korekara
どこか違うところへ行かないといけない
新しいことを始めないといけない
もっといいものを手に入れないといけない
違う自分になるには、この場所に留まっていてはいけない
人に自分の存在を認めてもらうために、すごいものにならないといけない
そんなふうに生きてきたことが多かった
そうやってなにかを始めた時
いつも自分に
自分以外のものになることを強いていたように思う
自分の中にはないものを
まるであるかのように見せかけて
自分を大きく立派に賢く見せかけて
強くて自信があって堂々としているかのように見せかけて
自分以外の他のものに見せかけることに
疲れ切っていた
立ち止まっては周りを見渡し
自分は上手くやれているかとびくびくし
上手くやれていない部分ばかりが目について
自分を責めていた
もっと、もっとできるようにならなければいけないと
自分を強いて
鞭打って
できない自分は決して認めず
ダメだ、ダメだと叱咤して
もっとできるようになるはずだ、
やればできるんだ、
できない自分は認めない、と言い聞かせ
架空の自分に
期待のその先にいる自分を指差して
ああなれなければお前はダメだと
頭の中で怒鳴りつけていた
自分の中にあるものを利用して
これで何かやってみようと始めたことがある
楽しくて
何をどうすれば良いのかもわかっていて
努力せずとも自然と人から認められた
もちろん努力は人並み以上にした
だがそれも楽しんでいた
費やした時間の一分一秒を楽しんでやっていた
認められることを目標にやっていたのではないので
認められようとか認めさせようとか
できるように見せようとか
褒められたいとかすごいと思われたいとか
考えもしなかった
自分のしていることに信念を持って
自分がこうと思うことをやっていたので
そしてそれはいいものだと信じていたので
他人の評価は
私を揺るがしたり高みにあげたりすることはなく
それは実感や手応えの一つに過ぎず
目の前にあるもののことを考えて
目の前にいる人たちのことを考えて
没頭していた
今また何かを始めようとしている
それに向かっている自分を考えたとき
それは憂鬱な気分にさせるものなのか
それとも楽しめるとわかるものなのか
何者かになろうとしてそれを始めようとしているのか
それとも、それならできると、楽しそうだとかんじて始めようとしているのか
それをしている時の自分を想像したときに
自分以外のものになるために必死になっているのか
それとも、生き生きとしている自分が見えるか
もちろん何を始めるにも不安はつきもの
その不安は
自分を縛りつけ、縮こませ、角に追いこみ、脅迫するような不安感か
それをやっている自分は
自分ではない他のものになろうとしているのか
考えただけで心が疲れるなら
それはかつて誰かに無理強いされたこと
心からの情熱ではない
誰かにそれをやらないといけないと言われたこと
本当の自分の情熱ではない
私は今
何をしようとしているのか
自分として生きるために
本当の自分でいいのだと自分に教えてあげるために
誰かの言う「いい生き方」などしなくてもいいのだと
誰かの決めた「合格点」など気にしなくていいのだと
自分に教えてあげるために
小石を積み上げ長い年月をかけて作られた巨大な城を
粉々に壊してしまう勇気と
瓦礫の中に残された蕾を救い出すこと
死ぬまでかかっても
きっとそれが私の人生
私の生まれてきた意味
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