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カレー職人ルドク 第一話

 僕のお父さんは軍人さん。普段は、戦場に行っていて、一年に一回しか会えない。だから、いつも一人で街角でカレーを売って生活している。
 僕は、アメリカ人とインド人のハーフだから目が青い。そのせいか分からないけど、あまり友達がいない。お母さんが唯一の話し相手だったけど、去年の夏に流行りの感染症で亡くなってしまった。

 今日は、クリスマス。やっと、お父さんに会える。ずっとこの日を待ち望んでいた。

 僕は、いつものように屋台の準備をしてカレーを売った。今日は、いつもより買ってくれる人が多い。店閉舞いをする直前になって、お父さんが現れた。

「ルドク、今日も頑張っているね。お腹が空いてたまらないんだ。大盛りでくれるかな。」
 僕は、カレーをお皿いっぱい盛って、お父さんに渡した。
「お父さん、会いたかったよ!」
「お父さんも、ルドクに会いたくてたまらなかったよ。でも、今日は本当は来てはいけなかったんだ。どうしても会いたくて。」
「僕のために、わざわざありがとう。」
「ルドク、今日でお別れになるかもしれない。だから、いまから言うことをよく聞いて。
 アメリカに人手不足の大きなレストランがあるんだ。そこは、インド人の客が多い。旅費を渡すから、そこで働かせて貰うよう頼んで、アメリカで生活しなさい。
 お父さんが、いま戦っている所は激戦区なんだ。だから、もし二度とこの世で会えなくなっても、強く生きていくんだよ。」
 そう言うと、お父さんはカレーを一気に食べ終えた。
「え、そんな。今日までは一緒にいられるよね。」
 僕がそう言うと、お父さんの姿が消えていた。僕は、必死にお父さんを探した。一瞬の内に消えてしまった。どこに行ったんだろう。

 翌日、いつものようにカレーを売っていると、隣に住むおじさんが声を掛けてきた。
「ルドク、見ろよこれ。ここ、お前のお父さんが行っている場所じゃないか?」
 おじさんが持ってきてくれた新聞にはこう書れていた。
『激戦区滞在中の兵士、ミサイルにより全員死亡』

「お父さん…。」僕は思わず泣いてしまった。目の前が真っ黒になった。
「残念だったな」
 おじさんはそう言ってカレーを沢山買って行った。
 おじさんが持ってきてくれたのは、12月24日付の新聞だった。昨日、僕に会いに来たのは幽霊だったんだ。 
 お父さん、会いに来てくれてありがとう。

 つづく…

◯第二話

◯第三話

◯第四話


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