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さくらさく*短編小説

今年も桜が咲きました。
あの日に桜が咲いてたかなんて覚えていません。
桜が咲いたら悲しいなんて言ったら怒られそうで、黙っていたわたしをよそに、春は寒さを忘れた人たちがうれしそうに、桜を見つつ宴が開かれ酒が注がれます。

あなたに会えたこと、心から感謝しています。
離れてしまったわたしのこころ、壊れてしまったわたしの感情。
悲しいと感じることは、しあわせなことなのかもしれません。
何も感じなかったあの日わたしは、ひとりでいることが安心でした。

夢を見ました。
会いたいと思って出かけたのに、忘れ物をしたことに気付き取りに戻ると、あなたはそこにいませんでした。
わたしの忘れ物はなんでしょう。
あなたはなぜいないのでしょう。

あなたは今どこかで、元気に暮らしていることでしょう。
わたしはあと何度、桜を見れるかわかりません。
その度に悲しく、忘れ物を取りに彷徨い歩くことでしょう。

ひとり、うたいます。のみます。
わらいます。


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写真はohzaさんにお借りしました。
いつも本当にありがとうございます。




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