価値を測る尺度に「お金」を据えるしかないのか？

本日のテーマは、私が今朝ふと思ったことを膨らませたものです。

コーヒーの価値

我が家では毎朝、市販の計量スプーンすりきり5杯分のコーヒーの粉から、コーヒーメーカーで、9～10杯分のコーヒーを作ります。コーヒーの豆は、色んな種類を試したいので、毎回200g程度をスーパーで買ったり、近所や旅先の焙煎店で買ったりしています。

今朝淹れたコーヒーは、近所のスーパーで妻が買ってきたものでした。
「味どう？」　
と妻が聞きました。

「可もなく、不可もなく…」
と私は感じたままを答えました。妻は一口啜って、言いました。

「う～ん、ほんとだねえ。安くはなかったんだけどなあ…」
以前購入した豆の方がコスパ良かった、というのが私達の感想でした。

私達夫婦はコーヒーのヘビーユーザーですが、コーヒーの価値を語れるほどの知識も味覚も持ち合わせていません。豆を選択する物差しはどうしても『値段』になってしまいます。過去に飲んで印象に残っている豆の銘柄と値段の記憶が私達のベンチマークになっていて、それとの比較で美味しい、美味しくない、割安、割高という判断を下します。

100gで1万円する豆は、どんなに美味いという情報を知っていて、実際に味わった経験があってもチョイスしないし、100gで100円の豆はもし買えても手を出しません。値段が価値判断基準になって私の行動を制限しています。今後狂乱的なインフレが進行しない限り、この行動規範はおそらく今後も変わらないでしょう。

価値判断の尺度は「お金」以外にないものか…

人類の歴史の中で、価値判断の尺度を測る指標に「お金」が座ったのはいつでしょう？　そして今後、その地位に「お金」以外のものが座る可能性はあるのでしょうか？　

「お金は人生の最優先事項ではない」と公言する人が大多数であることは承知しています。私もこの意見に同意します。さらに、「私腹を肥やすことに興味がない」「お金からは完全に自由である」という【お金に囚われていない人】が存在していることも知っています。【お金に囚われていない人】ほど、この世で生き抜いていく上で、お金の果たしている機能・役割・意味を理解し、容認し、使いこなしている人が少なくありません。

【お金に囚われていない人】が、【お金に囚われている人】から感情的に叩かれ、真っ当な対話も成立せず、関係構築に苦労している現実があります。両者の「お金」の捉え方にも差があるのでしょう。不当搾取を容認している支配層に属する人にも【お金に囚われている人】がいそうです。そういう人からすると、全ての人が「お金」に真摯に向き合い、妥当な知識を蓄えられると、具合が悪いという問題もありそうです。

この世に存在するあらゆるモノには、お金に置き換えた場合の値頃感が存在しているように感じています。その値頃感には個人差があります。普段飲みするコーヒーに、100gで1万円の豆を惜しげもなく投入する人はいるでしょう。（その人から見れば、私という人間の価値はコーヒー豆以下かもしれません…）個人が感じる値頃感の差が人間性や価値観の違いを生み、時に対話不能な程の亀裂を生む原因なのか？　と感じる時があります。

価値観を全く別にする人同士が、辛うじて価値判断の尺度として根底に置いている共通言語が「お金」かもしれません。無理やりコミュニケーション手段に使われているので、「お金」の持つ長所や利便性が歪められる問題に発展している気もします。

価値＝「お金」が剥き出しになっているのは…

アクション映画では、人類の公共の利益に反する大掛かりな計画を企てて遂行しようとする集団（悪）を、ヒーロー（善）が阻止する為に闘う、というストーリーが定番です。それで全然OKなのですが、その計画を企てる目的が「お金（あるいは、永遠にお金を生む利権や権力）」だと陳腐な感じがして、興醒めします。圧倒的な頭脳を持つ天才が、「お金」が目的の計画に加担しないでくれよ、って思ってしまいます。もう少し高邁な理想の下に包んでしまっておいて…、大義名分は手抜きせずに作り込んで…　そこは剥き出しにしないで…　と思ってしまいます。

テレビ番組で、旬の活躍しているビジネスマンに、インタビュアーが「それって儲かるんですか？」って直接聞くのも無粋に感じます。サービスを提供して成果を上げているから取り上げられている訳で、「お金」を無視したビジネス設計になっている訳ありません。どういうマネタイズ手法を組み込んでいるのか興味はあるし、想像するのは楽しい。だから剥き出しにしないで…　と感じます。

社会のルールや現実から逃げては駄目だとは思います。世の中を支配する価値判断の物差しが「お金」ならば、「お金」と真摯に向き合わない、理解しようとしない態度は不誠実です。でも、「稼ぐのが全て！」というド正論は苦手です。そこは剥き出しにしないで…　というのが今の私の気分です。