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JAPAN⇄CANADA 3-7

新年を迎えるとマーチングもいよいよフィールドショーの練習が始まりました。フィールドショーは文字通りフィールドで行う、楽器を演奏しながら動き回り、形を作っていくあれです。9月から練習していた歩幅やフィールドの見方などがショーに役立つ、というわけです。1人1人、ドットシートという自分がどのカウントにどこにいるかが記された紙をもらいます。フィールドショーの練習は、それを頼りに1つずつ形を作り、動きながら移動経路を確認していく作業から始まります。


最初は楽器なしで行い、何度も何度も確認した後にようやく楽器をもって移動する練習をします。そして最後に演奏しながら動く練習をしていきます。これをショーの頭から終わりまで全4パートを行い、4月か5月あたりに最初から最後までのベースの動きが完成していくというわけです。しかもこの作業、各セクションごとに行うので、それぞれのセクションが一定の場所まで確認できたらその都度全体練習が入り、みんなで合わせてやっとアンサンブルになるのです。


今年のショーのタイトルは「Momentum」という、動きと勢いをテーマにしたものでした。そのためか複雑な形や経路が多く、初心者で入った私はおろか、経験者のメンバーもかなりてこずっていたのを覚えています。とりわけ難しかったのは、パート2の途中にあったクロスする動きでした。右のブロックが左に移動する間、右のブロックは隣り合う2列が重機のキャタピラの様に進行方向の次の人の場所に移動しながら、進んできた左のブロックと右のブロックが交差するという文章に起こすとなんとも複雑で分かりずらい動きです。私は右のブロックグループに属していました。私の進行方向で1つ前の人が進んだ道を正確に辿りながら、特定のカウントでいなきゃいけないスポットにたどり着き、さらに左から来るブロックの人と当たらないかという恐怖に耐えていました。特にチューバパートがやってくるのがめちゃめちゃ怖かったです。ただでさえ大きい楽器なのに目の前や真後ろをスレスレで移動されるとなると、慣れるまでの数週間は冷汗ものでした。


何度も何度も練習し、メンバーにたまに突撃しながら(ほんとはよくない。あの時は本当に迷惑かけました。)少しずつ正確性が増していきました。最初の頃は、動きだけ精一杯で演奏なんてもってのほかだったのですが、数ヶ月経つ頃には動きが身につき演奏もできるようになっていました。反復練習はやっぱり裏切りません。マーチングはやっぱり楽しいと改めて感じました。


この年のフィールドショーは最後にバランスボールを使ったメンバーの動きもありました。私の持つクラリネットは比較的楽器も軽く、大道具に持ち替えがしやすいので私もこのメンバーに自動的になっていました。みんなで動きを揃えたり、練習したりする時間が特別な感じでとても楽しかったのを覚えています。ただ移動の時はこの大きな球体も一緒に運ばなきゃいけなかったので少しだけ面倒でした。そしてバランスボールの大敵、風がやってくると外の練習はとても大変でした。動かないように試行錯誤を繰り返しながら、ボールの設置する盾を用意しました。


いよいよ最初の本番の朝を迎えましたが、その日はなんと風がかなり吹いていました。残念ながら盾第1号は備えが甘く、最初の本番では風でボールが飛ばされてしまい指導者のスタッフ達があっちに行ってこっちに行ってなんとかボールを守っていました。後からその本番のビデオを見返すとすごく苦労している様子が写っていて、今ではいい笑い話です。


-つづく-

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