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8月読んだ本

最近は海辺で日焼けしながらの読書にハマっています(笑)では早速。

リーダーシップの旅

リーダーシップと聞いて「自分には関係ない」と一歩引いてしまう方も多いと思いますが、そんな「すごいリーダー」への幻想を解いてリーダーシップを身近にしてくれる本です。リーダーとはなろうとしてなるものではなく、あくまで結果としてなるもので、旅の過程、そしてなにより見えないものを見て旅の一歩を踏み出すことが重要です。権力や仕組みは必要ありません。缶蹴りを教えてくれた近所の友達、楽しい旅行を企画してくれた友人。
みんな見えないものを見せてくれたリーダーです。
天安門事件の青年も、ただ目の前の戦車を止めたかったから一歩を踏み出したんですね。

リーダーシップのプロセスは、3つに分かれています。
1.Lead the self 2.Lead the people 3.Lead the society
まずは、自らの頭と心の一致。理性はそんなに強くないので、理性と本能がチグハグだといずれ辛くなります。起業家にとっても究極の自己一致や腹落ちが一番のエネルギー源だとよく言われます。
そして、自らを率いて歩み始めたリーダーにフォロワーがついてくる。最初の時点でもう既にリーダーですが、リーダーをいわゆるリーダーたらしめるのに欠かせないのがフォロワーの存在。ただし、真のフォロワーはリーダーに”共感”してついていきたいからついてくるのであって、マネジャー型のように形式的にはついては来ません。have toではなくwant to。
最後に、気づいたら大きな社会ムーブメントになっている状態が最終形態。
もう周りの人々だけではなく、世界のため、次世代のために意味あるものを残すといった視点が絡んできます。
キング牧師は We have a dream. ではなく I have a dream. 
誰のものでもない彼の真摯な夢だったからこそ共感が共感を呼び、社会を、次世代のあり方を変えるムーブメントになりました。さらにキング牧師も結末を最初から計画できていた訳もなく、結果としてリーダーになった人物の一人です。

価値ある製品を世に送り出すにはリーダーシップは欠かせません。本書を通して自分らしいリーダーシップ像について考えるきっかけが得られるのではないでしょうか。

アルケミスト~夢を旅した少年~

リーダーシップの旅で度々登場する本なので、続いて読んでみました。
羊飼いの少年サンチャゴが、ピラミッドにある宝物を夢見て旅に出るという童話風の本で、1.Lead the self の段階にあたります。

登場人物はみな独特で、一言一言が示唆に富んでいます。
例えば、年老いた王様の語りに登場する賢者の言葉。

幸福の秘密とは、世界のすべてのすばらしさを味わい、しかもスプーンの油のことを忘れないことだよ

そして、物語で繰り返される言葉。

 何かを本当に欲すれば、宇宙は常に、おまえの味方になってくれる

これは何も非科学的なことを言っているのではなく、1.Lead the self の真髄である究極の自己一致のことだと思われます。
また、ある商人はメッカ巡礼を夢見、お金を貯めるためにクリスタルを売り始めたのですが、いつしか手段が目的にすり替わってしまい、いつまでもメッカを夢見るだけでメッカ巡礼の一歩を踏み出せなくなってしまいました。

でもおまえはわしとは違うんだ。なぜなら、おまえさんは夢を実現しようと 思っているからね。わしはただメッカのことを夢見ていたいだけなのだ。

日本人は良くも悪くも手段化するのが得意だと言われていますし、このクリスタル商人の話はとても考えさせられます。
これだけの世界的ベストセラーなので釈迦に説法感否めないですが、この薄い童話風の本には沢山の夢が詰まっていて、心の拠り所になってくれます。

デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場

エベレスト登頂をインターネットで生中継する「夢の共有」を達成すべく、果敢に挑戦し続けた登山家のノンフィクションです。
これだけですと、山に対するピュアな思いを貫いた方なのかなと思ってしまいますが、読み進めていくと案外そうでもないようです。もちろん、登山始めたての頃は「誰かのために登るのではない、自分のために登るのだ」という真っすぐなエゴがありましたが、SNSなどでもてはやされることに次第に慣れていき、「山と一対一で向き合いたいから単独で登る」という言葉の重みはどんどんと薄れていきました。挙句の果てに栗城隊なるものを結成し、”単独”登山の中継を試みました。いつしかのピュアな思いがすっかりすり替わってしまいました。

このような変遷もあってか、彼に励まされて挑戦の一歩を歩み出した方も大勢いれば、ひどい罵詈雑言を浴びせた方も大勢いました。登山家と起業家と妄想家の交わる部分を凝縮させたような栗城さんの栄枯盛衰は、相反するように見えるものが実は多くが表裏一体で、白黒で判断できるほど人間は単純ではないのだと気づかされます。栗城さんの一生も簡単に、成功か失敗か決められるはずもありません。
誰もがインサイダーでアウトサイダー。複雑さウェルカムです。

全体としては本というよりは長めのブログみたいな印象を受けました。
時系列的に栗城さんの多くの表情を感じ取ることができたように思いますし、こうした輝きを失っていった(?)人物にこそ多くの教訓が潜んでいます。

ストーリーとしての競争戦略

長く読み継がれていて殿堂入りしている戦略本ですね。思わず人に話したくなるような面白いストーリーこそが優れた戦略だと言い切っている点からも予想できるように、本書自体も気難しい戦略本ではなく読み物としても面白い戦略本です。

戦略ストーリーの肝は差別化のピースとなる構成要素が動きを伴った流れの中で複雑に絡み合い、関係性を持ちながら自己強化ループ的に拡張していくことで、ズバリ「違いを作って、繋げる」ことです。本書でもよく登場するサッカーの例で考えると、優秀な選手を揃えることはもちろん差別化には繋がりますが、それだけでは弱くて、一貫したコンセプトの下で戦略を共有した選手同士がまさに阿吽の呼吸のような関係性を獲得することで初めてチームとして機能します。少し脱線しますが、グリーリッシュ、メッシ、クリロナの移籍など今夏の欧州マーケットの動きは激しかったので、彼らがチームに真にメリットをもたらせるまでの過程が非常に楽しみです。さらには、このブログを書いている時点で泥沼の3連敗というクラブ史上最悪のスタートを切っているアーセナルは実は今夏マーケットで最もお金を使っているそうで、必要なところに必要な選手を入れて連携することが如何に難しいかを物語っています。戦略の基本である「何をして、何をしないか」にも通ずるものがありそうで、今後に期待です。

話を元に戻すと、戦略はサッカーにおけるスター選手の寄せ集めや、経営におけるベストプラクティスではありません。戦略はどこまで行っても特定の文脈でしか成立しない特殊解ですので、再現可能な一般解を求めるサイエンスよりも、むしろアートに近いと言えます。戦略の各要素が鎖のように絡み合い全体として動きを持っているイメージですので、一つのわっかを再現することはもちろん可能でしょうし、失敗した時も一つのわっかから学べることは沢山あります。しかし、その一つのわっかを安直に自分達の鎖に付け足しても全体としてのシンセシス(綜合)は成り立ちません。

また、ストーリーと言っている以上やはり起承転結がないと面白みに欠けてしまいます。戦略ストーリーの起承転結は5つのCから成り立っています。
起:起点であり基本方針となるコンセプト(Concept)
承:具体的に戦略を形作る構成要素(Components)
転:まとめ役とキラーパス役の機能を持つクリティカルコア(Critical core)
結:長期利益というゴールを生み出す競争優位性(Competitive advantage)
そして、これらの大前提となる一貫性(Consistency)

かいつまんで見ていくと、最終的に長期利益を生み出す「結」には2つのタイプがあります。低コストか高顧客価値です。この2つのどちらに軸足を置くかで必要となる戦略は全く異なるため、軸足を定めてから戦略を組み立ていくことが推奨されています。本書が執筆された2010年当時のことを私自身はよく分かりませんが、書籍アフターデジタルやダブルハーベストでも言われているように、最近では後者の高顧客価値への流れが大きいようです。例えば、AIを使ったら50人必要なオペレーションが半分の人数で済みました、みたいなデジタルによるコスト削減だけでは魅力に欠けます。一方で、AIを使ったら独自のサービスの強みがより一層強固になりお客さんに満足してもらえたし、繰り返し使ってもらえるようになったからデータが溜まりまたAIが学習してさらに顧客価値が高まりました、という方がより魅力的です。その意味でも軸足は高顧客価値に置くのが良さそうです。この辺りは私自身のヘルスケアの事業でも特に意識しているところで、上述の顧客価値を高めるループは現在研究開発しているウェアラブルセンサとも相性が良いです。

まえがきにある通り、本書は興味ある箇所だけ読む「部分読み」ではなく、始めから読み始めることで、全体としての流れを持った戦略ストーリーを実感できます。そしてこれを基に自分自身のアートである戦略を振り返ってみると新たな気付きを得られるのではないでしょうか。

ディズニーCEO

雑用係からディズニーCEOまで上り詰め、ピクサー、マーベル、ルーカスフィルム、FOX買収を行った買収王ボブ・アイガーの自伝です。タイトルからは、自己啓発的なエピソードが10個並んでるのかと思いきや、かなり生々しいエピソードまでが時系列で並んでいて、読み進めていくことでアイガーとともに彼の成長の紆余曲折を垣間見ることができます。

ABCテレビ局(アメリカの民放テレビ)番組の雑用係からスタートしてCEOに上り詰めるまで(3章くらいまで)は割とテンポとリズムが早すぎて、「あれ?」って感じでしたが、読み進めていくうちにどんどん没入していって一気読みしてしまいました。

ディズニー前CEO時代には買収に見向きもしなかったスティーブ・ジョブズからボブ・アイガーがピクサー買収までこぎ着けた話は結果が分かっていたとしてもまさに手に汗握る展開です。そして本案件が最初で最大の大一番となり、これを皮切りに買収を加速させていきました。買収決定後、大勢のピクサー社員の前で、「ピクサーのランプでディズニー城を照らします」と言ったそうです。買収後のガバナンスは往々にして困難を極めますが、この発言からも伺える彼の人柄の良さが良い潤滑油となりそうですね。
その後、毛色の違うマーベルや、あのスターウォーズという神話を抱えるルーカスフィルム、そして大企業が複数社絡んだFOXの買収。
ちなみに、私は知らなかったのですが、2016年頃にTwitterの買収がほとんど決定しかけていたんですね。しかし、アイガーは計り知れない程の経済的メリットを捨ててディズニーのブランドイメージを守るために買収は中止していました。恐らく短期的に見れば成功でも長期で見れば失敗、そして何よりしっくり来なかったのでしょうね。

全体を通して、アイガーの誠実さが伝わりますし、各章のまとめの一節はエピソードと相まって毎回非常に含蓄に富んでいます。本書はディズニー側の事情から語られたM&Aでしたので、ぜひ逆バージョンも読んでみたいです。

銀河ヒッチハイクガイド

人型ロボットでまた話題かっさらってるイーロン・マスクの愛読書です。
終始訳分からんけど、なんかオモロイぞ!って感じのSFです←語彙力笑
私は世界観に入り込むまでに少し時間がかかりましたが、読み進めていくうちに段々とのめり込んでいきました。(現に執筆中の現在はシリーズ続編を読んでいます)独特のユーモアたっぷりなキャラクター達が放つ台詞は、じんわり伝わる時もあれば、日本人には正直「訳分からん!」という時もありますが、たいてい後から「あ、そういうことだったのか!」というプチサプライズを与えてくれるので私は総じて楽しむことができました。

銀河バイパス建設のために地球があっさり消滅し、ひょんなことから地球人最後の生き残りとなった平凡極まりないイギリス人が、休む暇なくほとんど振り回されるように沢山の超個性的な宇宙船や惑星を転々としていきます。
そして主人公がたまたま拾われた宇宙船「黄金の心」号は、この物語のドライビングフォースとして「無限不可能性ドライブ」を駆使しながら不可能を次々と偶然の産物として可能にすることができます。

物語の中では特にウィットに富んだコンピューターの言葉が印象的でした。
ちなみに、このコンピューターはSFらしくシンギュラリティを意識した言動が目立ちました。生命、宇宙、その他もろもろについての深淵なる森羅万象の答えを、知能を持ったそのコンピューターが教えてくれるだろうと、
ただ安直に他力本願で何もせずに750万年待ち続けていた種族に対する一節

なにが問いなのかあなたがたはよくわかっていない。それが問題なのだと思います。

ハチャメチャな展開の中にもこういった示唆に富むセリフが出てくるのも人気の秘密なんでしょうね。そして、ひとたび問いや目的が明快になって、かつそれが理論上可能ならば必ず実現できるとも言っています。

「あのふたりの視点から、救出の不可能性を計算できるかな」
「ええ、それは定数だもの」
「二の二十七万六千七百とんで九乗分の一よ」

まさに天文学的な数字ですが、ちゃんと定数となっているので解答することができます。イーロン・マスクも人型ロボットについての問いが既にクリアになったから実現しそうということでが発表したのですかね。発表されたイメージはかなり未来的でクールしたが、完成形が本書に登場するマーヴィン(鬱病を抱えた人型ロボット)みたいになったらそれはそれで可愛いですね笑

余談ですが、タイトルにもなっている「銀河ヒッチハイク・ガイド」は宇宙旅行用の電子ガイドブックでキャッチフレーズは「Don't Panic」です。どんなに不確実な未来であってもパニクらなければ何とかなるということです。こういったSFは思考のタガを外してくれるので、これからも実用書と合わせて読んでいきたいです。

今月は中々の量を読むことができました。自分の事業をベースに読書ができたので、量だけではなく質としても良かったです。9月はスケジュール的には少し余裕がありますが、そういう時にこそまとまった時間を取って研究の実験や長期に向けた計画作成などを行うので、むしろ忙しくなりがちというジレンマに陥りがちです(笑)ただ自分的には良い時間の使い方ができるので、またすき間時間にどんどん読書していきます!
ではまた!

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