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青学卒業ランナーのその後を調べてみた

本日は、「青学卒業ランナーのその後を調べてみた」というテーマで、自分の思うところを綴っておきたいと思います。

青学の選手のイメージ

先日書いた『青学の箱根王座奪還に思うこと‐2022』という記事に、Akira Nagakawa様から頂いたコメントの

このチームの残念なところは卒業後の選手としての伸びしろが無いことです。

という部分に目に止まりました。私は卒業後も順調に結果を残している選手が、青学OBには多いという印象を持っていたので、「そうかなぁ?」と率直に思いました。「私は別の意見ですが…」とコメントを返したところ、

世界に通用するまでの記録はでていないですよね。サイド・アウィータさんみたいな選手を期待しています。5000m12分台、10000m26分台、マラソン2時間2分台をだせる選手が青学卒からひとりでも出るのであればわたしは納得できます。

という返信を頂きました。「とんでもないレベルの記録を出す可能性を感じさせる選手が青学にはいない」という趣旨なのかな? と理解しました。

野球でいうところの大谷選手レベルのスケールの大きい選手、スーパーエースと呼べるようなワクワクする選手が出ていないよね…… という選手の器の問題となると、まあそうかもしれない、というところなのですが、「卒業後の伸びしろが無い」については、私の意見は以下の感じです。

青学OBの卒業後

青学卒業ランナーの、現在の5000m、10000m、マラソンのベスト記録を調べてみました。原監督が青山学院大学の駅伝監督に就任したのが、2004‐2005シーズン。そこから強化が進み、大学三大駅伝の一つ、出雲駅伝で初優勝を飾ったのが、8年目の2012‐2013シーズン。箱根駅伝で初優勝を飾ったのが10年目の2014‐2015シーズンです。

なので、2015年から2021年までの卒業生で、卒業後も実業団などで競技を継続したことがわかっている選手に絞って考察してみます。(ひょっとしたら漏れている選手がいるかもしれません)PDFファイルをnote本文に埋め込みする技術がわからなかったため、スマホのショットで代用させて頂きます。見辛くて申し訳ありません。

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黄色でハッチングした部分は、選手が大学卒業後にマークしている記録です。実業団に進んでからも記録を残している選手が多い気がしています。マラソンのサブテン(2時間10分切り)ランナーも8名輩出しているし、田村和希選手(2018年卒)や鈴木塁人選手(2020年卒)のようにトラックレースで、日本一を狙えるレベルで活躍している選手もいます。

青学躍進期のエースで、当時の大学長距離界トップランナーだった、出岐雄大選手(2013年卒)や、ジュニア時代から世代トップで、才能とセンスに溢れたランナーだった久保田和真選手(2016年卒)のように、箱根では大活躍したものの、実業団では目立った活躍が見られないまま引退してしまった選手は確かにいるものの、大学で燃え尽きてしまった選手ばかりではない、という印象です。

青学出身ランナーで、オリンピックや世界選手権で日の丸を背負って、国民の誰もが認知する華々しい活躍をした選手はまだいません。ニューイヤー駅伝に出場して目立った快走をしたのも、田村選手や吉田祐也選手(2020年卒)くらいでしょうか。ただ、強豪校入りしてまだ10年弱の新興チームであり、卒業生の母数の絶対数もまだまだ少ないので、現時点では、少し割り引いて考えてもいいような気がします。

規格外の”逸材”は青学を選ばない?

世代を代表する飛び抜けた才能の持ち主は、そもそも進学先に青学を選ばない、という話を聞きます。毎年青学に入学する選手は、その年の高校長距離ランキング上位のランナーが中心ではあるものの、「超高校級」「今年の目玉」と騒がれる選手が入学する確率は高くありません。学校側が、そういうスーパーランナーの獲得を敢えて避けている雰囲気も伺えます。

これまでのところ、大学および原監督の優先順位は、「箱根駅伝の強い青学チーム」というブランドの確立と維持・向上にありそうです。何かのインタビュー記事で、原監督が、実業団での競技継続が難しそうな選手には、箱根で好走して名前を売り、名の通った企業に就職して、そこで活躍できる人間性を養成することに主眼を置いた指導を行っている、という趣旨のことも言っていました。アスリートも、ひとりの学生であり、やっているのはあくまでも学生スポーツ、それも団体競技の色彩が強い駅伝である、というスタンスが強固にあるのだろうと推測します。

原監督には、現在の青学チームには、
● 飛び抜けた才能を持つ選手を育成するプランとメソッドがチーム内に確立していない、
● そういう選手をチームに受け入れて融合させる土壌と土台が十分に出来ていない、
● チームはそのステージにはない、
という慎重な判断もあるかもしれません。

青学の今後(予想)

ただ今後はどういう方向性に進むのかは、わかりません。今回の優勝を契機に、新たな段階に進むのかもしれません。2019‐2020シーズンには、当時の三年生世代で、実力的にトップの吉田圭太選手と神林勇太選手をニュージーランドへ短期留学させました。これは将来、「箱根駅伝は単なる通過点」で、チームとは別行動が多くなると予想されるエリート選手を指導するためのテストケースの意味合いもあったのかもしれません。

また、将来はマラソンで勝負したいという意思があり、適性があると見込んだ選手には、在学中からマラソン練習に取り組ませています。そして、卒業後はGMOチーム(花田勝彦監督)にその指導と強化が引き継がれるシステムが機能しつつあるようにも見えます。

世界のトップレベルで勝負できるスーパー・エリートランナーの誕生は、偶然と運にも左右される部分が大きいです。そういった可能性を持った選手が青学から出るかは未知数ですが、そういう選手を生み出すための体制作りは進めるでしょう。

おそらく、実績のある伝統校(早稲田大学、駒澤大学、東洋大学、順天堂大学、東海大学、山梨学院大学、帝京大学……)の指導者も同じ問題意識を持っていると思います。そうやって強化環境が整うことで、学生ランナー、日本の中長距離ランナーの水準が上がっていくのは、ファンとして喜ばしいことです。

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