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「人生の全て」を失う前にやれること

2017年夏の全国高等学校野球選手権大会で優勝した花咲徳栄高校で主将を務めた千丸剛さんが、千葉県内で起こった強盗致傷容疑で逮捕されたという報道がありました。この関連で、Numberの以下の記事を読みました。本日はその感想です。


あるエリート高校球児

花咲徳栄高校で、二番、二塁手を務めていた千丸選手は、優れた野球センスの持ち主だったようです。この記事を書いている安倍昌彦さんは「本物」とその能力と野球に取り組む姿勢を絶賛しています。

当時のチームメートには、NPBに進んだ西川愛也(埼玉西武)、清水達也(中日)、一学年下にも野村佑希(北海道日本ハム)といった優れた選手がいます。そんな野球エリート揃いの強豪校で、チームを束ねる主将を務めたほどの選手です。野球部の監督も

「このチームは、千丸がキャプテンだから成立している。」

とコメントしています。技能だけでなく、人格やリーダーシップも評価される存在だったのでしょう。

甲子園で頂点に立ち、栄光の絶頂を味わったそのわずか2年後、一心不乱に打ち込んできた野球を捨てることになり、犯罪行為に加担して逮捕されることになろうとは、本人も周囲の人間も想像だにしていなかった筈です。

人生の全てを失った失望

報道によると、高校卒業後に進学した駒澤大学の野球部でイジメを受け、先輩部員の財布からお金を盗んだために2018年11月に退部、退学とあります。今回の強盗致傷事件に至る経緯だけ聞くと同情する余地はないのですが、彼をよく知る人達には「なぜあいつが……」という疑問の残る事件でしょう。

前述の安倍氏は、一つのことに一心不乱に打ち込むことで、偏った価値観が醸成されてしまうことの危険性を指摘します。才能に恵まれ、周囲からも一目置かれたエリート選手が、「人生の全て」だった野球を不本意な形で奪われたことで、自暴自棄になってしまったのではないかと推測しています。自分の「10分の10」を捧げてきた野球を失った喪失感を抱えた青年に、悪魔が忍び寄り、転落への道を選ばせてしまったという見立てです。

10分の7で満足できるのか……

打ち込む力加減は「10分の7」でいい。残りの3の部分で、社会に出てからの自分につながっていけるもう一つの世界を構築しておくことが、健全で、晴れやかで、気分よく生きられる、というのが安倍氏の意見です。

私は、真剣に何かに打ち込んでいる人が、人生のある時期にその比率が「10分の10」「人生の全て」になってしまうのは仕方ないという気がします。そこまで自分を追い込まないと見えない景色があるだろうし、到達できる場所も見えないこともあります。熱中できる一つのことに心血を注ぎ込む経験は尊いことだと思うのです。

それだけに、指導者や周囲の人達が挫折を味わったエリートをサポートし、ケアすることが大切でしょう。人一倍優秀で大きな挫折を経験していないエリートほど、信頼できる周囲の人達からの支えが必要なのかもしれないと思った事件でした。



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