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鳴くよウグイス、春休み

子どもたちが春休みということで、朝から晩までずっと一緒にいる。

家事が終わらない。令和口ゲンカ王選手権が毎日開催されている。かと思えば非常に仲睦まじく肩を並べSwitchしている和菓子顔の兄妹。

我が家は東京のわりに緑の多い場所にあるので、毎朝ウグイスが鳴いている。「ホー・・・ホケキョ!」なんというとぼけた愛らしい鳴き声でしょう。近所中に響く牧歌的な鳴き声に癒されている住人も多いはず。昨年末、家の前に引っ越してきた外国人ファミリーも「オゥ、ジャパニーズ UGUISU ビューティフォー!」って言ってるに違いない。

朝、散歩がてら我が家に寄ったうちの父親。ウグイスが可愛らしく鳴いたので「かわいいでしょ。いいでしょ。毎日鳴くんだよ」と言うと「これはニセモノだ」と言った。ニセモノとは?意味がわからない。おそらく、あまりにも可愛い声なのでそう思ったのだろう。父よ。ここのウグイスは本物です。

近所の川沿いの桜も満開。ただ歩いてるだけで心がほころぶ。一年で一番、ただ生きてるだけでも幸せな時期だろうか。今年は花見はしないけれど、もともと人混みも苦手なので近所の桜を眺めるだけで十分である。

ある予定のない休日。わたしはこの日を適当に過ごすことに決めた。まず庭のアウトドアチェアで朝ごはんに朝マックを食べた。朝マックは、たまに食べると美味しい。そして蚊がいないだけで、こんなに無防備にのんびりできるこの季節は最高だ。わたしは虫の中で蚊が一番きらいである。蚊のいない我が家の小さな庭はパラダイス。ここから5月くらいまでが最高なんだよな。モッコウバラとジャスミンが咲いて。ベランダにはハンモックも吊るしちゃうもんね。昨年の自粛期間中は、この小さな庭とベランダが心の拠り所だったといっても過言ではない。

さて子どもたちと本屋に出かけることにした。天気も良いけれど、公園は行かない。疲れるので、頑張らない。本屋ではそれぞれ欲しい本を買う。わたしは益田ミリさんの「永遠のおでかけ」というエッセイ、息子はサバイバルシリーズの漫画本とポケモンの雑誌、娘はアナ雪の付録がついたディズニーの雑誌となぜか本屋で売っていたビーズ。娘の入学祝いで貰った図書券で支払いをした。もっと実用的なものを買うべきだっただろうか。ありがとう図書券。3人は、ほくほくと本屋を出た。

暖かい日だったので、何か冷たいものが食べたくなった。「アイス食べて帰ろう」というと子どもたちは目をきらんとさせ、わーい!と言った。そうだろうそうだろう。時間は昼過ぎだったが、お昼ごはんの前にアイスを食べるというこの行動。親的ルールは今日は無視である。31アイスクリームに入った。わたしはラブポーションサーティワン(ラズベリーとホワイトチョコ)、息子はホッピングシャワー、娘はチョップドチョコレート。三者三様に選んだアイスをコーンにいれてもらい、舐めながら店を出た。「おいしいねぇ」と言った5秒後、娘がアイスを服の上にまるごと落とした。なんでだよおッ。しかし手でおさえていたのでセーフ。コーンにすぐ戻してアイスは無事だったが、手も服もチョコでよごれた。まぁ別によごれてもいいよね...帰るだけだしさ。そう言いながら、3人はぶらぶらと歩きながらアイスを舐め溶かした。いつも途中で(違う味にすればよかった)と思うわたしは、永遠に31初心者かもしれない。

家に着いてしばらくして、お腹が減った気がして宮古そばを茹でた。親戚が送ってくれた古謝そばだ。粉スープ、レトルトのソーキつき。これがなかなか美味しい。大人は小ネギと紅生姜、そしてコーレグース(泡盛に島とうがらしを漬けたもの)をいれて食べる。オキナワンなら一家に一瓶、コーレグースですよね。昔、宮古島のいとこに、食べ終わりそうになったときカレー粉をいれて食べると美味しいさいが(さいがは言ってないか)と教わってから欠かさず最後はカレー粉を投入。最後に和風カレー汁みたいになった宮古そばもまた、美味しい。アイスでお腹がふくれていた娘は当然のようにそばを残した。息子は大食漢なのでペロリと平らげた。

また庭に出て読書をした。アイスコーヒーを飲みながら、チョコレートをつまみながら、時折涙ぐみながらページをめくる。子どもたちもそれぞれ本を読んだり、何かをして遊んでいる。読み終わった頃、春の風が吹いて、少しだけ肌寒くなったので家に入った。本の余韻がまだ胸にある。ああいい本読めたぁ!なにげない日常のふとした瞬間が宝物、ということを再確認した。そしてこんな過ごし方ができるようになったのかぁ、とふと思った。「いつのまにね」

夕飯はどうしようと考え、手羽中をおいしく揚げ焼きして照り焼きソースで絡めたのを居酒屋みたいにドン!と出すことにした。夜はそれをつまみにビールを飲んだ。山盛りの手羽中はあっという間になくなった。野菜をたくさんいれたスープは人気がなかった。人気がないとわかっていても、つい作ってしまう母心なのだった。そんな1日だった。

昨年、閉塞感が続いた春夏を経て9月くらいに『まんがを描こう』と思った。それから117話(今時点で)小さなまんがを描いた。何かに背中をぐいぐいと押されるような感じだった。身の丈以上の機会に恵まれ、とある編集部に持ち込みもして、ずっと温めていた別の作品を、試しに仕上げることにもなった。しかし、娘の卒園式、春休み...と続いて「お母さん」の比重がぐん、と増えた。楽になったとはいえ、子どもたちに全く手がかからないわけではないので、わたしもこの春休みは歩幅を変えることにした。時には一緒にのんびりもすることにした。(前述した1日のように)今は今しかないから、と人生で一番思っている。

そうすると気づけば机に向かう時間が激減。ペンだこが柔らかくなってきてないか?思いっきり描きたいという欲求が日に日に少しずつあがっている気がする。水が沸いてすこしずつお湯になるように。でもそのあたたまったお湯にいいにおいの入浴剤を入れて子どもたちとワイワイ入りたい。今日は何にする?柚子、ラベンダー、それとも檜。

あと1週間で春休みも終わる。娘はいよいよ小学1年生だ。息子は小学三年生。新しい生活。そう、いつだって新しい生活。マスク姿の入学式だって、心底おめでたい1日になるだろう。変化した世界でも、ウグイスはとびっきり可愛く鳴いてくれている。悩むこともあるし、未来はわからないけれど、母として、何かを作りたい人として「大好き」の方向へ心を動かし続けていこうと思う。

母が始まってもうすぐ9年目の春である。

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