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おばあちゃんの三回忌で思い出したこと



数日前、祖母ミツコの三回忌があった。2018〜19年ごろに私も在宅介護をしていた、母方のおばあちゃん。


葬儀の合間、おばあちゃんの在宅介護で一緒に過ごしていた時間を思い出していた。在宅介護といっても一緒に暮らしていたわけではなく、叔父ちゃん、叔母ちゃん、私の母、そして私の4人が曜日ルーティーンでおばあちゃんの家でおばあちゃんと一緒に過ごしていて、私は金曜日の担当でした。


当時はコロナ前なので出社が当たり前で、私は中野に住んでいて、オフィスも新宿だったので、すぐに出社できた。毎朝9:04の丸の内線に飛び乗り、9:30の始業時にはデスクについている。そのくらいの距離感と日常でした。


でも毎週金曜日はその倍以上の時間をかけて、埼玉のおばあちゃんの家へ社用PCを持って通い、おばあちゃんの家から在宅勤務をしていた。もちろん朝もその分早かったわけだし、電車に乗っている時間も長ければ、おばあちゃんの家の最寄駅からおばあちゃんの家までは徒歩で20分くらいかかった。暑い日もあれば、寒い日もありました。


それでも私は在宅介護をしながらの在宅勤務を苦だと感じたことはなかった。週に1回、なんか面白い人に会いに行っているくらいの感覚でした。


私が朝に駅で買っていくお昼用の『ちよだ鮨』のお寿司を10時半ごろには食べたそうにアピールしてくるおばあちゃんや、トイレに行きたくなると「ユキちゃ〜ん、お便所〜」と妹の名前で私を呼んでトイレまでの同行を願うおばあちゃん。


世の中には様々なレベルの介護があり、毎日朝起きてから夜寝るまで同じ屋根の下で付きっきり介護、は確かに苦と感じる瞬間もあるでしょう。私がおばあちゃんの介護で担っていたのは、全容のほんの一部にしか過ぎない。金曜の朝から夕方だけ。だからこんなことが言えるのだと、自分でもわかっている。だから自分なんかが介護を語ってはいけないとも思っている。重々承知しています。


でもあの時代を振り返ってみて思うのは、コロナを経てリモート勤務が日常になった今こそ、在宅介護をしながらの在宅勤務など到底出来ないということ。むしろ出来そうな環境が整ったじゃない、と思う人もいるかもしれないけど、その逆だと私は感じます。


当時、私以外の仕事場のメンバーはもちろん平日は毎日出社していた。それが「溝口さんはこれからおばあさまの介護の関係で、毎週金曜日は在宅勤務となります」となったため、その時のリーダーを始め、同じチームのメンバーが働き方のルーティーンを考え直し、私に合わせてくれたのでした。


具体的には、当時私は教材を制作する部署にいたので、直接会って話した方が良い企画系の社内会議や学校への出張などは全て月曜〜木曜に寄せ、金曜日は各々が個人ワーク(校正チェックとか)に集中する日にする!という仕事のリズムに、チーム全体がシフトしてくれました。


おかげさまで、おばあちゃんちにいるときはオンライン会議はほとんどなく、「これを金曜日に粛々とやるぞ」という月曜〜木曜で溜まったタスクを黙々とこなしながら、時におばあちゃんの様子を見て・・・という1日の過ごし方ができました。


今の自分の部署や働き方に置き換えた時に、これが実現できるとは思えない。良いことなのか悪いことなのかは、よくわからない。ただ、「在宅勤務が日常になったんだし、ママさんたちも在宅で育児しながら働いてる瞬間もあったりするわけだし、在宅介護も一緒でしょ」みたいな風に、世の中や企業がなっていないか?と思うわけです。当時のように「思い切ってみんなで働き方のスタイルを変えよう!」という判断に踏み切るには、仕事と暮らしがシームレスになり過ぎてしまったように感じるわけです。


職種も時代も変わっているので仕方ないことだとは思うけど、なんだか勝手に切なくなる。もし今この瞬間、私にまた在宅介護をするシーンがやってきた場合、もしくは同じ職場メンバーに私のようなケースが発生した場合、どう対応できるか見当がつかない。ifの話なので、別に考えすぎることはないのだけど。仮にね、仮に。


まぁ何が言いたいかって、要は「介護とは、介護というものに対する周りの理解と想像力、優しい支えによって成り立つもの」だということ。偉そうにすみません。でも葬儀の間、そんなことを考えていたのでした。


職場メンバーや、共に在宅介護をしていた叔父・叔母・母。介護話を聞いてくれていた妹や友人ら。私から見えている景色だけでもこれだけの人が関わっていて、このうち誰一人として欠けては、おばあちゃんの介護はできなかったと思う。だから、今更だけど、あの時の周りの人たちには本当に感謝しかありません。この感謝の気持ちを、間接的に蘇らせてくれた、そんなミツコの三回忌でした。


▼ミツコに関する最後のnote、よかったら。



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