[抄録]繊維方向圧縮試験におけるヤング係数評価のためのステレオビジョン測定:Stereovision measurements on evaluating the modulus of elasticity of wood by compression tests parallel to the grain
論文題目
Stereovision measurements on evaluating the modulus of elasticity of wood by compression tests parallel to the grain
繊維方向圧縮試験におけるヤング係数評価のためのステレオビジョン測定
抄録
繊維方向ヤング係数は木材の基本的な特性の一つであり,繊維方向の圧縮試験より得ることができる。近年,固体のメカニズム検討において,ひずみや変形を測定するフルフィールドオプティカルメゾッド(画像相関法やグリッド法など)が使われつつある。異方性や個体差のある木材では,この手法が特に有用であると考えられる。
そこで,本研究ではステレオビジョン測定(3D画像相関法)による繊維方向ヤング係数評価のための繊維方向圧縮試験を検討した。試験変数は断面寸法(20×20,30×30,40×40mm2)および材せい(30,60,120mm)とし,樹種はフランスカイガン松(Pinus pinaster)とした。
繊維方向のひずみ測定には2つの方法(ステレオビジョン測定,ひずみゲージ)を,支圧板間の変位の測定には変位計を用いた。ステレオビジョン測定の利点は①グリッド法などに比べランダムパターンの生成が容易,②試験体表面上での測定位置やアレンジがフレキシブル,③測定寸法はシステムの目盛りにより定義されるため,試験を継続的に実施できることである。ステレオビジョン測定の範囲は試験体中央の20×20,30×30,40×40mm2とし,測定にはGOM-ARAMISステレオビジョンシステムと2つの8ビットBaumer Optronic FWX20カメラ,Schneider-Kreunach Componar-S 50mm f/2.8レンズを用いた。ランダムパターンの作成はエアロゾスプレーで行った。
ステレオビジョン測定の結果はひずみゲージと近しい値を示した。ステレオビジョン測定の値のばらつきは測定範囲がひずみゲージ(3.05×5.97mm2)より広いため,小さくなった。よって,ステレオビジョン測定は木材の圧縮試験において繊維方向ヤング係数を取得できる有効な手段であると思われる。
変位計による見かけのヤング係数とステレオビジョン測定によるヤング係数の差は試験体断面が大きくなるほど,材せいが小さくなるほど大きくなった。原因として試験体と支圧板の間の摩擦および加工による試験体端部のダメージが考えられる。
そこで,FEM解析により摩擦係数と試験体断面,材せいを変数としパラメトリックな検討を行った。しかし,摩擦係数が大きくなるほど解析は実験と異なる結果を示した。次に,加工による試験体端部のダメージの影響を検討した。試験体を3つのばねモデルに置換し,加工によるダメージがあると考えられる試験体上下部のばね剛性と長さを変化させた。ダメージの影響を考慮することでヤング係数への材せいの影響を評価することができたが,試験体断面の影響は評価できなかった。