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【ショートストーリー】Vol.10 推しの推しの話は推しということで。

「好きな人って、追いかけてるからいいんだよね」
真由美ちゃんは独り言のように少し遠くの宙を見ながら呟いた。
「ふむ」と心の中で思って声には出さなかった。いま真由美ちゃんが言っている、<好きな人>とは誰のことを指しているんだろうかと。
僕は君の彼氏であって、<好きな人>ではないんだろうか?
真由美ちゃんに追いかけられている気配を感じたことがない。どちらかと言えば、僕が追いかけている。

僕は真由美ちゃんが好きだ。真由美ちゃんはどうだろうか?

いたって普通、見た目も中身も平均値、これといって特徴やその他特筆することもない僕。中の中の中。そんな僕だけど、クラスで2番目に可愛い真由美ちゃんと付き合っているのは紛れもないこの僕。

真由美ちゃんがクリームソーダを飲む姿は僕の胸をざわざわとさせ、もじもじとさせ、そしてタマキンを宇宙に放り投げたようにふわふわと落ち着かなく、全体的にぐわわとさせる。ハイトーンカラーの髪の毛を2つのお団子に束ねていて、この髪型が似合うのは真由美ちゃんしかいない、と僕は誇らしい。

それよりも、<好きな人>について、だ。さて、この問題について僕はどこまで触れるべきなのだろうか。蓋を開けないままであれば、しばらくは(僕が何かヘマをしたり、嫌われるようなことをしない限り)このまま真由美ちゃんと付き合い続けられるだろう。

でも、わだかまりを抱えたまま僕は付き合っていけるだろうか?うん、いける。そんな複雑なことは考える必要がない、そう、僕は高校生なのだから。今を楽しむ、それが正義だ。

真由美ちゃんは、急に僕の目を真っ直ぐに見て言った。

「ねえ、他の子のこと考えてた?」

不意打ちに戸惑いつつも、へらへらと否定する僕。確かに、他の子のことを考えていたのは確かだ。(他の子と言っても、真由美ちゃんの好きな人のこと、そいつを仮に「推し」と呼ぼう。その方が心が穏やかだ。)違うと否定すればするほど怪しくなるもの。

彼女の問い詰め方というのは、いつだって理不尽だ。理不尽な中でてんやわやするのを楽しむのも、また彼氏としての嗜みだ。

少し不機嫌そうで、わざとあえてとんがらせているのかと思うほどの(だとしても問題はない、むしろもっとそれを突きつけてくれと欲する)ほっぺたと唇の芸術的なまでの黄金比的な比率の中で成り立つ唯一無二の可愛さと表現するには表現し足りない世界!いや空間?いや、新たな宇宙空間と呼ぶべき人類も知らない、僕だけが知るブラックホールに吸い込まれながら、己を保ち一言。

「ク、クリームソーダ、もう一杯おかわりする?」

<終わり> 1,067文字

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