カメルーン・ヤウンデで過ごした2ヶ月を写真で振り返る

画像1 カメルーンの首都・ヤウンデに、2022年2月1日から3月下旬までの2ヶ月間滞在した。数年前に東京で開催したハッカソンの参加者の一人がカメルーン出身だった、ということくらいしか私とカメルーンの間の繋がりはなかったので、入国するときは何を期待して良いか分からず胸が震えた。住環境は正直それなりに厳しく、毎日水か電気、インターネットのどれかが落ちる環境で、仕事も正直、なかなか捗らなかったけれど、カメルーンを離れた今でも、なんとなく毎日カメルーンに想いを馳せてしまう。そんな不思議な魅力があった。
画像2 ヤウンデでコラボレーションをしていたスタートアップには20代前半〜30代半ばの若者たち15名ほどが働いていて、彼らと毎日ワークスペースをシェアしていた。仕事をするときの時間感覚とか、意見の述べかたとか、打ち合わせでの態度とかを日々観察できたのが面白かった。違った文化、言葉、ワークスタイルの人たちとプロジェクトを一緒にするという体験は、誰もがすべきだと思う。自分の態度や行動が、しなやかになる。
画像3 ヤウンデの中心街にはブルータリズム的な建築群が多く、歩いていて楽しい。セントラルマーケットの古い建物(写真の右側に写っている)はコンクリート造りの煤けた感じがカッコよく、円形の構造も良い感じ。ダウンタウンにこんな感じでなかなか見応えのある建築物が集積しているのだけど、ネットで調べても、ほとんど情報が出てこない。欧米の街みたいに、建築ツアーなんかあれば絶対に行きたいのに。こんな風に、アフリカの街の歴史やストーリーが、もっとアーカイブされ、シェアされたら良いのになと思う。
画像4 ヤウンデ の街中を1人で歩き回れるようになるまで、2週間はかかったと思う。田舎みたいな長閑なトーゴ の街中と違って、とにかく人が多く、交通量が多く、忙しく、声をかけられやすい。道路は穴だらけで油断をするとすぐこける(私は3回盛大にこけた)。でも数週間すると慣れたもので、「ニイハオ!」もしくは「Le blanc (=白人)!」と声をかけて来る人々を尻目に、道端のおばさんから値段交渉をしてアボカドを買えるくらいには成長した。
画像5 カメルーン人5人、ロシア人1人と一緒にセントラルマーケットでインタビューに行った時のこと。ある坂道に差し掛かった時に、女子たちがピタリと足を止めて、「これ以上先は行きたくない」という。ストリートチルドレンがこのあたりに多く、ヤウンデの中心街でも治安が悪いエリアなのだそうだ。男子たちは大丈夫大丈夫、友達もいるから、というので、女子たちは置いて私だけ男子たちにくっつて行ってみることにした。時間帯の影響か、そこまで危ない印象はなかったけど、1人だったらまた違う経験なんだろうなと思う。
画像6 これは現地の人と一緒じゃないと絶対入れないな、という薄暗い路地を、ズンズン進んでいく。その先は寂れた屋内マーケットのようになっていて、電子機器系のお店がひしめき合っている。男性しかおらず、明らかに外国人でカメラを抱えた私を、興味なさそうに、でも気恥ずかしいくらいジロジロと見つめてくる。香港や台湾でも、こういう場所に迷い込んだことがあるような。ショップオーナーたちに話を聞きながら、不思議な既視感を味わっていた。
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画像8 カメラを向けると、必ず本気でポーズをしてくるカメルーン人たち。こっちはカメラ目線ではない自然な風景の一コマを切り取りたいのだけど、決してそうはいかない。だからこっそり撮るしかなく、私はいつも、彼らの周りを足早に駆けずり回っていた。
画像9 ヤウンデ には公共交通機関というものが存在しない。移動は、もっぱらタクシーである。といっても、手袋をはめた運転手さんがいるようなタクシーではなく、いわゆる乗合タクシーだ。Uberなんて便利なものもない。道端で行き先と金額を交渉し、ドライバーが了承したら乗車できるシステムで、乗れるだけ詰め込まれるから、1台に7〜8人なんてこともザラにある。行き先が合わないと容赦無く断られるので、通り過ぎるタクシーに、何台も辛抱強く声をかけないといけない。英語も通じないから、フランス語で土地名を正しく発音するのに苦労した。
画像10 街中を歩いていると、色とりどりの制服をきた学生たちとよく出会す。アフリカのユニフォームデザインは、誰か調べて本にでもして欲しい。総じて可愛い。
画像11 カメルーンでは、ロシアからGISアナリストとビジネスコンサルタントの2人がチームとして参加してくれた。滞在中にロシアとウクライナ間の紛争が始まってしまい、動揺する彼女たちから、ロシアについて、この戦争がロシアの人々に与える影響について、世代間による意見の違いについてなど、生々しい話を聞くことができた。ロシアの侵攻が始まったその日、朝起きたら2人が泣いていた光景は忘れられない。新プーチン派の多いカメルーンの人々と意見を交わしながら、2人はいつも、もどかしそうにしていた。
画像12 ここにいて思ったことの一つは、家族感が圧倒的に違うこと。お前、結婚してるのにまだ子供いないのかと、嫌味ではなくピュアな視線で何度も聞かれた。子供を持つこと、家族を労ることは、アフリカではとても大切なことなのだと何度も説教をされた記憶がある。あと、「あなたを侮辱するということは、あなたの夫を侮辱することでもある。だから、単身女性よりも既婚女性には更に敬意を払わないといけない」ということを友人に言われたときは、なんてセクシストなんだと辟易してしまったが、まあ、そういう世界観があるということなんだろう。
画像13 友人の故郷の村に遊びに行った時、家の庭(というか裏山)を一緒に歩きながら、友人のお母さんが、色んなハーブや薬草を説明してくれた。女性のホルモンバランスに効くもの。お腹が痛い時に煎じて飲むもの。悪霊を払いたい時にポケットに入れておくと良い木の実。一つ一つ味見をしながら庭を散策していく。これ、よもぎに似ているなとか、正露丸みたいな味がするなとか思いながら、世界はやはり、食でつながっていると思った。
画像14 カメルーンの女性たちはとてもお洒落。毎日オフィスのお洒落ガールたちを観察するのが楽しかった。鮮やかな民族衣装を着てくることもあれば、モダンな服装をしていることもある。ジュエリーも抜かりがない。髪型も毎日、ウィッグを変えたりエクステンションを付けたりとコロコロ変わる。ただでさえ外国人で目立つので、お洒落なんかできないと毎日すっぴんにボロTを着ていた私は、彼女たちの楽しげな存在感にジェラシーを感じた。着飾るって、いいなあ。
画像15 私の片言のフランス語ジョークで爆笑してくれた友人よ、ありがとう。フランス語を勉強するのであれば、フランス本国よりフランス語圏のアフリカが良いなと今回確信した。アフリカ仏語のアクセントなんて気にする必要はない。だって、これから経済や文化の中心になるのは、フランスではなくアフリカの国々なのだから。大らかで明るいフランス語を毎日聞けたことは、大切な機会だったと思う。カメルーンで収録した音のいくつかは、SoundCloud(https://is.gd/dQcgmZ)にて公開している。

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