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2019年6月のベトナム・ホーチミン記


109番バスのチケット売り場、ATMで下ろしたばかりの高額紙幣を差し出したわたしたちに、女の子は愛想よく笑った。人間も虫もバスへ乗りこんで涼をとる。楽しくやろうとする男たち、陽気なシャツによる決意表明。いちばん後ろの席、終点まで喋りつづける女の子たちのイタリア語。陽に焼けたおじいさんの裸足がぷらぷらと揺れる。

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フォー・クイン、交差点の角。街が吸って吐く息。大きなSAIGONの文字を胸に、白い肌を赤く焼いた男性がゆっくりと道路を渡っていく。食後のバイクツアーを売りに来たおじさんは、ラミネートしたメッセージノートを見せてくれる。1997年に書かれた日本語、「彼は良いひとです」。


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無秩序が作るルール。両親のあいだでバイクシートに立つ子どもが、道路の真んなかから条理を見る。熱い湿気に滲む光と光、告知のクラクションと老朽したエンジン音が彼の周囲を衛星のようにめぐり、知識を授けている。彼は空中のバッジをつかみとって、ポケットに収めていく。母親は背中から小さな腹を抱くけれど、その身体が蓄えた光を知ることはない。


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