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海軍精神の探求

2020年も後4日となってきました。本日のnoteは、九州旅行で鹿屋を訪れた際に心がざわついた海軍精神についての考察です。現時点の私の学びや理解が上滑りである不安はあります。今後内容を書き改めたり、題材で付加する前提で書き進めます。

鹿屋で触れた海軍精神

九州旅行で鹿屋航空基地史料館を訪問した際、以下の通り書きました。

施設内には、海軍精神についての解説もありました。旧日本帝国海軍には、日本海海戦という圧倒的な成功体験があります。歴史を重ねる中で培われた海軍精神は、この成功体験とセットになって強固になり、日本人の教育指針や価値観にも確実に影響を与えていると思わざるを得ませんでした。海軍精神的価値観が日本人の国際社会での美点として評価を得ている部分もありますが、弱点になっていると思えるフシもあります。海軍精神の詳細は別の機会に深く掘り下げてみたいと思います。

館内は撮影禁止だったので、海軍精神の解説文はメモしておらず、訪問から一週間経って、記憶は朧げになりつつあります。太字のようにやや否定的に感じた理由を掘り起こしておきたいと思います。

海軍精神の正体

旧日本帝国海軍時代に育まれた海軍精神は、海上自衛隊では伝統として育成・継承すべきものとされ、幹部候補生学校のホームページでは、

①五省
②スマートで、目先が利いて、几帳面、負けじ魂、これぞ船乗り
③5分前の精神
④3S精神
⑤出船の精神

が紹介されています。

①五省

一 至誠に悖るなかりしか…誠実さや真心、人の道に背くところはなかったか
二 言行に恥づるなかりしか…発言や行動に、過ちや反省するところはなかったか
三 気力に欠くるなかりしか…物事を成し遂げようとする精神力は、十分であったか
四 努力に憾みなかりしか…目的を達成するために、惜しみなく努力したか
五 不精に亘るなかりしか…怠けたり、面倒くさがったりしたことはなかったか
ー海上自衛隊幹部候補生学校HPより抜粋

”五省は昭和7年、当時の海軍兵学校長 松下元(はじめ)少将が創始したもの”(HP解説)で、幹部候補生たちは日々就寝前にこの項目に沿って、一日を振り返る習慣を持つようです。

ビジネスマンの間でも、心静かに考えを深める瞑想は密かな人気ですが、通じるものがありそうです。

②スマートで、目先が利いて、几帳面、負けじ魂、これぞ船乗り

スマート」とは、敏捷である、機敏である、スピィーディーである、頭の回転が速い、身のこなし方が良い、洗練されている、颯爽としている、無駄が無い、形式にこだわらない、明朗である、ユーモアがあるなどの感覚をまとめて表現したものです。
目先が利く」とは、先見の明がある、人より先のことを考えている、臨機応変で視野が広い、進歩的である、周囲に対する気配りに優れている、大勢が把握できる、危険予知能力があるということです。
几帳面」とは、整理整頓がされている、責任観念が旺盛である、時間を守る、確実である、清潔である、他人に迷惑をかけない、物・心両面の用意が出来ているということです。
負けじ魂」とは、苦しく困難な局面においても任務を投げ出すことなく、全力で最後まで努力しようとする気持ちを表現していると言えます。
ー 海上自衛隊幹部候補生学校HPより抜粋

海軍/海上自衛隊が考える理想の人間像を端的に言語化したものです。

③5分前の精神

「5分前の精神」とは、予定された作業、日課の5分前には全員が準備を整え、その配置について発動を待つものです。厳格な時間的観念を植え付け、有事の作戦行動に支障の無いことを終極の目的とするものですが、平時の勤務、諸作業においても、各人が次の事象に対処するための心構えの重要性を示唆するものです。常に一歩先のことを考え、それに対する時間的、精神的余裕を持ち、事に臨むことが肝要です。
ー 海上自衛隊幹部候補生学校HPより要約

時間を厳守し、自主的に先回りして考えることをよしとする考えです。

④3S精神

様相が一変しやすい洋上において、全ての措置を円滑に実施するには、
✔ Smartであること、
✔ Steadyであること、
そして、スマートかつステディに行動するために命令者以外は
✔ Silentを保つこと、
が求められる。ー 海上自衛隊幹部候補生学校HPより要約

船に乗り合う乗組員は運命共同体であり、各々が勝手な行動を始めては収拾が尽きません。「デキるヤツは黙って…」の自己抑圧的な価値観が重視されるのは理解できます。

⑤出船の精神

艦船停泊時に、舳先(へさき:船首)を港口に向けている状態を出船(でふね)と言い、艫(とも:船尾)を港口に向けている状態を入船(いりふね)と言う。入船は岸壁を離れた後いったん方向変換する必要があり、緊急時にはそれだけ時間を無駄にする。
これは他の事柄についても言えることで、人、物、組織などあらゆるものが常に直ちに使える状態にしておくことが肝要で、このための心構えを「出船の精神」と表現する。 ー海上自衛隊幹部候補生学校HPより要約

緊急事態に対処できるよう、準備万端怠るなという教えと理解します。

海軍精神から感じた微かな違和感の正体

太平洋戦争前の海軍は、日本最高峰の頭脳と高潔な人格を持った文武両道の有能な人材が集まるエリート集団でした。海上で母艦を運命共同体として日々の生活を送る乗組員にとって、生き残る為には我が儘を言わず、各々が与えられた持ち場でベストを尽くすこと、精神主義に頼らない合理的精神に従って行動すること、が重視されるのはよく理解できます。

今回、海軍精神を詳しく掘り下げてみて、個々の教えには、力を合わせて、困難に立ち向かい、物事を成し遂げる為の有益な知恵が詰まっていることは再認識しました。現代でも有益な真理が多く含まれていると感じます。既に明確で強固な目的が定まっている人が、目的達成を効率的に実現するための秘訣やテクニックとしては秀逸です。極めて実用的な教えばかりです。

では、鹿屋で私が感じた微かな違和感の正体は何なんでしょうか?
それは、目的も課題も明確な社会を前提に、上役の命令によって役割を決められ、「有能なパーツに徹しろ」と言われているような居心地の悪さです。私は不確実で未来を予期できない社会を手探りで生き抜く指針としては、些か均一的で柔軟性に欠ける、と感じました。海軍精神は自由でありたい個人にはやさしくない… ような気がするのです。 

「この国をどうするか」で迷走中の日本から、「常識を信じて沈みたくない」と”逃げ出す”選択肢だってあります。自分の意に沿わない人生を、逃れられない運命と捉えて殉じる生き方を選びますか?



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