見出し画像

キャリブレーションを怠らない

『イノベーションのジレンマ』の思い出

ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)のクレイトン・クリステンセン(Clayton M. Christensen)教授が2020年1月23日に亡くなったことを知りました。67歳の若さでの死、白血病治療中の合併症だったようです。

クリステンセン教授は、世界的ベストセラーになった『イノベーションのジレンマ』がつとに有名です。私がまだ「優れたビジネスマンになるんだ!」という野心満々で、日々自己成長を模索しながら、もがいていた頃に読んでとても印象に残っている名著です。

事例解説の1つに、米国の鉄鋼業が取り上げられています。USスティールなど伝統的鉄鋼メーカーが、短期的には合理的な戦略を選択し続けた結果、新興のミニミル(ニューコアなど)に追い込まれていく過程が分析的に描き込まれていて、深い腹落ちがありました。

キャリブレーション

キャリブレーション 【calibration】ということばがあります。日本語では【校正】に相当することばです。

キャリブレーション 【calibration】
①計器の目盛りを正しく調整すること。
②規格や基準に整合するよう電子回路を調整すること。また、それに使用する基準媒体。スキャナー・ディスプレー・プリンターの色調整などにいう。
ー 三省堂大辞林 第三版

計測機器や制御機器がはじき出す数値の正確性・信頼性を担保する為には、定期的に誤差の発生有無を管理し、必要な調整を実施しておく必要があります。検査機器のキャリブレーションは、必ず行わねばならない作業です。

調整方法は技術の進化を反映する必要があります。従来は特別な訓練を受けた専門家が数時間を費やして行う必要があった校正作業を、自動調整機能を用いることで、短時間かつ低コストでできるケースも増えています。

人間の生き方で言えば、一度立てた『信念』や『指針』に揺らぎがないかの検証や必要なアップデートを定期的に行うこと、誤差の有無を検証する方法自体をアップデートしておくことが大切だ、という話です。

キャリブレーションのアップデート

『イノベーションのジレンマ』から学べる教訓は、『既得権益者ほど合理的に間違える』です。これまでやってきたことで成果を出している事業、シガラミを抱える事業ほど、常識を疑い、変革するのが難しいということです。

先日、私なりの2020年代の生き延び方を投稿しました。

時代の最先端を追わない、という考えの背景には、情報を受け取る際の誤差が必ず発生するので、時代についていくことは目指すのは、私の能力的にも気力的にも合理的にもコスパが悪い、という判断があります。自分のこれまでの人生経験と自己評価、現在の嗜好と能力から割り出した結論です。

久しぶりに、クリステンセン教授の報に触れたことで、『イノベーションのジレンマ』の教えを反芻してみました。

● 過去の経験や知識に依存していないか……
● 不都合な現実を無視していないか……
● 時代の趨勢を捉える自分の受信機能が狂っていないか……
● 受信方法や頻度は本当に適切か……
● 自己キャリブレーションをきちんと行えているか……

定期的に自分自身に疑いの目を持ち、キャリブレーションを行わないといけないなあ、と再認識しました。

改めて調べてみると、時間の計測にも色々な方法があり、デジタル計測、自動キャリブレーションが標準であることがわかります。こうなると『時計の針』という概念で時間を考えることが、既に古臭い発想かもしれません。『完全に停止した時計は、一日に二回正しい時を指す』は、随分と時代錯誤なおっさんの発想なのかもなあ、と自省した次第です。



サポートして頂けると大変励みになります。自分の綴る文章が少しでも読んでいただける方の日々の潤いになれば嬉しいです。