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#進撃ミュ によせて


進撃の巨人-The Musical- 全22公演
スタッフ、キャスト誰1人かけることなく全員で、完走することができました。

25日、朝目覚めて、いつもの習慣で前日の公演の記録用映像をチェックして、
あ、そうか
今日はもう、歌わないのかと気がついて「終わり」を認識しました。

閉幕。
ちゃんと閉幕できました。
その御礼を、まず伝えさせてください。
まことにありがとうございました!!

(このあと6000字あります!!ご注意ください!!)

「全員で完走」の奇跡

バッタバッタと他の作品が公演中止になって倒れていく中、私たちも気が気でない日々でした。

いち演者として、稽古場から発生する熱量を、スタッフと演者一人一人から立ち上る湯気を見ていくうちに、
もしもわたし1人が感染してしまって、わたし1人の責任で、この人たちのこの熱をお客様に届けられないなんてことがあったら…いよいよやるか…切腹…と本気で青ざめ、気を張り詰めて過ごしていました。おそらく、皆(切腹はしないにせよ)同じ緊張感を感じていたのではないでしょうか。

その緊張感も、あの千秋楽のカーテンコール、スタンディングオーベーションの景色を見た瞬間に昇華していきました。

クリスマスマーケットにクリスマスパーティー、冬コミ、忘年会、年越しカウントダウン、お正月の初詣…

みんな…死んだ甲斐があったな…。


オタクの所感



そう、自分はもともと、アニメやゲームが好きであります。
アニメ好きが高じて、数年前まで趣味でコスプレもしていましたし、コミケで写真集を発売したりしていました。

進撃の巨人のアニメには、お恥ずかしながらリリースされてからしばらく経ってからハマりました。調査兵団のコスプレ衣装を買って、ミカサのコスプレをするために腹筋を割るまで筋トレをするほどに。

当時のつぶやき


もともと少女向けよりも少年向けのほうが刺さる体質で、絶望の中で一縷の希望を見出し緊張の糸を張り詰めたままずっとクライマックスが続く進撃の巨人のアニメの展開に魅了され続けてきました。(ていうかエルヴィン・スミスとリヴァイのネコチャン…!?オタクを殺す気か?!買います!!!!!!)漫画よりアニメ派なのは、わたしが声優を推したいオタクだからでした。FFのアーデン以降藤原啓治さんの大ファンで、別経由から津田健次郎さんも大好きだったので推しキャラは言わずもがな、ハンネスさんでした。ハンネスさんの最期のシーンは辛すぎて、アルミン顔で「この世は地獄だ…」と泣きました。

ですので今回、初めての本読みで村田充さんのハンネスさんのセリフを最初に聞いた時は、泡を吹き奇声をあげて椅子から転げ落ちて危うく降板になるところでした。それくらい、村田さんの喉に藤原さんが降臨していました。(よね?)

ハンネスさんだけでなく、今回のキャスティングの個人的神業ポイントは、声なのです。
キャスティングはさすがのネルケさん、当初サラサラヘアーだった中西智也さんの頭があんなに丸いのを骨格から見抜いていたのだろうし、村田充さんの髪を切るだけであんなに突然ハンネスさんが現れるだなんて、日本人でエルヴィン・スミスを実現できる人がいるなんて、誰が予想できたでしょうか?さすがすぎます。

少し脱線しますが、主演の岡宮さんのことはブルーピリオドで初めて見た時に「とんでもない俳優さんが出てきたぞ….」と思っていました。セラミューで共演した岡村さやかさんから「あんなにいい子見たことない」と噂を聞いてはいましたが、稽古場で初めてお目にかかったときにそれは確信に変わりました。謙虚で、周りをよく見ていて、気づけば演出部さんのお手伝いをしていたりする。一体何を食べさせてどうやって育てたらあんないい子に育つのか、岡宮さんのお母様にぜひインタビューしたい。今後の参考にしたい。わたしは、推しを「産みたい」というタイプのオタクの気持ちが初めてわかる気がしました。なのでわたしは唐橋さんの気持ちもよくわかりました。唐橋さんもいつも、エレンのソロ歌唱が始まる瞬間までにスマホを掲げ必ず動画を撮って、歌い終わったら拍手していました。わかる。とてもわかる。だって、日に日に歌が上手くなり、日に日にエレンになっていくんです。「梶裕貴きた!?」と入り口を振り返りたくなる瞬間があるんです。

岡宮さんだけではありません。
ジャンもサシャもミカサもエレンもリヴァイも、cvがアニメのまますぎて、稽古場は非常にたのしかったです。
リヴァイさんの「来い」
ジャンの「てめぇのせいだぞエレェェン」
ミカサの「…悪かった」
ここらへんはいつも目をかっぴらいてモニターを見てました。ネルケはついに声帯を支配したのか?いやもちろん、皆様ポテンシャルがあるところからの役者としての弛まぬ研究と努力あってのことなのです。似せようとした訳ではなく、役の解釈の先に同じ声があったのだとしたら…?ブラボー!!ブラボーーー!!!!ダンケシェーーーン!!!!!!

わたしは何を書いているんだ?


中の人らしいことも書いておかねばならんので冒頭のアレ


色々言うてますがかく言うわたしも、出ていました。

本当は全部のシーンを1分ずつ皆さんと感動を分かち合いながら書き連ねたい!ですが、そうすると本当に4万字いってしまうし、中の人があまりペラペラしゃべるのもアレやなというアレなので、かいつまんで印象的なシーンをば。

となると、最初の巨人たちのシーンはみなさんのハートをがっちり掴むきっかけになったのではないでしょうか?

あのシーンの振付の日、日本中からダンスのスペシャリストが集まっているBAは、今回の振付のために関西から駆けつけてくださったノリさん(末澤紀子先生)の前で「気持ち悪い動きオーディション」を受けました。

「わたし、こんな気持ち悪い動き、できます!!」

と、みんながそれぞれ披露して、

「うわ〜〜〜〜気持ち悪〜〜〜採用ッ」

「うーん、ふつうにすごいな。すごいだけだ。却下」

初めての光景でしたが、その結果が冒頭のあの気持ち悪いシーンです。肩に足を引っ掛けて3本足で走るDoltonさん、バク転後信じられない体勢で一時停止するKENTAさん、逆立ちのままトコトコ走るKIMUTAKUさん、放っておくとそのまま回り続けるのではと思われる永遠のピルエットをするユキ子ちゃん…などなど。わたしも手を繋いだまま肩をぬいて前から後ろに通す「ボーンブレイク」という技を披露しましたが、あえなく落選。そんなんじゃ到底太刀打ちできない気持ち悪さを兼ね備えたスペシャル技の数々でした。

シーンが出来上がっていくのと同時に、音源もどんどんアップデートされ、また壁のセットや立体機動装置、一人一人のためのブレードが出来上がってきました。豪さんの頭の中にあった画を立体にするためのいろんなピースがひとつずつ揃っていき、同じ画が我々の目に見えるようになるにつれ、徐々に「これは大変なものが出来上がるんではなかろうか」とワクワクと緊張感も高まって行きました。

全員に伝えたい、謝辞の念


舞台を作るには本当にたくさんの人のお力が必要です。

進撃ミュは諫山さんの原作があり、畑さんの脚本があり、植木さんの演出、KEN THE 390さんとYOSHIZUMIさん田中マッシュさんの作る音楽に、大好き三浦香さんが書いてくださった歌詞があり、実物に合わせて迫力のある映像を作る佐々木さん、壁の美術や立体機動装置を作ってくださる美術スタッフの皆さん、そしてもちろん、再現率エグキャストの皆さんと、我々Blade Attckers。

そしてさらに、岡宮さんのカーテンコールでのお話にあったように、舞台の裏側にはとんでもない人数がいます。

わたしたちが暗い舞台裏を通る際は、躓かないようにすかさず足元を照らしてくださり、袖の浅い青年館ホールでは見切れないように袖で隠してくださり、同時に壁や装置の移動、小道具の準備をしてくださり、スモークを出す専門家もいる演出部さん(10人以上いらっしゃいました)

ワイヤーアクションで、リヴァイやミカサが飛ぶ際に袖でワイヤーをあやつっているB.O.Sのワイヤーリガーの皆さん(1人に対して3人以上必要)(たぶん)(邪魔にならないように遠くから見ていたのでもっといたかも)

完璧なタイミングでいつも差してくださる照明さん(気さくで優しい皆さん5人くらいいらっしゃったな、もっとかな)

マイクから劇場全体へ聞きやすい音声を調整して(今回本当に聴きやすいと話題ですよね)流してくれ、潰れたり戦ったりする効果音をバッチリ入れる音響さん

早替えしやすいようにシャツにボタンを縫い付けてマジックテープにしてくれたり、ベルトも着やすく外れにくく動きやすいように改良を重ねてくださって、激しい動きですぐ壊れてしまう靴やボトムの修理、そして毎公演後インナーや靴下の洗濯をして明日の公演の準備に遅くまで残ってくださるお衣装さん

地毛もウィッグも原作準拠の髪型にセットして、メイクをしてくださるヘアメイクさん(6人体制で、ちょっとでも原作と違う分け目になってたり前髪が張り付いていようものなら、出る直前でもとっ捕まえて1秒で直してくださいました。)

怪我しないように常にいてケアしてくださる敏腕トレーナーさん(「倒せ!」で叫びすぎて起きたら首が回らない日も鍼で1発で治してくれて「Magic…?」となった)

歌ったことないダンサーの人もいる民衆からあのパワー合唱を引き出した、歌唱指導のりえさんと、殺陣指導の栗田さん。

ヒプステのメンバーが遅れてお稽古参加になったので、その間に何人分も振りとフォーメーションを覚えるアンダースタディのゆうかちゃん、るかちゃん、のむちゃん。

演出助手の杉山さんと藤田さん。
藤田さんとアンダーのるかちゃんは、もしものときの代役になるために毎日、出ることがないことを祈りながらも、大阪・東京の全公演中も劇場にきてくれていました。

そして、全てを統括して諸々の運営してくださってる制作さんに、配信のある回には何台ものカメラで映画のごとく高画質で撮影してくださったスタッフさんも大勢入りました。

ほんとうに、1人1人お礼を申し上げたい。すでに長いけど。つまり、ものすごい人数だったと言うことをお伝えしたかったのです。


助け合うこと


人数がいっぱいのやつ

シルク・ド・ソレイユ出身のKENTAさんやDoltonさん、バレエ団出身のユキ子ちゃん、ダンスコンテストで優勝しているBeat Buddy BoiのみなさんやNONNちゃんなどの世界規模なダンサーさんたちが、市民として歌い、叫び、場面によっては黒子になって巨人の手や人形を動かしていました。

わたしは殺陣が初めてだったので、下川さんや横田さん、下尾さん橋渡さんに何度もお手本をみせてもらって、見てもらってなんとかカタチになりました。
市民からミーナになる早替えは、なんと、なんと、サシャとキースさんがブーツを履かせて上着を着せてくれていました!!あのキースとサシャが!!!!

優しい林野さん

歌は専門外の人も歌い、芝居は初めてな人がセリフをしゃべり、殺陣をやったことない人がブレードを持ち、ダンスをやってこなかったアクション俳優さんが群舞で一緒に踊る。特殊技能を持つ人たちも、それを活かす場面もありながら、それを封印して役に徹する場面もある。
そんなミュージカル。

そんなミュージカルでした。


6年


かわいくて頼もしい下川さん

ワイヤーリガー(ワイヤーを引っ張って持ち上げる人)には、BAで出演されてる下川さんや下尾さんもはいっていて、2人は衣装のまま、そのままリガーとしてワイヤーを引いてくださってたり、稽古場も劇場も、私たち出演者の数日前に入ってワイヤーの仕込み、設営と、公演中も毎朝点検をしてくださってました。6年前の悲しい事故を、誰も忘れていません。

演出の植木さんは毎回、通し稽古の時から言っていました。

「何かすこしでも危ないことがあったら、必ず、本番中でも必ず手を挙げて止めてください。全員で走り抜け、安全に、全員で必ず帰ってきてください」

千秋楽公演を終えて、諫山先生や川窪さん、関係者の皆さんと一本締めをしたのですが
その時も、豪さんは何よりも先に「無事に全員で帰ってきてくれてよかったです」と一言おっしゃって、それをみたわたしがダバーっと泣きました。(お前か)

あぁなるほど、
この人だから、全員でやって来れたんだ、と確信しました。

天才・植木豪さん


進撃の巨人という作品を愛したたくさんの人たちが、この作品をミュージカルとしてもう一度顕現させたい!と思いを一つにし、役者、スタッフが各々自分にできることを最大限に持ち寄り、なにより最大の注意を払いながら過ごしたこの期間が、あのスタンディングオーベーションに繋がった。

その一員としていられたことを誇りに思います。


戦え、戦え!

今回わたしは、壁の中の市民として『焦燥レクイエム』を歌って踊るシーンがありました。
一本の舞台の中で、他のシーンに比べてもしっかりと尺をとって歌うこのシーンの重さが、この舞台の重さに直結するように思い、生半可な気持ちではだめだと、早い段階から冷や汗をかきながら取り組みました。
ですが、やはりどこかで、「わたしごときがこんなに長く歌っていいんだろうか。」という邪念が湧くこともありました。

そんなある日、川窪さんがおっしゃったのです。

「進撃の巨人は、主役エレン1人の話じゃない。そこにいる、壁の中で、外で生きる全ての人の物語なんです」

この言葉でわたしは救われ、腹を括りました。


あの市民は、わたしなのです。
そして、みているお客様、あなたである必要がありました。


そこでわたしが今回この座組に入った意味もなんども考えました。あまりに体が利く人たちの中で、踊りもそこそこ、アクロやアクションができるわけでもなく、芝居もはじめたばかりのわたしが、この座組の中で役に立てるとしたら…。歌か?歌だって自信はないけど、もうやるしかない。そんな思いで飛び込んだ進撃ミュでした。
ミュージカル女優になりたくてグループを卒業したはいいものの、セラミューにしか出たことがないのに一体これからどうしたらいいんだろう、と途方に暮れていた中で受けられたオーディションで、掴んだチャンス。
わたしは自分の表現に、この作品への感謝を込める。全身全霊で生きることで、お返ししたい。そのためには余計なことは何も考えず、ただそこにいる人として、壁の中で生きよう。

結果、エンタメで人の心が動くところを目の当たりにしました。エレンが、市民が、お客様が、何もなかったわたしに、勇気と、少しの自信をくれました。大阪千秋楽の日に30歳になりました。ミュージカルはまだ2作目、オーディションも落ちることの方がまだ多い、周りはどんどん結婚して家を建てて子供を産んでいく中で、「まだ」夢を追っているわたしが、なぜ歌うのか、なぜ舞台に立つのか、なぜ戦うのか、それは、俺がこの世に生まれたからだ!戦え!戦え!戦え!!!

だから、これからも戦い続けます。
お客様のあの笑顔を、涙を見るために。


おわりに

ご来場いただいたすべてのお客様、
配信をご覧いただいた皆様、
Twitterで感想を書いてくれたお客様のおかげで、千秋楽は満員御礼でした。これが人の力。「俺じゃない、俺たちだ!」エレンが言うように、俺たちが、この世界を変えられるかもしれない、とすら思いました。


わたしは川窪さんくらいパブサをしていました。(たぶん)
皆さんの感想を、マチソワ間で読むのを楽しみにしていました。皆さんの言葉、確実にキャストの力になりました。こんなところにも、助け合い。ありがとうございました。

ディレイ配信は31日までみられます。それからはBlu-ray発売までしばしのお別れですが、みなさんの胸に刻まれて、会えない間に愛が深まることでしょう。

また会う日まで。
わたしも頑張ります。
会えますように。

どうもありがとうございました!


めでたい!


長文・乱筆、失礼いたしました。

MARISA

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