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子供の不条理と残酷さ

「こどもの一生」を観てきました。
ざっくりとあらすじを説明すると製薬会社のワンマン社長と秘書が
怪しげな孤島の精神セラピーを受けに行くというもの
(本当にざっくりなのでいろんなネタバレサイトを見てください……)
精神セラピーというのは「10歳の子供に帰って1週間をすごす」というなんとも胡散臭いものです。
社長と秘書、そしてその他の患者は暗示により10歳の子供に帰って
過ごすうち、社長のパワハラに耐えかねてある計画を立てるも
それがとてつもない恐怖に繋がっていく訳で。

そこで見えてくるのは「子供の不条理さ」「残酷さ」。
チャンバラごっこで「死なない薬を飲んだから死なない」「死なない薬を殺す薬を使った」というやり取りで
「子供はご都合主義」をいうセリフが出てきます。
子供はとりあえず「〇〇返し」と言われると
「〇〇返し返し」という手を使って
なんとか自分の不都合から逃れようとする。
お互いに自分が負けまいとして堂々巡りになるんですよね。
わかるわー。

でもって更に社長を孤立させようと仕組んだ「山田のおじさんごっこ」。
こうやって自然と人をハブっていく残酷さ。
これが集団になるといじめになるのですが
この場合今まで社長が強かったのでいじめにはならないんですよね。
逆に「いじめ返し」というか。
しかしなんと「山田のおじさん」と名乗る人物が出てくることにより
事態は一変してしまう。
自分たちが作り上げた実体のないものがなぜか実体として現れるんだからそりゃ怖いよね。

結局オチも含めてあのおじさんは幻影だったのか、そうでないのかは謎のままなのですが
それも含めてとても面白い舞台でした。
代役として主演を務めた松島聡くんの表情の繊細な演技が印象に残っています。
台詞のない部分での無の演技がとても上手いな、と。
多分松島君は本能型のお芝居をする人なんではないかなと思います。
頭で動くよりまず身体で覚えていくというか。
上手く言えないんですけど。
私はそういう人の演技の方が感情を揺さぶられやすいし
天才だな、と感じてしまうので
やはり松島君も天才肌だな、と思いました。
そして山田のおじさんを演じられたROLLYさんの不気味さは最高でした。
あの狂気を演じられるのは寺西さんしかおらん……。
(かつての古田新太さんのも観たいですが)

初めて中島らもさんの作品に触れたのですが
これをギャグと言ってしまえるらもさんは凄いですね……。
やっぱりちょっとくらい悪いこと
(いやアル中はえらいことですが)
をしている方が面白いロジックを生み出せるのかな?と思ってしまう。
私は自名義がまたもや仕事をしなかったので
(お友達よありがとう…マジで…)
一度切りの鑑賞になってしまうのですが
叶うのなら何回でも観たいです。
演出のG2さんがこれでG2版のこどもの一生は最後にしようと仰っていたのですが、本来この役を演じるはずだった八乙女光くん版も観たいですし
願わくば松島君での再演も……と思ってしまいます。
狂気と笑いが入り混じる最高の娯楽作をありがとうございました。

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