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プロフィール~空を見上げて思うこと~

「もうすぐ雨が降るから帰ろう」
5歳の夏休み、私は祖父と一緒に埼玉の熊谷で過ごしていた。

「え~、まだお日さま出てるのに…」

祖父の家に着いた途端、大粒の雨が地面を叩きつけてきた。稲妻が空を砕いている。
窓の外を眺めながら、思った。
私のおじいちゃんは、預言者なんだ。

祖父は、アジアを航海する貿易船の乗組員だった。
未だ天気予報もない時代、
空の色を伺い、風の音を聴き、肌で湿り気を感じながら、
空模様を予測してきた。

ヒューって冷たい風が吹き出したら、どしゃ降りになるんだよ。
空のうろこが羊になってきた…あしたは雨だ。
太陽を背にして、雲のスクリーンを見てごらん、ほら虹があそこに!

小さい頃に予言だと思っていたそれは、科学だった。

祖父が他界した大学時代、気象予報士試験にチャレンジすることを決意。
ミヤギテレビのアナウンサーとなった2001年、国家資格を取得した。宮城県では、初の女性気象予報士誕生だった。
視聴者との距離が近い地方局では、街を歩いていると、外れた天気予報についてお叱りを受けることもあった。
「なんで、外れちゃったんだろう…」
読み間違えた日の天気図を大切に取っておくことにした。

2005年からは、テレビ朝日のウェザーセンターの一員として、天気予報の番組制作に携わるように。
『ANNスーパーJチャンネル』では気象キャスターとして、レギュラー出演。『報道ステーション』では2013年、広島での大規模土砂災害を受けて、解説委員として出演するように。

2015年、長男を出産。短い時間で端的に情報を伝える必要のある気象番組で培った経験をもとに、育休中に『10秒で伝わる話し方』を出版。

仕事と育児の両立を目指し、2017年からは、働き方改革の進むNHKに職場を移す。報道局災害気象センターの気象班として、日々気象解析の指示報を作成し、地方局を含めたNHK各局に配信するほか、気象キャスターの育成・指導に携わっている。

「あしたね、最初晴れだけど、あとから雨降るんだって~。青い色ついてたよ」
NHK気象情報のメッシュ画面を見ながら、息子が私に教えてくれる。

いつか、息子にも伝えたい。
天気予報のカギを握るのは、「観天望気」と「温故知新」。

未来を読むときに大切なのは、コンピュータではなく、空を見ること。
昔の経験が、未来の空模様のヒントをくれること。
キミのひいおじいちゃんが教えてくれたんだ。

宝となった過去の天気図を携え、実況データを見ながら、最新の資料を解析。
そして、空を見上げて、風を感じながら、今日も天気を予想している。

Blog
https://ameblo.jp/marikoaraki/
Book
https://www.njg.co.jp/book/9784534054678/


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