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『持たない幸福論』を読む

昨夜降り続いた雪が積もり、朝起きると雪景色になっていました。昼過ぎまで部屋でダラダラした後、雪が収まっているのを確認して、近所のカフェに出掛けて読書に勤しみました。本日の記事は、昨日に引き続き連続の読書感想文で、pha(ファ)『持たない幸福論 働きたくない、家族を作らない、お金に縛られない』(幻冬舎2015)です。


培った常識を打破する為に

著者のpha(ファ)氏は、シェアハウス「ギークハウスプロジェクト」発起人という肩書はあるものの、世間一般的にはニートに属する生き方を貫いてこられた人です。しかしながら、本書を読む限り、非常に知的であり、大変論理的な考えに基づいて、自らが望む理想の生活を実現されています。

pha(ファ)氏が本書で披露している論理や姿勢は、日本の常識的な考えからは逸脱していて批判を浴びる可能性はあるものの、現在の私には非常に納得力がありました。ここまで理路整然と自分の進む道を見事な言語化能力で主張されると脱帽です。一昔前の、世間の常識に渋々従いながら、我慢して(諦観して)キャリアを築こうと藻掻いてきた人生前半戦の私ならば、感情的になって、強い抵抗を示したかもしれません。

pha(ファ)氏が展開する日本社会への提言

第一章が「働きたくない」、第二章が「家族を作らない」、第三章が「お金に縛られない」と、いずれも興味深いテーマで論が展開されていきます。(第四章は「居場所の作り方」)

各章でのpha(ファ)氏の主張の特徴は、「人間とは〇〇なもの」という前提にしっかりとした納得感・既視感があるので、単なる思い付きや感情に任せた暴言に聞こえないことだと感じます。主張の裏側に、腰が据わった論理が重く横たわっていて、正統派の議論になっていると感じています。むしろ、社会で常識的とされる主張の方に、感情に任せた根拠の乏しい論理や現実の状況と乖離した論理が紛れ込んでしまっているようにすら感じてしまいます。緩そうな表現で、押し付けがましくない雰囲気をまといながらも、きちんと自分の頭で考えて根拠を組み立てて主張していることを感じました。

また、それぞれの問題について、pha(ファ)氏なりの対策が盛り込まれているのもいいと思います。私は、「働かない」「家族を作らない」「お金に縛られない」という選択肢をそのままでは選ぶ気はないものの、だからといって私の考えが攻撃的に否定されている気はしないので、「まあ、そういう考え方はあるし、その方が妥当なんだろうな」と納得はできました。議論の出発点での合意があるので、突飛な提言とは映りませんでした。

私の考え

私自身は……
「第一章 働かない」で書かれている内容には、概ね共感・同意します。「働く」という用語の捉え方には個人差があり、そこに差異があると以降の議論を受け付けなくなるので、フラットに読むことをお薦めしたいです。

「第二章 家族を作らない」で披露されている選択肢を、私は選びません。家族同士の人間関係を主軸に自分の人生を全うする、という決断には揺らぎも迷いもないので、よそ見せずに今の生き方を貫くつもりです。

閉じすぎた集団というものは家族でも職場でもサークルでもなんでも、大体バランスを崩しておかしくなっていくものだ。

P083

という記述には、深く頷きます。

「第三章 お金に縛られない」に書かれている内容への共感は、50:50でしょうか…… pha(ファ)氏が敬遠したいのは、お金を稼ぐ為に気持ちを押し殺して働く、ことなのだと思われ、お金の重要性を否定している訳ではない点は同じです。私は、働くことで被る辛さへの耐性は多少はあるように思うので、お金の正体、お金の重要性、お金を持てる/使える貢献、への興味を継続し、更に理解を深めていこうと思っています。

「第四章 居場所の作り方」については、冒頭に置かれている、

人間が人生の中でやることって結局、大体七割くらいは「居場所を作るため」の行動じゃないかと思う。

P152

がよい問題提起になっていると感じました。「居心地のいい居場所」は、私にとって、生きていく上での優先順位が高く、重要な要素なので、付箋を貼りながら、熟読しました。このパートは、結論出なかったので再読したい気がしています。

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