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JAPAN⇄CANADA 3-5

マーチングバンドのシーズン前半は基礎を築く期間です。練習場のフロアをひたすら行ったり来たりしました。
マーチングのフィールドはフットボールのフィールドで計算します。中央の線が50、そこから左右に45、40、35といった感じで5ヤードずつ数字が減っていきます。そしてその5ヤードを8歩で進むのが基本です。前後の距離は、0、8、16、と8の倍数で前と後ろから両方を計算し、24で前後が同じところに行き着くようになっていました。この8はもちろん8歩という計算で測り方は5ヤードごとです。


練習ではフィールドを毎回ドラムメジャーチーム(指揮を担当する全体のリーダー的ポジション)がテープを使って設置し、私たちはそれを目安に見たり頭で考えたりせずに体に叩き込むのです。8歩の感覚を6歩や16歩と歩数を変えて練習したり、テンポを上げ下げしてバラエティに富んだ練習を行いました。身長の高くない(といっても日本だと平均よりは高くて160センチなんですが、)そんな私は、歩数が少なくなおかつテンポが速いとなかなか5ヤードの線に到達できずに苦労しました。
そんなある日、木管と金管のリーダーから私を含めたマーチング未経験者4人が呼び出されました。最初はとても緊張しました。何を言われるのかドキドキでしたが、呼び出された理由はマーチングの練習を一緒にしようというものでした。普段の練習が始まる15分前から難しいところや苦労しているところを一緒に練習してコツを教えたり、質問に答える時間を設けるからいつでも来てね。という話でした。実は練習の後、指導者(以後スタッフ)にいろいろ質問したり、コツを聞いたりしていた私にとっては好都合な手助けでした。本当にありがたかったです。それからクリスマス前の最後の休みまで気になることがあると聞いて練習をしていました。この甲斐あってか少ない歩数での練習も5ヤードラインを到達できるようになり、先輩メンバーやスタッフから褒めてもらえました。私は負けず嫌いなところがあるので褒められた時はとてつもなく嬉しかったです。


ただ1人で行進するのと団体で一緒に移動するのとでは比べ物にならないくらい団体での移動は難しかったです。特にパレードは苦戦しました。もちろん地面に線や目標がないので、横を見ながら前を見ながら間隔を保ち演奏しながら歩く。最初は足並みを揃えるのに必死で演奏ができませんでした。そして演奏できるようになっても体力が持たず演奏が続きませんでした。とにかくひたすら自分が隊列を崩さないようにすることで頭がいっぱいでした。さらにドラムメジャーの指示を見逃さないように笛や動作も見なければならずパレードがいかに大変なのかを知りました。


年度最初のパレードは11月末か12月頭にあるクリスマスのサンタクロースパレードです。みんなでサンタ帽を被って街を歩く楽しいパレードなのですが、なんせ気温が低いので指が全然動きません。特にフルートとクラリネットは楽器の構造上指先のない手袋をはめなきゃいけないので他の奏者より倍は指先が冷えていたと思います。私は手先がすぐ冷えちゃうのでユニフォームの中に手を突っ込んで寒さを一生懸命凌いでいました。(1年目の経験を教訓に2年目以降は小さなカイロを両手袋内に入れてパレードに参加しました。)みんなでおしくらまんじゅうかのごとく集まり、お互いを温め合いながら、長い待機時間を過ごしました。待機時間に対して、パレード自体はあっという間に終わってしまいました。一瞬に終わったのでびっくりしました。といっても他のパレードど比べルートが短いので、はやく終わるのも当たり前なのです。そのあとは休憩室内で昼食も温かいホットココアを貰い、無事にはじめてのパレードを終わらせることができました。


この時期は座奏の時期でもあり、マーチングの基礎練習と典型的な吹奏楽の音楽の練習が繰り返し行われました。私は座奏から始めた人間だからか座奏が大好きです。複雑なメロディーが絡み合い一つの音楽が出来上がっていくのがとても楽しいのです。このマーチングバンドはレベルが高いのでもちろん楽曲も高難度です。初めて見る、音符がビッチリ並んだ楽譜と格闘しながらも充実した時間を過ごしていました。こんなに難しい演奏できるようになるのか?と思いましたが、それが逆に私のやる気を湧き起こしてくれて、来る日も来る日も練習三昧です。座奏の年度最初の演奏会は、これまた11月終わりか12月頭にあるクリスマスのオプティミスコンサートでした。ドキドキでステージに上がり、指揮棒と同時に楽器を構えたのに、いざ始まると瞬きする間も無く演奏が終了していました。


演奏会や本番に向けての練習はとっても長く感じるのに、いざ当日が来たらすぐ終わってしまう、なんでなんでしょう?こういう現象、なんて名前だったかしら?


こうして年度最初の3ヶ月とちょっとは駆け足で過ぎていき、カナダのクリスマスを迎えていくのでした。

-つづく-

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