、狂言師の野村萬斎が担当しています。

ゴジラは神? 神を殺す物語?

映画のキャッチコピーは『現実(ニッポン)対虚構(ゴジラ)』ですが、『人間(ニッポン)対神(ゴジラ)』の物語と言い換えてもいいかもしれません。

ゴジラは、急速に巨大化・高機能化していく進化生物であり、人間の遺伝子情報も持つ最も神に近い生物体として描かれています。「まんまエヴァンゲリオンの設定じゃないか」と言っている人もいます。

映画の前半に、赤坂が発する「生物であれば必ず倒せる」という人類至上主義的セリフがあります。ゴジラがどんなに巨大で強力あっても、生命体の一つなのであるのならば、地球上の覇者である人間のテクノロジーや知恵を結集すれば、必ず制圧できるという価値観が示されます。

多くの宗教で崇められる神の中で、最も高貴なのは、破壊神です。神から人類に向けられた怒りの刃から逃れる為に闘いを挑む物語です。いずれは人類の叡智を凌駕すると言われ、神に近い存在になりつつあるAIとの闘いの到来をイメージさせる設定だと感じています。

キャラも楽しめる

ゴジラに対抗する集団(日本政府)側の動きは、2011年3月11日に発生した東日本大震災発生後の政府内の混乱もこんな状況だったのではないか、と想起される演出がなされています。かなりのリアル感が出ていました。

事態が悪化するにつれて、流されながらも徐々に日本を背負うリーダーの覚悟を決めていく大河内総理(大杉連)、「想定外」ということばを度々使う金井大臣(中村育二)、自分のカラーを出そうとする柳原大臣(矢島健一)など、日本的権力者を照射する人物として描かれていて興味深かったです。

矢口に付き添う佐伯秘書官(高良健吾)や個性的な対策本部のメンバー、野心的で辣腕を持つ泉修一政調副会長(松尾諭)も魅力的な登場人物です。ただこの物語にカヨコの存在は本当に必要だったのか…… 

何度も観たい、ディテールを再確認したい

ゴジラシリーズ、庵野作品には熱烈なファンがおり、本作についても多方面から綿密な分析・解説が幾つも出されています。その中で私は、事前に岡田斗司夫氏の詳細解説動画を観てから、本作を観ました。その影響を強く受けて、映画を観たことを自覚しています。

庵野氏とは旧知の仲でもある岡田氏は、「庵野の映画」と言い、この映画の楽しみ方は”四層”に分かれると解説しています。

一層:怪獣が出てくるポリティカル・フィクション(政治ドラマ)
二層:反原発を考える
三層:被曝国・日本を考える(初代ゴジラのテーマ)
四層:庵野秀明の個人映画

私は、過去のゴジラ・シリーズ作品を観た記憶が殆どありません。ゴジラについての知識もほぼ皆無です。新世紀エヴァンゲリオン・シリーズと同じような状況で、本作品を観ました。庵野氏の意図したこと、本当に描きたかったことを言語化することはできません。何度も見返してみたいです。


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