荒木真理子(気象予報士)

テレビ朝日で気象キャスター・解説委員を経て、NHK災害気象センターで気象解析やキャスタ…

荒木真理子(気象予報士)

テレビ朝日で気象キャスター・解説委員を経て、NHK災害気象センターで気象解析やキャスター育成を担当。はずさない、見逃さないをテーマに日々、解析中。短い時間で端的に伝える気象番組での経験から『10秒で伝わる話し方』を上梓。有料記事は、自然災害へのお見舞金にさせていただきます。

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プロフィール~空を見上げて思うこと~

「もうすぐ雨が降るから帰ろう」 5歳の夏休み、私は祖父と一緒に埼玉の熊谷で過ごしていた。 「え~、まだお日さま出てるのに…」 祖父の家に着いた途端、大粒の雨が地面を叩きつけてきた。稲妻が空を砕いている。 窓の外を眺めながら、思った。 私のおじいちゃんは、預言者なんだ。 祖父は、アジアを航海する貿易船の乗組員だった。 未だ天気予報もない時代、 空の色を伺い、風の音を聴き、肌で湿り気を感じながら、 空模様を予測してきた。 ヒューって冷たい風が吹き出したら、どしゃ降りになる

    • 【風の声を聴く】'24.6②~エルニーニョ現象の終息と日本の夏~

      「こんなにも真逆の予報ってある?」 6月5日時点での6月10日の予報。(ヨーロッパ中期予報センターHPより) GSMは関東などで本降りの雨を予想する一方で、ヨーロッパ中期予報センターは、前線は本州の南に離れたまま。関東でいうと、雨予報と晴れ予報ですから、真逆です。これだけのブレはなかなかありません。 そして実際はどうなったかというと、明け方まで弱い雨。昼間は少々日照がありましたが、にわか雨もありました。はい、両者ともに外れです。 さらに、14日金曜日時点で、土日もどこまで前

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      • 【風の声を聴く】'24.6①~台風+前線と850hPa資料~

        沖縄・奄美が梅雨入りし、季節が大きく前進しました。本州付近も晴れれば、35℃に迫る厳しい暑さに。気温が上がることで、雨の降り方も変わってきます。 発生が遅れていた台風1号ができ、前線は大暴れ。気象庁も線状降水帯の予測情報の運用を前倒しするという、異例の事態になりました。では、振り返っていきましょう。 ==== 目次 ~2024.6.2~ ===================== ◆できごと【5月19日(日)~6月1日(土)】 ◆解析のポイント『台風+前線と850hPa資料

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        • 【風の声を聴く】'24.5②~線状降水帯発生予測~

          風薫る気持ちのいい季節になりました。GW後半の4連休も、最終日こそ下り坂に向かいましたが、激しい気象現象もなく、比較的好天に恵まれました。 5月の上旬・中旬の特徴は、偏西風の蛇行。大気の流れがゆっくりになり、高気圧が数日間勢力を及ぼし、低気圧が数日かけて通過するという、メリハリのある天気パターン。晴れた日は暑くなり、雨の日はどしゃ降りです。天気図上の低気圧は上空の流れから取り残された前線のないタイプ、衛星画像には寒冷渦が度々姿を現しました。振り返っていきましょう。 ====

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        プロフィール~空を見上げて思うこと~

          【風の声を聴く】'24.5①~逆位相とGPV計算値~

          今年のGWは、カレンダーの黒い日にあたる谷間こそ広く雨が降りましたが、前半も後半も土日祝日は晴れて行楽日和の日ばかり。みなさんはどのようにお過ごしでしょうか。 4月後半から、大気の流れが淀み、予報に頭を抱える日が増えました。「1年で絶対の予報を外してはいけない時期が3度ある」と、気象予報士になりたての頃、先輩に教わりました。GWとお盆とお正月です。天気予報の需要が高い時期に、各モデル間でブレ幅が大きいときは、どうしたらよいのでしょう。振り返っていきます。 ==== 目次 ~

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          【風の声を聴く】'24.5①~逆位相とGPV計算値~

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          【風の声を聴く】'24.4②~熱中症特別警戒アラート~

          見渡せば、葉桜が風に揺れ、ケヤキの若葉が日差しに輝いています。サクラ前線は、あっという間に、北海道まで到達。スタートこそ平年より遅かったものの、ゴール目前にして平年より早まり、短期間で駆け抜けつつあります。私はすっかりお花見チャンスを逃してしまいました。おそらく東京での土日のお花見ベストタイミングは、4月7日だったかと思いますが、都合が合わず断念。翌週までもってほしいという願いも、9日の風雨に散りました。この2週間は、日本付近で偏西風が蛇行し、予想以上の荒天や高温に見舞われま

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          【風の声を聴く】'24.4②~熱中症特別警戒アラート~

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          【風の声を聴く】'24.4①~GPVデータに現れない降水予想~

          新年度がスタートしました。 この記事をお読みの方の中には、もしかしたら、新しく気象の仕事をスタートさせた方もいらっしゃるかもしれません。 私は、昨年度、地方局を含めて、気象キャスターの採用試験を5回担当しました。いずれのオーディションでも、しっかり解析時間を設け、伝えてほしい防災事項を、正しい表現で解説しているかをチェックさせてもらいました。記事を購読する中で、判断に迷う気象解析のケーススタディを行い、知っておくべき旬のキーワードを読み、常に自分の知識に変えてくださっている方

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          【風の声を聴く】'24.4①~GPVデータに現れない降水予想~

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          【風の声を聴く】'24.3②~寒の戻りとサクラの開花予想~

          激動の3月前半となりました。 3月8日、3月としては4年ぶりに、東京で積雪を観測しました。 3月12日の関東は、帰宅時間帯に風雨が強まる荒れた天気に。 いずれも、急発達した低気圧が要因です。 本州南岸まで迫る梅雨の始まりのような暖湿気流と、大陸から虎視眈々と南下の機会を伺う寒気。上空の気圧の谷と結びついた途端、両者は激しくぶつかり合うのです。 では、3月前半を振り返っていきましょう。 ==== 目次 ~2024.3.17~ ===================== ◆で

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          【風の声を聴く】'24.3②~寒の戻りとサクラの開花予想~

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          【風の声を聴く】'24.3①~急速に発達する低気圧と局地前線~

          夏日を出したことが嘘のように寒さがぶり返した日本列島。このひと月で、劇的に気温も空模様も変化しました。 東京の気温のグラフ、最高気温の赤に注目すると、2月中旬にかけて右肩上がり。20日には23℃を超えて初夏の陽気に。それが急転直下、23日には5℃を割り込むのです。(気象庁HPより) さらに降水量を見てみましょう。(気象庁HPより) 2月上旬に大雪。その後、2月中旬にパタリと降水がなくなり、下旬からは頻繁に雨が降る天気に様変わりです。 春へと向かう中で南からの暖気は強まり、

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          【風の声を聴く】'24.3①~急速に発達する低気圧と局地前線~

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          【風の声を聴く】'24.2②~日本海低気圧と春一番~

          2月上旬は、立て続けに南岸低気圧が通過し、2月5日には、東京都心でも8cmの積雪を観測しました。子どもたちは大喜びでしたが、大人は雪かきや交通への影響など対応に追われました。 首都高速道路は除雪に時間がかかり、通行止めが解除されたのは、翌々日の16時半。実に、50時間を要したのです。ほぼ今回の南岸低気圧は予想通りに経過したものの、やはり都心の大雪への脆弱さが露になりました。 2月中旬は、南高北低型が多く、高温傾向でした。記録的な暖かさになった地域があり、春一番も吹きました。

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          【風の声を聴く】'24.2②~日本海低気圧と春一番~

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          【風の声を聴く】'24.2①~南岸低気圧による東京都心の降雪~

          2月、立春です。日差しが少しずつ力強くなり、暖かくなっていくころ。一方で、東京では、1年で最も雪が降りやすい時期です。降雪の深さの合計の旬別の平年値は、1月下旬から2月中旬までが2cm。雪に気を付けたいシーズンなんです。(気象庁HPより加工) 折しも、本州南岸は前線帯になっています。気圧の谷が通るタイミングでは、低気圧ができる可能性大です。 さぁ、気を引き締めて解析にあたりましょう。 ==== 目次 ~2024.2.4~ ===================== ◆で

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          【風の声を聴く】'24.2①~南岸低気圧による東京都心の降雪~

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          【風の声を聴く】'24.1②~関東平野部の降雪パターン~

          1月13日、東京で初雪が観測されました。 雪が降るとわかっていたのですが、ドンピシャの時間で外出していて、傘は持っていても、さすことができないくらいの突風でした。寒気トラフ通過に伴う不安定性現象で、南岸低気圧とともに、東京で雪が降りやすいパターンです。そして、1月20日~21日には、南岸低気圧が通過。果たして、気象庁の予報官、気象予報士のみなさんの見解は当たったのでしょうか。 ==== 目次 ~2024.1.21~ ============================

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          【風の声を聴く】'24.1②~関東平野部の降雪パターン~

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          【風の声を聴く】'24.1①~JPCZによる顕著な大雪~

          2024年、大変な幕開けとなってしまいました。 令和6年能登半島地震により被災されたみなさまに、心からお見舞い申し上げます。 微力ながら、昨年の購読料の売り上げを寄付させていただきました。ご協力ありがとうございます。一日も早く、日常が戻ることを祈るばかりです。 例年より暖かい年越しとはなりましたが、大地震後、初めての大雪が予想されています。日本海寒帯気団収束帯、いわゆるJPCZの発達した雪雲の流入が心配です。 今回は、JPCZによる雪雲の形成と、令和6年能登半島地震に関する

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          【風の声を聴く】'24.1①~JPCZによる顕著な大雪~

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          【風の声を聴く】'23.12②~日本海低気圧による高温と冷気層~

          本当に年の瀬迫った12月半ばの天気でしょうか。富士山の雪化粧もまだら模様。 15日は九州や北陸で、16日は関東で、25℃以上の夏日を観測しました。(気象庁HPより) この天気傾向に、いよいよ12月下旬、大きな変化が起こりそうです。詳しく見ていきましょう。 ==== 目次 ~2023.12.17~ ==================== ◆できごと【12月3日(日)~12月16日(土)】 ◆解析のポイント『日本海低気圧による高温と冷気層』 ◆旬のキーワード『早期天候情報

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          【風の声を聴く】'23.12②~日本海低気圧による高温と冷気層~

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          【風の声を聴く】'23.12①~“忍者雲”を捉える~

          気温のアップダウンが激しい11月でした。 札幌では、最高気温が23日に17.3℃だった後、24日には10.0℃、そして25日には-1.4℃と急転直下の極寒に。(気象庁HPより) 東京でも、24日に最高気温24.2℃を記録した後、25日には13.5℃、26日には9.5℃と、夏日一歩手前の暖かさからひと桁気温の真冬のような寒さに様変わり。(気象庁HPより) 北から寒気が流入したからですが、関東平野での寒さは単なる寒気の影響ではありません。晩秋から早春にかけて頻繁に天気や気温の

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          【風の声を聴く】'23.12①~“忍者雲”を捉える~

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          【風の声を聴く】'23.11②~寒冷渦と地上低気圧の解析~

          夏日から師走の寒さに急転直下! 事前にわかっていたにも関わらず、体調を崩してしまいました。みなさんは大丈夫でしょうか。身体に堪える急激な変化でした。秋らしい洋服を着る間もなく、ダウンコートに身を包んでいます。 「暖冬、暖冬といわれているのに、どうしてなの?」という声も聞かれます。暖冬傾向は変わらないのですが、時として強烈な寒気がおりてくることがあるのです。 今回は、寒冷渦の解析と暖冬傾向に焦点を当てていきます。 ==== 目次 ~2023.11.19~ ==========

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          【風の声を聴く】'23.11②~寒冷渦と地上低気圧の解析~

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