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ロックダウンから死者数0に至るまで〜今思うこと in NY〜

コロナウィルス感染拡大によるロックダウンから約4ヶ月半、経済活動再開の第4段階へ移行したニューヨークだが、先日「一時期はコロナウィルス感染のホットスポットとなっていたニューヨークが、今は検査が充実し、死者数が0になる日もあるほど落ち着いてきた」と伝える日本の民放ニュースがYouTubeにあがっていた。そしてそのニュースへの日本の方のコメントで「検査数が多いから死亡者が0になったわけではないだろう。正しく報道して欲しい」というものがあった。私はこのニュースを見て、確かに検査数と死者数0の因果関係がきちんと伝えられていないとは思った。しかし、ニューヨークが検査を徹底してやったから、死者数0の日も出てきたのは事実であると思っている(専門家ではないので、生活している者としての視点だが…)。

NY市は、3月中旬過ぎから4月にかけてコロナウィルスの感染爆発が起こった。1日あたりの死者の数が1番多かったのは4/6で、NY市だけで597名。州で見ても800名を越える日が数日続いた。そのような中でも、州知事は当初よりどんどん検査をしていくと明言し、実際に検査を行なっていった。最初の頃こそ検査をするためには、症状を観察する必要があったり、予約をする必要があったが、徐々に条件が緩和され、今は、市民であれば誰でも無料で検査ができる。このことが死者数0に繋がっていくのは何故か。

まず1つには、ウィルス感染に関する客観的データが集まることによって、有効なウィルス対策が検討できるということだろう。検査には居住地や職業などの登録が必要となり、それにより感染が広がっている地区や職業が特定され、理由の分析が行われていた。またロックダウン中に、一般市民とエッセンシャルワーカーとの陽性率の比較が行われ、エッセンシャルワーカーの方が低いという結果が出たため、マスクや手洗い等の有効性が謳われた。また、全体として感染が収まってきていた時期にも関わらず、依然として感染が多い地区やどういう人に感染者が多いかも明らかになり、その地区に検査施設が設置されたり、マスクや消毒薬の配布なども含めて、その地域に対して感染予防のための周知徹底が行われていた(人種による陽性率の差もあり、貧困問題等も関係していると言われてもいる)。

2つ目は情報の蓄積や開示により、ウィルス対策に説得力が生まれるということがある。単に専門家の意見により''対策を実施する"と伝えられるより、データが日々更新され、データの意味が説明され、データに基づいて専門家が意見を言い、それに基づく"対策を実施する"となると、説得力が違うし、市民は納得して行動することになる。実際にニューヨークでは、感染がひどい時期にも日々データが提示され、それはとても不安な数値であったが、感染症の一般的な考え方、データの意味、そして対策を打てばこの状況が変化する可能性があることが説明されていた。従ってマスクをする習慣のなかったニューヨーカーもほぼ皆マスクをするようになり、ロックダウン中は最低限しか外に出ず、人との距離をとるようになった。州知事も、市民一人一人の行動が状況を変えると説明し続け、実際に状況が変わった時には「状況を変えたのは私ではない。あなたたちだ。」と評した。

3つ目は、対策を実施する側の市民が、状況を理解することで納得して実施できるということ。経済活動再開は4段階に分けて実施されたが、陽性率等の数値が上がった際には再開のスケジュールが変更になると明言され、必要不可欠かつ感染リスクが少ない職種のものから順次緩和されていった。それぞれ2週間ずつ様子を見て、陽性率が上がらなければ次の段階へ進んでいくということだった。フライングして再開していたり、限度を守らないお店などは通報され、多くの人がきまりを守る行動をとった。また第3段階に入る際に、他の州の感染拡大が起きたために、レストランの屋内営業の開始が延期となったが、地域差は多少あると思うが、多くのところでは大きな混乱は起きていない。何がどうして行われているのか、それぞれが理解している状況だからだと思う。そしてもちろん、今でも日々新規感染者数、入院者数、死者数、陽性率が発表されている。

数多く検査をし、データを公表することは、市民一人一人の協力が不可欠な状況において、対策が適切に実施されるために必要なことだったと思う。ニューヨークの1日あたりのコロナウィルスによる死者数が0になったのは、検査が徹底して行われ、情報の開示がしっかりされ、状況や対策についてきちんと説明されることで市民1人1人の行動が変化したから。専門家ではない一生活者ではあるが、そう感じている。

何より、死者数0になったこととは別だが、経済活動再開後の現在、感染状況がきちんと把握できているということに安心感があり、街全体にもその雰囲気が感じられる。それは事実である。7/30は、NY州のデータではあるが、1日の検査数は7万件あまり、新規感染者数は644名、陽性率は0.93%である。


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