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Markover 50 の読んだ本

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Markover 50の読んできた本の読書感想文を収めています。
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#社会的共通資本

『凱風館日乗』を読む

本日は、内田樹『凱風館日乗』(河出書房出版2024)の読書感想文です。週末プチ旅の移動の合間に挑みました。読了して、今の自分が漠然と考えているようなことを、クリアに表現されているフレーズに次々と出会うことができ、腹落ちするとともに、とても幸せな気持ちに包まれることができた一冊でした。 丁寧に語りかける論客最近、内田樹氏の著作を読む機会が急激に増えてきました。読む本の選択を、著者の好き/嫌いで判断するのはできるだけ避けたいと思いますが、自分の関心時についてどう考えているのか、

SHADOWの思想

本日は、発売されたばかりで現在読み進めている、佐々木実『今を生きる思想 宇沢弘文 新たなる資本主義の道を求めて 』(講談社現代新書2022)の終章のタイトルになっている『SHADOWの思想』ということばを受けて、現時点での私見をまとめておこうと思います。 経済学者・宇沢弘文宇沢弘文(1928/7/21-2014/9/18)氏は、「二部門成長モデル」「宇沢コンディション」「社会的共通資本」等々数々の優れた研究で功績を残し、世界的な経済学者として知られる存在です。成長優先、市場

『社会的共通資本』を読む❸

今じっくりと読み進めている宇沢弘文『社会的共通資本』(岩波新書2000)の読書感想文❸です。 第3章 都市を考える第1節 社会的共通資本としての都市社会的共通資本としての都市とは簡単にいうと、ある限定された地域に、数多くの人々が居住し、そこで働き、生計を立てるために必要な所得を得る場であるとともに、多くの人々がお互いに密接な関係をもつことによって、文化の創造、維持をはかってゆく場である。(P95) 日本は、太平洋戦争に敗北し、焼け野原から出発しました。日本が高度経済成長を

『社会的共通資本』を読む❷

本日は、じっくりと読み進めている宇沢弘文『社会的共通資本』(岩波新書2020)の❷ ~第2章 農業と農村~ の読書感想文です。  第2章 農業と農村第1部 農の営み 日本の農業が危機的な状況にあると言われて久しいものがあります。宇沢氏は、「農業」を経済体制における一つの自立的な産業と位置付け、工業と同じ枠組みで比較しようとしてしまっていることに問題がある、という示唆を与えてくれます。 農業が果たしている機能、農の営みという観点の欠如が影響している為に、農業基本法と農政の

『社会的共通資本』を読む❶

本日は、年末年始休暇を使って、ゆっくりと読み進めている名著、宇沢弘文『社会的共通資本』(岩波新書2000)❶=はしがき、序章、第1章 社会的基本資本の考え方 の読書ノートを記していきます。 制度主義の体現 ~資本主義と社会主義を超えて本書では、19世紀末~20世紀初頭のアメリカの経済学者、ソースティン・ヴェブレン(Thorstein Bunde Veblen 1857/7/30-1929/8/3)が提唱した制度主義(institutionalism)の考え方が何度も援用され