豆知識「治療的再養育法」

スキーマ療法といえば

    「治療的再養育関係」


スキーマ療法を他の心理療法と区別するのに一番重要な特徴は、相談者と心理士が【対等ではない】というカウンセリング業界でのおどろくべき特徴です。

スキーマ療法は「子どものころに本来なら満たされるはずだった欲求や感情が満たされないまま大人になってしまった人」を主な治療対象としています。
(ちなみに、程度の差こそあれ、完璧に満たされている人なんて世の中に存在するはずがないので、スキーマ療法は社会的には問題がない人も含めて万人に適用できるものです)

「子どものころに満たされなかった欲求や感情を持つ人」をスキーマ療法ではどのように治療するのか?

答えは単純。 【もう一度、子どもになってもらって大人になるまで育てなおす!!】

この「子どもになる」というのを「チャイルドになる」「チャイルドの声をきく」などと表現します。自分の中の満たされていないチャイルドを探して、そのチャイルドになりきります。

すると、「適切な親」「健全な大人」「よい親」になった心理士が、チャイルドになった相談者に適切に対応して、適切に欲求を満たし、適切に導き、適切に教育し、適切に育てなおします。

そして、適切な親に育てなおされたチャイルドは健全な大人に育っていきます。

このように、心理士が【親】になり、相談者が【子ども】になり、【育てなおす】関係のことを「治療的再養育関係」といいます。

スキーマ療法は、こういう意味で、相談者と心理士の関係は対等ではありません。
でも、同時に、相談者と心理士は対等なんです。

なぜなら、適切で健全な親子関係は、親と子は支配関係ではなく適度に対等な関係だからです。
子が親に不満を持ったとき、適切な親ならむやみに子どもを叱りつけたり罰を与えたりすることをせず、まず、「子どもの話を聞く」。
そして、子どもがなぜ不満を持っているのかを理解して、その不満を認めて、不満を取り除くように接します。
ときには、乱暴なことをする子どももいる。
そんなとき、適切な親は、まず、なんでそんなことをするのか「子どもの話を聞く」。
そして、子どもの不満を理解して、認めた後、「それでも乱暴なことはダメ」なことだと「教える」。

スキーマ療法でもまったく同じことをします。
チャイルドになった相談者に対して、心理士はまずは人として対等に何が不満なのかを聞く姿勢を見せます。子どもだからと無視したり、頭ごなしに注意するのは人として子供を軽んじています。

スキーマ療法の対等さは、子どもを「人」として尊重して、対等に話を聞くという対等さです。
スキーマ療法の対等じゃなさは、「親」として子どもを正しく導かなければいけないという対等じゃなさです。

スキーマ療法では、相談者は【チャイルドという役】になり、心理士は【親という役】になる。
これが、スキーマ療法における【役割】です。

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