【取材後記】僧侶/アーティスト/LGBTQである西村宏堂氏の取材を通して感じたこと
僧侶でありLGBTQ当事者でもある西村宏堂氏をForbes Japanのオフィシャルコラムニストとして取材した。
ここでは西村宏堂氏の取材の中で発言されたものでForbes Japanに書ききれなかった思いを紹介していく。
私が取材中、衝撃を受けたのは西村宏堂氏の以下発言だ。
この「石を投げられた」ことを淡々と語る西村宏堂氏に、取材中、一瞬タイピングする手が止まった。自分の好きなファッションで表に出るだけで石を投げられるという恐怖。それがどれほどの心的インパクトを及ぼすのか?想像するだけで恐怖の追体験に足が怯む思いがする。
ただ、ここで「恐ろしい」「自分の身に起きて欲しくない」と保身に走るだけでは、未来の恐怖を消し去ることができない。
であれば、私に何ができるのか?
一つ確実なのは、西村宏堂氏の人間としての強さ、美しさを堂々と称えていくことだろう。そして、宏堂氏一人だけをピックアップするのではなく、同じような思いを持ち、活動している人に対しても同じ態度で接していくことが大事だと考える。
今回、西村宏堂氏と接点を作ってくれたのはカルティエである。カルティエが主催する女性起業家プログラム「カルティエ ウーマンズ イニシアチブ(CWI)」授賞式に、宏堂氏がゲストとして招かれたことをきっかけに取材の機会をいただいた。
カルティエ ウーマンズ イニシアチブに、日本代表として西村宏堂氏がゲスト登場することも、未来を変える動きだ。特に、世界経済フォーラムのジェンダーギャップランキング2023で125位にランクダウンした日本としては前向きに紹介していきたいことである。
さて、カルティエの事例を出したが、他の企業ではどうなのか?ビジネス全般でのダイバーシティー、インクルージョンの動向を知りたく、古巣IBMにビジネス界におけるLGBTQに関する最新情報を確認したところ、「ありのままの自分で生きる LGBT+ に対する根強い差別と インクルージョンの 拡大についての考察」レポートを教えてくれた。
読み込んでいくと「トランスジェンダーの 4 人に 1 人以上が偏見のために職を失い、 4 人に 3 人以上が職場で何らかの差別を受けた経験を有する。その結果、トランス ジェンダーの人が昇進する機会は少ない」「 マッキンゼーが最近行った調査によると、トランスジェンダーはシスジェンダー(生まれながらの身体的性別と、性的自認が一致している人)に比べて、エントリーレベルの仕事に従事している割合が非常に高く、ビジネス的にバックアップしてくれるス ポンサーがいるトランスジェンダーの割合(21%)は、シスジェンダー(32%)より も低い。」など、データを伴いビジネスの場における現状も明らかにしている。
よって、「差別や嫌がらせを避けるため、多くの人は自分のアイデンティティーを隠す (Covering)か、自ら目をつむる。」という。アイデンティティを隠すために偽りの自分を演じることも起きている。
今回Forbes Japanの西村宏堂氏取材の中では、LGBTQへの固定観念にも挑戦したいと述べている。
LGBTQだけではなく「色々な人がいて当たり前」と認め合える世界は夢なのだろうか?否、そういう世界を作りたいと望み行動することにより、叶うものであると信じていたい。先述のIBMレポートではアクション・ガイドも掲載されている。組織内でも有効なアクションガイドだと思うが、社会全般にも適用していくことができそうなガイダンスである。
昨年末、LGBTQの方々が半数を超える会合に参加したのだが、そこでは自分はマイノリティーであり、自分と違う生き方、世の中への感じ方を学ぶことができた。多様な生き方を知ると、視野が広がることを実感できる。
西村宏堂氏は、『月の光が街全体、世界全体を照らすのと同じように、どのような人でも月を見上げれば、その美しさを享受することができる。同じように、阿弥陀様の慈悲の心によって、どんな人だって救われる』と、仏教の
教えも共有してくれた。
月のように遍く光を届けられるような存在と、自分の信じる道を生き、固定観念に挑戦する西村宏堂氏にこれからも注目していきたい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?