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アートフェアは一網打尽作戦の会

7月の頭、第2回目となる「東京現代」という新しいアートフェアが開催されている。
東京というタイトルがついているが、会場は東京ではなく、神奈川県の横浜、みなとみらいにあるパシフィコ横浜である。


ディズニーランドも東京ディズニーランドだけど千葉県にあるし、今は成田国際空港という名前になった成田空港も2004年までは新東京国際空港という羽田に着くのか成田に着くのかわざと混乱させたいのかトラップで正解は千葉県の成田にあったし。世の中、何の違和感もなく東京じゃないところに東京という冠名を使うのが普通なのだろうかと疑問に思うのだが、「横浜現代」では嫌だったのかな、名前。わからない。


第2回東京現代会場マップ。コンパクトで見やすい会場だった。


さて、現代アートについての記事や動画番組などがあらゆるところに散見されるようになり雨後の筍のような昨今。実際の現代アートを生で見られる機会も随分増えてきたように思う。日本においては特に現代アートがイベントになり、フェスになり、集客のパワーキャッチフレーズ化しつつあるような感じも受けている。

そもそも「アートフェア」というのは見本市のことで、展示会である。他のジャンルで言うと、最新の車などが展示される見本市の一例が○○モーターショー、家庭用ゲーム機から大型施設用ゲーム機械まで幅広いゲームの新作が発表される見本市が○○ゲームショーなど、各地の都市の名前入りで開催されている同業他社が集まる見本市が多い。そして日本で「アートフェア」と書かれているものは、ほぼ販売目的の会場である。作品には値段が付けられ、その場で購入をすることが可能な会場だ。


通常、美術品を買おうと思ったら、画廊やギャラリーと言われている場所で買い物をすることがほとんどだと思う。画廊やギャラリーは東京で言うなら六本木や銀座や天王洲などある程度の数が集まっているエリアはあるものの、一軒一軒回って、どの作品が欲しいか見て回る。つまり、実際、全部の画廊やギャラリーを回ってみようとすると、かなりの体力勝負スタンプラリーのような状態になる。もちろん1日で東京中のギャラリーを回るなんて23区内だけでも絶対に不可能だ。

そんな星の数ほどある画廊やギャラリーが、その中の一部とはいえ、一つの会場に集まってくれると言うのは、あちこちの画廊やギャラリーの取扱作品を見て回りたい人にとっては、とても助かるイベントなのだ。

各「アートフェア」ごとに出展できるかの審査の基準も異なっていたり、立地条件ももちろん違うわけで、「アートフェア」と一言で言っても内容には結構違いが出ている。特に「アートフェア」が流行ってイベントになってくると尚更そのフェアによる内容には違いが見えてくるだろう。さらに毎回それぞれの画廊やギャラリーが扱っているすべての作品をアートフェアに出品できるわけではない。アートフェア会場ではほんの一部を簡易的に設置されたよくある白い壁で囲まれたブース内に並べているに過ぎないので、その画廊やギャラリーの全てを会場で知れるわけではない。ただ、ある程度の出店料や搬送コストや人件費をかけてまでアートフェアに参加する画廊やギャラリーの人たちは、必死のプレゼンテーションをせざるをえなくなる状況の場合が多く、つまり出展者がアートフェア会場に持って行く作品というのは、厳選された、かつ絶対に売りたいものや間違いなく自信を持って推せるものになるのだ。そういう意味では現代アートのお買い物をしたい人にとっては、今勢いのある作家や、確実に評価の定まった作品つまり資産として損をしづらい作品を、効率よくスムーズに購入できる機会と言えるだろう。

さて私がアートフェアに行く目的は、最初の頃と今では少し違ってきている。

最初の頃は、まずはアートワールドを肌で感じて知る勉強の場としてアートフェアに行っていた。日本のアートフェアと世界のアートフェアを比較するだけでも学ぶことはとても多いし、大体の価格帯というのも体感として理解できるようになってきた。

最近の私がアートフェアに行くのは、明らかな目的がある場合だ。知り合いの作家さんやギャラリストが会場にいるとわかっていて、会いに行きたい用事がある場合が主になるが、もちろん行ったら行ったで全体を見て回りたいし、その中で偶然にも新たにいいなと思う作品を知ったり、ギャラリストさんたちと話してみて次にその国に行ったらぜひ立ち寄りたいと思えるギャラリーが増えたりもする。

今回の第2回東京現代には私たちのメンターであり仲良しの作家でもあるタイ人アーティストPi Thaiwijit (タイヴィジット・プンガセンソンブーン Thaiwijit Puengkasemsomboon)の作品が出展されていたり、他にもKhun Rirkrit Tiravanija(リクリット・ティラヴァニャ)の作品や、一人の作家が1ブースを使う展示ブースには前回のバンコク・アート・ビエンナーレでも話題だった作家Khun Udomsak Krisanamis(ウドムサク・クリサナミス)のインスタレーション展示もあった。さらには、タイ人の友達がディレクターとして活躍しているバンコクにあるギャラリー S.A.C.Galleryも日本初出展ということで、いろいろ目的があったのでサクッと行ってこようと出かけたが、全体を見ながら人と話をしたりしているうちに、結構な時間が経ってしまった。


壁面に並ぶ5枚のペインティングが私たちの大好きなタイウィジットの作品。全て完売。
9月に乃木坂に移転予定のGALLERY SIDE2さんからのプレゼンテーションでした。


知り合いの赤丸(売約済みの印)はいつ見ても高揚する。しかも完売。思わず写真も撮る。



タイ人アーティストのウドムサク・クリサナミスのインスタレーションブース



チェスができる作品。小さな椅子と飲み物のキャップの駒、板の下の瓶ケース、可愛い。
โชคดี チョークディー。Good Luck。




S.A.C. Galleryの友達と話していたことがきっかけで知ることになった若手アーティストのNong Sareena (サリーナ・サッタポン Sareena Sattapon)の作品は、今回もとても魅力があった展示内容になっていた。東京現代では出展のスタイルにいくつかのパターンがあり、今回S.A.C.が出展したのはHana ‘Flower’のセクションで、ここは新人または中堅のアーティストを紹介するというグループになっている。S.A.C.は今回サリーナさん1本のプレゼンテーションだったが、会場の奥の角地という決して有利とはいえない場所にも関わらず、会場内で最も人だかりができている時間帯もあった様子。


第2回東京現代のS.A.C.Galleryの様子


ここからサリーナさんの作品の話を書き始めると長くなるので、今回出店されていたサリーナさんの作品については次回に続く。

以前の六本木での展示の感想文はこちら


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