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私の夏の徳島は、すぅ〜だち酒で乾杯ァィ!







チャットモンチーの曲に「青春の一番札所」というものがある。Awa Comeというアルバムの三曲目である。




めっっっっちゃハマっていたわけではないけど、地味にチャットモンチーのライブには2,3回行ったことがあって、10歳くらい年上のリードボーカルえっちゃんの可愛さに度肝を抜かれたことを今でも覚えている。


こんな純粋でピュアな発想、自分にはないなぁって。同時に強さやしぶとさみたいなものも感じて、なんだろう?同じ女の子なのに、私とは全くかけ離れたこの感じ・・・?と当時は思っていた。


それも後に、『地方という故郷があるか否か』であるということに、この曲で気付かされることとなる。そう、チャットモンチーは徳島の出身。この曲のサビは、♪すーーーだち酒で、かんぱぁ〜い!!なのである。


すだち酒で乾杯!! 今でも酷い飲み方する日もある
皆々様 乾杯!! 愛すべき眉山 鳴門の海 海 海
すだち酒で乾杯!! ただいま 教育の一番札所
皆々様 乾杯!! あんたがおった 私がおった 夏





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と、チャットモンチーの話とは別で。


旅好き芸人の私は訪れたことのある都道府県を記録していて、徳島県にはまだ「泊まったことがない」ことを春前に思い出した。吉野川のラフティングで一瞬徳島県を通過したことはあったけど、泊まったことはなかった。よし、次の旅行先は徳島だ。んでもって徳島行くなら夏だ、阿波踊りだ。


で、気づいたときにサッと宿を予約。といっても3月の時点で阿波踊りシーズンの徳島ホテルは、ほぼ満室か激高。唯一取れたのが、阿波踊り期間の前夜の一泊。8月11日。まぁしゃあない。


で、そっから交通手段を調べてみた。飛行機で行くのが普通の考えだけど、東京から神戸に出て、そこから淡路島をバスで通って鳴門に入り、徳島市にたどり着く長くて安いルートもあることが判明したので、後者を選択してのんびりと向かうことにした。8月11日が山の日で祝日だったので、その前日の10日から会社を休んでしまおう。夏休みとして。そうそう、神戸で小学校時代の友達にも会いたいし。10日は神戸に泊まって、11日に徳島に移動して泊まって。完璧。


という相変わらず自分勝手すぎるプランに、仏ばりの優しさを持つ旦那様も賛同してくださり、我々の夏の旅行は決まった。でも休みが取れたのは私だけで、神戸で現地集合して旅をスタートすることになった。



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8月10日、三宮で友達と会ってから(6年ぶりの再会。彼女はママさんなのでカフェでお茶)夜は1人で街に繰り出し、明石焼きを食べた。板を横向きに置いたら店主に「縦!」と怒られた。すみません。ラガーは美味しかったけど、久しぶりに大人に怒られて恥ずかしかったのと、周りがカップルばっかだったので、そそくさと店を後にして、ホテルで仏の到着を待つことにした。



が、お盆前の祝日前夜。仏が仕事終わりに飛び乗った新幹線自由席は満席で、新神戸まで終始立ちだったそう。23時過ぎにホテルに降臨された仏は、さすがに疲れ果て&イライラされていらっしゃった。一方、私はホテルのベッドで熱闘甲子園に夢中で、なんなら涙していたので、それどころではなかった。



気を取り直して翌朝、バスで鳴門に向かおうと(仏は神戸観光ゼロ)8時台にバスターミナルに行くと長蛇の列。やな予感。予約。。。してない。。。


本日の神戸→鳴門行きバスは全てご予約で満席でございます〜。


チケット売り場のお姉さんにそう言われた。確かに言われた。聞き間違いではなく、そう言われた。






終わった。



いやいや、今日中にはどうにかして徳島市にINしないといけない。宿をとっているのだから。阿波踊りを見るのだから。そのために3月から決めていたのだから、すだち酒で乾杯するということを。


私たちはタクシー会社に電話をしたりフェリーという選択肢を考えたりと色々テンパったが、結論、私の岡山魂溢れる提案が採用となった。鳴門観光を完全に捨て、陸路でぐるんと大回りする神戸→岡山→香川→徳島という迂回ルート。つまり、



昼前10時ごろの状況としては、



だった。ちなみに新神戸→岡山の新幹線もギューギュー満席で立ちだったので、仏はここまでずっと交通機関において立たされている。通算4時間くらい。でも笑ってた。のんびり行こうね!って笑ってた。眩しすぎて直視できなかったので、私は大人しく通過点である香川・高松でうどんを一気喰いした。申し訳なさと感謝で胸がいっぱいになり、同時に腹もいっぱいになった。(うまいこと言ってんじゃねぇよって話だよな。)



そんな私たちは紆余曲折を経て、昼過ぎに徳島入りを果たすことができた。到着後は、まずホテルに荷物だけ預けて、和田乃屋という滝の焼き餅(徳島の有名な和菓子)と抹茶とかき氷で涼み、



阿波おどり会館にちょろっと寄ってお土産を物色し、パンフレットとかを取ってきてホテルに戻り、結局またこういうことになった。



球児たちの活躍を横目にダラダラし、17時半に予約していた(ここだけはちゃっかりしっかり予約している)いかにも徳島な居酒屋に向かった。そして悲願の乾杯。



初めて飲んだすだち酒は、ヤバい味がした。というのも、チープな表現になるけど、すだち酒はアクエリアスのようにサラッとした柑橘系の喉越しで、すぐに飲み干せてしまう飲み物だったのだ。梅酒みたいなドロっとした果実酒ではないため、本当にすぐに酒が回りそう・・・そう思ってサクッと切り上げ、徳島ラーメンで締めた。



が、気がついたらホテルの下ですだち酎と炭酸とつまみを買って部屋に戻っていた。そして、ギリギリ、第四試合も見れてしまった。どんだけ。まぁこんなグチャグチャ旅程も、よきよき。



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翌朝は近くの喫茶店でモーニングをした。阿波踊りの連合の人たちも食べに来ていて相当混んでいたけど、お店のキャッチコピー「来る人には良い味を、去る人には幸せを」が素敵な、美味しいクロックムッシュな老舗だった。




徳島の朝を満喫?した後、ホテルに戻り、チェックアウトをし、ロビーで甲子園第一試合を見て時間を潰し、あわぎんホールという阿波踊り公演の会場へと向かった。


通常阿波踊りというと、夜、野外の道路で踊り子さんたちが踊るのを沿道で観客が見るスタイルを思い浮かべるだろうが、昼間涼しいホールで見れるやつもあると知り、予約しておいたのだ。ここも予約しておいたのだ。そう、バス以外は綺麗に予約してあったのだ。


阿波踊りには色んな連合があって、このホールでの公演は1回あたり約70分(休憩込み)。1団体あたり10分の持ち時間で、それぞれカラーの異なる6連が前半と後半に分かれて踊っていた。どの連合も毛色が異なっていて、飽きずに見ることができた。



と、鑑賞を楽しんでいると、バックライトが急について、踊り子さんたちがたちまちネオンになる連が登場した。






・・・っ?!?!?!!



こ、これは!見たことがあるぞ、わかるぞ!進研ゼミでやったところだ!ばりの衝撃が走った。そう、チャットモンチーのアルバムのジャケットだ。



徳島を歌う「青春の一番札所」が収録されているこのアルバムのジャケット。徳島出身のロックバンドだから、阿波踊りの様子をロックテイストにしてネオンの残像みたいな感じに仕上げたんだろうな〜程度にしか認識していなかったのが、徳島で生の阿波踊りを見て繋がった。実在するワンシーンだったのか。イカしてる!


公演後も興奮冷めやらぬ私は、外の演舞場(夜の阿波踊りのために会場セッティング中)で踊り狂ったのだった。でも後々激写された自分を見てみたら、さっきホールで観たそれとは全然違っていたので驚いた。阿波踊りって、難しい。



阿波踊り期間自体はこの日が初日だったものの、私たちの旅はエンディングへと向かっていた。阿波踊り初日に帰京するという。徳島まで行って、大塚国際美術館にも行かず、鳴門の渦も見ず、夜の本チャンの阿波踊りも見ずに帰る。やったことは阿波踊りをちょびっと見たのと、甲子園をガッツリ見たのと。


でもえっちゃんが繰り返し歌っていた、すだち酒での乾杯ができた。それだけで私は大満足だった。


私には、故郷と呼べるほどの“育った場所”がない。生まれは親の海外赴任先のオランダだし、これまた親の転勤で幼少期に渡米したニューヨークも、帰国後に学生時代を過ごした埼玉も、大学のキャンパスがあった新宿区も、故郷とはまた違う。なので、徳島を大事に想う、そしてその気持ちを歌に乗せて表現しているえっちゃんたちがどこか羨ましかった。


そのギャップが今回の旅で、ちょっとだけ埋まったような気がした。映画のロケ地を巡る感覚で、曲の中にタイムスリップしたような、そんな不思議で嬉しい時間を過ごすことができた。こういう旅の楽しみ方は、意外とこれまでしたことがなかったかも。あり。ありよりの、あり。


空港までのバスで爆睡する仏を横目に、私は最後にもう一度、「青春の一番札所」を聴いた。来年、今年の夏のことを忘れちゃったら、これをまた聴こう。はちゃめちゃだけど楽しかったこの旅のことが、一瞬にして鮮明に蘇ってくるはず。トラブルと笑いと汗と甲子園にまみれた、この夏旅のことが。





以下、おまけ。

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