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名言が与えてくれるもの 3:たゆたえども沈まず(Fluctuat nec mergitur)

誰しも、心に響いた名言を持っていると思います。私にも、「あの時に聞いた(目にした)あの一言でその後の人生が変わったかも……」と思えるくらい大切にしている言葉が幾つもあります。

普段誰もが日常的に使っている何気ない言葉でも、誰が発したのか、どのような状況で言われたのかで、その意味する所や印象が大きく変わります。また、自分のその時の気持ちや置かれていた状況によっても、受け取り方や心への響き方が違ってくるものです。

そのような前提を踏まえて、私が過去に大きく心を揺さぶられた言葉を振り返っていくのがこの『名言が与えてくれるもの』シリーズです。第3回は、「たゆたえども沈まず(Fluctuat nec mergitur)」です。 

パリの市章に刻まれた言葉

この言葉は、パリ市の紋章に刻み込まれている言葉です。華の都、パリは、世界中で最も多くの人々から愛されている街かもしれません。私もパリの持つ不思議な魔力に魅了されてしまった一人です。

これまで頻繁に訪れた訳ではないものの、その思い出は強烈に残っていて、今も私の中で、特別な街だと感じています。何故か惹きつけられてしまう、エキゾチックで人に訴えかけてくる魅力を持っている、唯一無二の街だと思っています。

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エッフェル塔(2014年11月筆者撮影)

強烈なプライド

この言葉の意味は、パリを船に喩えて、どんなに暴風や荒波に煽られようとも絶対に沈まないと豪語する内容です。パリの歩んで来た数奇な歴史とも重なって、気品とプライドを感じさせる印象深い言葉だなあと感じます。

長い歴史の中で、パリはこれまでに何度も災禍や戦火に見舞われ、苦渋と試練の時を過ごしてきました。20世紀に起こった二つの世界大戦では、フランスの国土の大部分が戦場になりました。

第二次世界大戦では、ナチスドイツが展開した電撃戦によって蹂躙され、パリ市内を占領されるという屈辱も経験しています。また最近では2015年11月13日に、イスラム過激派のテロリストが市内の複数の場所で銃を乱射し、多数の死傷者を出した事件(パリ同時多発テロ銃乱射事件)が記憶に新しいところです。

パリはこれまでの歩みの中で傷つき続けており、満身創痍に見えます。同時に、数々の難事を乗り越えてきたしたたかさとしぶとさを兼ね備えた街でもあります。

揺さ振られても折れない

パリは、人間に置き換えて考えれば、どんな辛いことや、悲しいことに襲われようとも絶対に潰されずに立ち続けてみせる、とか、数多くの失敗や挫折を重ねたとしてもぶれずに自分の信じる道で強かに成功を掴んでみせる、といった、一見控え目ながらも強固で気高いプライドを誇示する存在です。

たとえ、どんな苦境に陥ろうとも、みっともない姿を晒そうとも、絶対に目の前の苦難を乗り切ってみせる、というのはなかなか自信持って言える言葉ではありません。

たゆたえども沈まずという精神は、非力で何物でもない個人が生き残っていくための重要な態度だと思います。日々の生活の中で、度重なる暴風や強風に煽られようとも、絶対に沈まないという気概が大切だと思います。

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早朝のセーヌ川(2014年11月筆者撮影)


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